オオバマンリョウ

大葉万両 ツツジ目/サクラソウ科/ヤブコウジ属 花期/7月 結実期/12月下旬~2月上旬
学名/Ardisia crenata Sims var. taquetii (H.Lév.) Nakai

自生種稀少保護

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/01/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/01/29

海に近い丘陵地や山地のやや薄暗い林床に生えるとかいう常緑低木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。お馴染みのマンリョウの変種とされる。マンリョウよりも葉が大きめなのでオオバマンリョウ、あるいは実が大きめなのでオオミマンリョウ(大実万両)ないしオオミノマンリョウ(大実の万両)と呼ばれる。幹がひょろひょろ伸びて成長すると人の背丈をも超える樹高になるらしい。樹高も高いが、その分横に伸びる枝もまた長い。近隣では千葉県・房総半島の南部や東京都・伊豆大島などに自生が見られる。『千葉県レッドリスト(2017年改訂版)』にはオオバマンリョウの記載があり、”個体数や生育地の減少がみられる”として(2009年改訂版の)カテゴリーD(一般保護生物)からカテゴリーC(要保護生物)に格上げされている状況。『神奈川県植物誌2018』には掲載されていないので神奈川県内の自然界には存在していないことになっている(あるいは、マンリョウとの違いが認識されていない、大した違いはないとしてマンリョウと分けて考えられていない)。神奈川県内でも鳥の糞に混じって種子が散布され、臨海部の丘陵地、つまり真鶴半島や三浦半島を中心に細々と分布があるのではないかと推察される。

オオバマンリョウ 逗子市・長柄桜山古墳群 2019/01/24

オオバマンリョウ 逗子市・長柄桜山古墳群 2019/01/24

オオバマンリョウ、樹高(目測)1.6m 逗子市・長柄桜山古墳群 2019/01/24

オオバマンリョウ、樹高(目測)1.6m 逗子市・長柄桜山古墳群 2019/01/24

刈払いに遭ったのか樹形が崩れたオオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2018/12/19

刈払いに遭ったのか樹形が崩れたオオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウの長い枝 逗子市・長柄桜山古墳群 2019/01/24

オオバマンリョウの長い枝 逗子市・長柄桜山古墳群 2019/01/24

明確にマンリョウと異なる点を見出せるのは、葉。大きさは気持ち大きい程度であるが、縁(ふち)に刻まれた鋸歯の間隔がまったく異なり、オオバマンリョウの方が鋸歯が少なくまばら。僅かばかり柔らかいため、虫食いが多い。なお、『千葉県レッドデータブック-植物・菌類編(2009年改訂版)』には「マンリョウに似ているが葉は細長く、先端は長く尖り、葉質は薄く、濃い緑色で鋸歯は数が少ない。」とある。葉が細長く先端は長く尖るという点はちょっとよくわからない。

オオバマンリョウの葉 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウの葉 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウとマンリョウの葉の比較

オオバマンリョウとマンリョウの葉の比較

オオバマンリョウとマンリョウの葉の比較

オオバマンリョウとマンリョウの葉の比較

葉を透かして見ると、マンリョウの支脈は目立たなかったが、オオバマンリョウの葉の支脈は明確に黒く視認できるという違いがあった。

太陽光にかざし、透かして見たマンリョウとオオバマンリョウの葉裏の支脈の見え方の違い

太陽光にかざし、透かして見たマンリョウとオオバマンリョウの葉裏の支脈の見え方の違い

オオバマンリョウの花

蕾の形状はマンリョウより太め。花期はマンリョウと同一。一斉に満開せずぽつりぽつりと咲いてゆく性質も同じと思われる。花弁(花冠の裂片)はマンリョウより強く中膨れしており、先端はマンリョウほど後方へカールしない。花径は1.1~1.4cmで、マンリョウの花(の花弁先端をまっすぐに伸ばして計測したもの)と大差なし。1mmないし2mmばかり大きいかもしれない。マンリョウは咲き終わるとすぐに白色のままの花冠がぽろぽろと落下するが、オオバマンリョウの花は樹上で茶色く枯れているものが目立った(白色のまま落下するものもある)。

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

オオバマンリョウ 藤沢市・江の島 2019/07/25

たまたまかもしれないがマンリョウよりも他の草木茂るところに生えていたため、クモ(蜘蛛)の巣にひどくまみれた状態だった。

オオバマンリョウの実

マンリョウよりも大きくなるという話もあるが、そうでもないという話も聞く。両方あるのかもしれない。湘南・鎌倉・三浦半島で見かけたことがあるものは、マンリョウの実と大きさの違いは感じられなかった。直径8mm~9mm。8.4mmのものが多い。赤く色付くのはマンリョウよりも時期が遅れるか。そしてもうそろそろ濃い赤色に染まっていようかという頃には、犯人はヒヨドリ(鵯)なのかタイワンリス(台湾栗鼠)なのかわからないが、実はあっという間に持ち去られてしまっているだろう。

オオバマンリョウの色付きかけの実 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウの色付きかけの実 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウの色付きかけの実 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウの色付きかけの実 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウの色付きかけの実 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウの色付きかけの実 藤沢市・江の島 2018/12/19

オオバマンリョウの色付きかけの実 葉山町/逗子市・三浦アルプス 2018/11/23

オオバマンリョウの色付きかけの実 葉山町/逗子市・三浦アルプス 2018/11/23

実は、幹から伸びた枝の先に付く。マンリョウの場合は葉が落ちたと思しき裸の枝先に実がなる”幹-枝-実”という構造がたいへん多いが、観察できたオオバマンリョウの場合は数多くの葉が茂った枝の先に実ができる”幹-葉付きの枝-実”という構造が圧倒的に多かった。ふつうのマンリョウも巨大に成長すると同様の傾向が見られる。

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/01/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/01/29

枝に緑の葉と赤い実が両方付くため、強風で葉先を傷めず虫食いされずクモ(蜘蛛)の巣まみれにならず栽培できれば、正月用のみならず生け花や茶花(ちゃばな)向けの切り枝として結構な需要が見込めそう。

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/12/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/12/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/12/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/12/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/12/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/12/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/12/29

オオバマンリョウの実 藤沢市・江の島 2019/12/29

実の外観にめぼしい差はなかったが、中の種子はオオバマンリョウの方がマンリョウ(栽培品)よりも大きめだった。直径6~7mm。つまり、果肉はオオバマンリョウの方が少なくマンリョウ(栽培品)の方が少し肉厚だったということ。但し多数のサンプルを調べたわけではないので、たまたまそのような個体差があったというだけの可能性は否定しない。

オオバマンリョウとマンリョウの、実と種子の比較

オオバマンリョウと#マンリョウの、実と種子の比較

種子はマンリョウ同様になかなか発芽しないように感じられるだろうもの。マンリョウ同様に、先に地下に根を伸ばし、その後になってようやく地上部に葉を登場させるためである。”発芽しないなぁ”と思っても諦めて捨てたり掘り起こしたりせず、播種(はしゅ)から発芽まで半年から一年近くかかるものと覚悟して辛抱強く待ちたい。

オオバマンリョウの発芽 茅ヶ崎市浜之郷 2020/09/22

#オオバマンリョウの発芽 茅ヶ崎市浜之郷 2020/09/22


横浜市戸塚区・#俣野園(種子を何個か送付したので栽培されているかも)

三浦アルプス、長柄桜山古墳群(平成31年(2019)春頃に伐採された=枯死せず新しい葉が出てはいるが樹高は目測160cmから15cm程度になってしまった)、江の島

参考資料

『千葉県の保護上重要な野生生物 千葉県レッドデータブック 植物・菌類編(2009年改訂版)』

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マンリョウ