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上旬
アカテガニ
赤手蟹 甲殻類/十脚目/ベンケイガニ科/アカテガニ属 産卵期/8月
在来種稀少保護
赤い爪を持つのでアカテガニ。普段は沿岸の陸上に生息し、海中の小魚を捕食するのではなく、虫や木の実を食べているという。土に掘った穴や、護岸石の隙間などをねぐらとしている。夜行性。食用にはならない。
湘南・鎌倉地方でアカテガニといった場合は、その多くは近似種のベンケイガニ(弁慶蟹)やクロベンケイガニ(黒弁慶蟹)などであり、広く名が知られているアカテガニはなかなか見つからない。
アカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニ、カクベンケイガニの見分け方
8月の大潮(満潮と干潮の差が大きい時期)の日、太陽が沈んで辺りがすっかり暗くなった頃、河口に集まってきたアカテガニ(とその仲間)のメスが集団”産卵”を行うことで知られる。大潮であれば、望日(ぼうじつ、満月の日)でも朔日(さくじつ、新月の日)でも構わない。ちょうど日が暮れる頃にメスがいずこからか水辺に現れ、軽く海水に浸(つ)かって、卵を抱えた腹を揺さぶり放出する。正確には卵ではなくやや成長したゾエア幼生で、産卵ではなく”放仔(ほうし)”という。幼生はたいへん小さいため肉眼ではキャビアのような粒々にしか見えない。放出された幼生は引き潮に乗って大海原へと散ってゆく。決まった時期の決まった時間・場所で集団放仔を行う様子は神秘を感じる光景である。なお、放仔された途端にボラ(鰡)などの小魚に食べられてしまうものも。
抱卵(ゾエア幼生か)するベンケイガニ 豆腐川
放仔するベンケイガニ 豆腐川
アカテガニの放仔観察
観察に必要なもの
#胴付長靴(ウェーダー)
海へ入るためにあると大いに助かる。膝(ひざ)の辺りまで水に入りたいので普通の長靴では高さ不足。軽装で済ますならクロックスなどのかかと付きサンダルがよいが、クラゲ(水母)に刺されるなどの危険あり。ビーチサンダルも、漂着ゴミなどで怪我するおそれ。裸足は避ける。
#強力な懐中電灯
カニを見るために必要。
#フナムシに耐えうる強固な意志
うじゃうじゃいます。
観察方法
普通に岸壁で待つ方法と、人間が予め海へ入っおいてアカテガニが来るのを待つ”小網代の森スタイル”の二方法あり。
アカテガニは護岸ブロックや草むらなどからかさかさこそこそと姿を現すが、警戒心がたいへん強く、人の気配を感じるだけで”逃げ”の態勢に入ってしまう。こうなるともうだめ。従って、カニが水中に入るまで”いかに人間が気配を消して待てるか”が最大のポイント。光も嫌うので、懐中電灯でカニを照らしてもいけない。
そこで考え出されたのが、人が海へ入って待つという方法。陸地から人の気配をなくしてやるだけでカニは安心して海へと入ってくるので、そこで待ち受けるという仕組み。海中にもぐってすっかり放仔する気になっている母カニは警戒心が薄れ、腹を震わせていざ放仔を始めようものならもう懐中電灯で照らそうがストロボを焚いて写真撮影しようがお構いなし。観察し放題になるのだ。
豆腐川のアカテガニ観察会
毎年放仔の時期を見計らって開催されている。
主催/豆腐川の自然を守る会 参加費/500円(資料代・保険料込)
アカテガニ(実際はベンケイガニがほとんど)が棲息しているのはサーフサイド材木座(神奈川県鎌倉市材木座六丁目14番2号)裏の豆腐川護岸ブロック隙間。放仔を行う場所は豆腐川の河口。材木座海岸から豆腐川河口をほんの少し上った、国道134号線に架かる豆腐川橋の真下、ないしそのすぐ上流側がちょうど汽水域(海水と淡水が混じり合う場所)にあたり、この辺りで放仔を行う。ここより上流はコンクリート化された水路底面に藻がびっしり生えており、たいへん滑(ぬめ)ってしまって歩くことはできない。流水は透明だが水量少なく、汚れた淀みはややドブ臭あり。ゴミも溜まっている。特に夏場は、豆腐川で立ち小便をする者あり。いろいろ難点はあるものの、身近な場所で懐中電灯一つで観察できるため、お手軽。
豆腐川河口
アカテガニの観察会 豆腐川 2011/08/13
浦の川(小網代の森、7月下旬から観察会「カニパトロール」開催、別途三崎駅口駅からのガイド付き観察会「自然観察&クリーン」開催、小網代野外活動調整会議参照)、豆腐川河口
相模川河口(茅ヶ崎市側)
極楽寺川河口、音無川河口 ※いずれも一般人が河口に立ち入ることができないため、放仔観察には不向き。
サメ
鮫 魚類 出没期/8月
危険在来種駆除
ワニ(鰐)やフカ(鱶)ともいう。相模湾にも年中いるが、夏休み期間中の地引網で揚がると子供たちの人気者に、海水浴場付近で目撃されるとたちまちニュース記事に取り上げられて社会問題になる。サメといえば、映画『ジョーズ』(JAWS、jawは顎の意)の影響で人食いザメ(映画ではホオジロザメ)の恐怖ばかりがことさら強調されてしまいがちではあるが、実際に日本国内(特に沖縄など)でもサメが人を襲う事件が発生しているのである程度過敏な反応もやむをえないのか。
人を襲う可能性があるサメは、ホオジロザメ(頬白鮫)、イタチザメ(鼬鮫、ウミガメ(海亀)でもサーファーでも死骸でも何でも食べるので「海のごみ箱」と呼ばれる、体にトラのような縞模様があるため英名タイガー・シャーク)、シュモクザメ(撞木鮫、英名ハンマーヘッド・シャーク)など。目撃例は相模湾でもあるが、現在のところサメに咬(か)まれたなどの被害報告はない。
平成27年(2015)8月14日(金)茅ヶ崎市の海水浴場(サザンビーチちがさき)沖で30匹以上のサメ(シュモクザメ)が確認され、周辺自治体も含めて遊泳禁止に。
ドチザメ
奴智鮫 軟骨魚類/メジロザメ目/ドチザメ科/ドチザメ属 出現期/通年
在来種
相模湾で最も一般的なサメ。体長1.5m程度で、比較的水深が浅い場所を好む。小魚などを食べ、人は襲わない。漁の網にもよくかかる。
ホシザメ
星鮫 軟骨魚類/メジロザメ目/ドチザメ科/ホシザメ属 出現期/通年
在来種
相模湾に多い。背中に白色の斑紋が見られるドチザメ(奴智鮫)の仲間。
ニホンジカ
日本鹿 哺乳類/鯨偶蹄目/シカ科/シカ属 見頃/8月 繁殖期/10月
在来種駆除保護
鳥獣保護管理法「指定管理鳥獣」
単にシカ(鹿)とも。神奈川県内では県北西部の大山・丹沢から箱根にかけての山地に生息。湘南地方へは川を伝うなどして出没することがごく稀にある(【小田原市】酒匂川河口近くの国道134号線には「シカに注意」の警戒標識が立っている)ようだが、基本的にはいない。箱根町のシカは一時絶滅したが、伊豆半島のものが移動して来たとされる。
シカは昭和時代(1926-89)の開発と乱獲で生息数が激減するも、平成(1989-)に入ってから行われた保護活動で生息数が回復傾向に。しかし今度はブナ(橅)などの食害が問題視されるようになった。シカは毎日4kg程度(2kg~10kg)の草、木の葉、小枝、木の皮などを食べており、稀少な(稀少になってしまった原因のほとんどは人間にあるのだが)植物が根こそぎごっそり食べられてしまう被害が発生している。シカが生息できる広大な自然環境に人間が進出し開発してしまったことで、シカは減っても問題、増えても問題と、板挟みの状況に置かれてしまっている。
シカの毛は、冬は地味な灰褐色で、初夏から夏毛に生え変わる。夏毛は褐色に白色の斑が入りかわいらしい。シカの角(つの)が抜けて生え変わるのは毎年春。たった数ヶ月で角は伸び、立派なものが完成する。従って、シカが最も見栄えするのは8月である。なおオスと一歳未満の子供には角は生えない。
奈良公園のシカ
日本でもっとも有名なシカといえばやはり奈良公園のシカ。奈良県を訪れた観光客は必ず奈良公園で「鹿せんべい」(原材料/米ぬか・小麦粉)をシカにやるのを楽しみとする。あたかも奈良公園が客寄せにシカを飼育しているかのようであるが、あくまでも奈良公園のシカは野生のシカである。
奈良公園は明治13年(1880)に春日大社境内などに設けられた公園で現在は国有地(管理は奈良県)。1,000頭以上のシカが生息しており、国指定天然記念物「奈良のシカ」として保護されている。そもそもは春日大社の御祭神の一柱「武甕槌命(たけみかづちのみこと、元は茨城県にある鹿島神宮の神)」がシカの背に乗って御蓋山(みかさやま、通称春日山)にやって来たという故事に基づき、シカは春日神(かすがのかみ)の神使(しんし)であるとして春日大社が崇拝してきたもの。神鹿信仰(しんろく-)という。
春日大社は藤原氏の氏神である。藤原不比等が鹿島神を祀り始めたことに発し、神護景雲2年(768)創建という。藤原氏の祖である中臣(なかとみ)氏が鹿島神宮に深く関係し氏神としていたことに起因する。
奈良公園のシカの角切り
奈良の春日大社で初秋から行われている有名行事「鹿の角きり」。これはシカの角をのこぎりで切断し除去するもので、事故防止などを目的としたものとされる(見物有料)。この行事が有名になり過ぎて”シカの角は人間が切り落としてやるべきもの”のように思われているが、それは完全な勘違い。シカの角は毎年春に自然と生え変わるものである。
シカの肉は隠語でモミジという。もみじ鍋といったら鹿鍋のことである。花札の10月の絵柄が「紅葉に鹿」であることに由来するという。この絵柄からは、10月のシカがそっぽを向いていることから「シカト(鹿十、無視すること)」の言葉も生まれている。ちなみに、イノシシ(猪)肉はボタン、ウマ(馬)の肉はサクラと呼ばれる。
シカがいる大山周辺はヤマビル(山蛭)が多く、ツキノワグマ(月輪熊)も出るため、山登り・ハイキングの際には注意が必要。また、山と人間の居住地との境界にはシカ除けの電気柵が設置されていることもあり、通り抜け用の扉以外にうっかり触ってしまうとびりびり感電する事故も発生しかねないので併せて注意したい。
大山阿夫利神社(飼育、エサ用にドングリ(団栗)を持参するとよい)
チャドクガの幼虫
茶毒蛾 昆虫/チョウ目/ドクガ科/ドクガ属 幼虫発生期/5月~6月、8月~9月 成虫発生期/6~7月、9~10月
有毒危険在来種駆除
イナゴ
蝗、稲子 昆虫/バッタ目/イナゴ科/イナゴ属 成虫期/8月~10月中旬
食用在来種
バッタ(飛蝗)の仲間であるイナゴ科の総称。イネ(稲)の葉が大好物のため、田んぼ周辺に大量発生する害虫。ただし近年は水田そのものの極度の減少、農薬(殺虫剤)の進歩で急速に数を減らしており、田んぼの近くを歩いてみてもイナゴの大群生が異常発生しているような光景はなかなか見かけなくなった。とはいえ、植物の多様性が完全に失われている(ほとんどすべての大規模な)公園にはイネ科の雑草ばかりが生い茂るため、イナゴが絶滅するようなことにはならないだろう。
佃煮にすれば食用になる。いわゆるタンパク源として食べられてきたのだが、虫を口にする抵抗感が増した現代では最早珍味かゲテモノ料理といった扱いか。内臓も含めて丸ごと食べるため少々苦いなど雑味ややあり。なんか口の中に硬いものが残るなぁと取り出してみればイナゴの後肢、というのもちょっと嫌な感じ。冷静に考えれば小魚の佃煮と大差ないのだが。
光明寺十夜法要(10月12日~15日、最終日を除き境内に佃煮の露店が出る)
コバネイナゴ
小翅蝗、小翅稲子 昆虫/バッタ目/イナゴ科/イナゴ属 成虫期/8月~10月中旬
食用在来種保護
ハネナガイナゴ
翅長蝗、翅長稲子 昆虫/バッタ目/イナゴ科/イナゴ属 成虫期/8月~10月中旬
食用在来種稀少保護
神奈川県レッドリスト2006「準絶滅危惧」
腹よりも明らかに翅の方が長く、燕尾服(えんびふく)を着ているように見えるイナゴ。神奈川県内では丹沢周辺の山間の田んぼなどにわずかに分布するのみという。
セセリチョウ
挵蝶 昆虫/チョウ目/セセリチョウ科 成虫発生期/8月~10月
在来種
オオチャバネセセリ=神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧II類」
中旬
オオキンカメムシ
大金亀虫 昆虫/カメムシ目/キンカメムシ科 見頃/8月中旬~下旬
在来種稀少
アブラギリ(油桐)の実に付く虫。体長は20mmを超え、カメムシとしては大きい。幼虫は光沢緑とオレンジのツートンカラー、成虫はオレンジ色に黒の斑が入る。いずれも存在感が強烈。8月下旬に幼虫から成虫になるので、両方を同時に見ることができるこの前後が見頃。
アカウミガメ
赤海亀 爬虫類/カメ目/ウミガメ科/アカウミガメ属 産卵期/6月中旬~7月中旬 孵化期/8月中旬~9月中旬
在来種稀少保護
環境省レッドリスト2018「絶滅危惧IB類(EN)」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧II類」
神奈川県の海岸で産卵・孵化が見られる唯一のウミガメ。湘南地方では、海岸道路の設置、海の家の開設、夜間花火の横行などが原因でアカウミガメが上陸できる静かで広い砂浜が失われつつあるため、目撃例は減少しているという。天敵はイタチザメ(鼬鮫)。
平塚市・虹ヶ浜海岸
ツクツクボウシ
つくつく法師 昆虫/カメムシ目/セミ科/ツクツクボウシ属 成虫期/8月中旬~10月
在来種
エンマコオロギ
閻魔蟋蟀 昆虫/バッタ目/コオロギ科/エンマコオロギ属 鳴く時期/8月中旬~11月上旬
在来種
どこにでもいる一般的なコオロギ。秋に鳴く虫の代表格で最も身近な存在。キリキリキリキリと鳴く。立冬(11月7日頃)を迎える頃には密かに鳴き止むか。夜行性。雑食。やや湿った枯れ草が敷き詰められた上に青い草が生え残っているような環境で見かける機会が多い。
エンマコオロギの雌 鎌倉中央公園 2017/11/16
エンマコオロギの雌 鎌倉中央公園 2017/11/16
顎(あご)がしっかりしており咬(か)んでくるので、取り扱い注意。飼育しているトカゲやカエルなどの肉食小動物に生きたままの大きなエンマコオロギを餌として与えると、口の中を咬まれて泣きを見ることも。
ナギサスズ
渚鈴 昆虫/バッタ目/コオロギ科
在来種稀少保護
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧II類」
ウスモンナギサスズ=神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧I類」
ごろごろと大きな石が転がっている海岸(転石海岸)に生息するコオロギ。翅(はね)が退化してなくなっており、海へ落ちないようにかあまり飛び跳ねない。夜行性。近似種にウスモンナギサスズ(薄紋渚鈴)などもあり。ひっくるめてウミコオロギ(海蟋蟀)ともいう。生息調査はさほど行われていないようで、一般人が目にする環境にもいないため、幻のコオロギといってよいかもしれない。出現時期等不明。
野比海岸、江の島
マサバ
真鯖 魚類/スズキ目/サバ科/サバ属 旬/8月中旬~11月
在来種食用
単にサバとも。
松輪サバ
お盆過ぎに三浦市南下浦町松輪(みなみしたうらまち まつわ)の松輪漁港で水揚げされるサバは、肉付きよく太っていて脂が乗っており、「松輪サバ」という名のブランド高級魚として取引されている。頭から尾にかけて黄色に染まることから「松輪の黄金サバ(おうごん-)」とも称され、大分県大分市佐賀関の「関サバ」と並び珍重される。価格は通常の約10倍で、1kg4,000円を超える。
下旬
サンマ
秋刀魚 魚類/ダツ目/サンマ科/サンマ属 旬/8月下旬~11月
在来種食用
秋の味覚の代表格に挙げられるサンマだが、漁は早くも7月上旬から北海道で始まる。初値は1kg7,000円程度、1匹に換算すれば1,000円と非常に高価。お盆を過ぎた8月下旬には1匹500円程度と値が下がり始めスーパーマーケットの鮮魚売り場で見かけるようになるだろう。サンマは夏が終わる頃から寒流(千島海流=親潮)に乗り、アラスカから九州の方まで産卵のため南下する。それに伴い漁場も南下し、10月に入れば1kg400円・1匹100円を切ってくるだろう。北海道や三陸沖で水揚げされたものは脂が乗っていて旨い。サンマ漁は11月の千葉県銚子沖で終了。相模湾内でも獲れなくはないが味は落ちる。冷凍(解凍)サンマは、秋も含めて通年出回っている。
落語「目黒のさんま」に因んだ「目黒のさんま祭り」(9月上旬~中旬/正しくはJR目黒駅〔目黒区ではなく品川区にある〕前で岩手県宮古産サンマが振舞われる「目黒さんま祭り」と目黒区で宮城県気仙沼産サンマが振舞われる「目黒のSUNまつり」内の行事「目黒のさんま祭」の2つがある)が新聞・テレビで毎年取り上げられている。