深山樒 ムクロジ目/ミカン科/ミヤマシキミ属 花期/3月中旬~下旬 結実期/11月中旬~12月
学名/Skimmia japonica Thunb. var. japonica
有毒稀少
#スキミアの雄花 鎌倉市・浄妙寺 2017/04/02
丘陵地や山地のやや薄暗い林床(りんしょう)に生える常緑の低木で、雌雄異株(しゆういしゅ)。タチバナモッコク(橘木斛)とも。名前が紛らわしいだけでシキミ(樒)やモッコク(木斛)とはまったくの別種。タチバナ(橘)は同じミカン科ながら、本種の実はミカンではなくモチノキ(黐の木)とかシロダモ(白梻)のような赤い玉。神奈川県内では丹沢や箱根に分布あり。なぜか飛び地として三浦丘陵の付け根部分にも自生がある。それ以外の湘南・鎌倉・三浦半島で見かける機会は栽培ものも含めてほとんどなかろう。近隣では、東京都八王子市・高尾山のものが人目に付きやすいか。南足柄市の大雄山最乗寺(道了尊、曹洞宗)には、おそらく自生していたものを由来として境内に植栽したと思われるミヤマシキミが多数。鬱蒼としたスギ(杉)の巨木で薄暗い境内ながら、初詣客を赤い実でもてなし楽しんでもらおうとあちこち植えたのではないか。
境内に植えられた#ミヤマシキミ 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
境内に植えられた#ミヤマシキミ 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
境内に植えられた#ミヤマシキミ 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
境内に植えられた#ミヤマシキミ(雄株) 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊)奥の院 2021/01/05
スギの林縁に生えた#ミヤマシキミ(背後にアオキがある) 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
境内に植えられた#ミヤマシキミ(雌株) 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊)奥の院 2021/01/05
僅かに這い気味なミヤマシキミ 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊)~明神ヶ岳 2021/01/05
#ミヤマシキミ(雌株)の良株 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊)駐車場 2021/01/05
ミヤマシキミがヨーロッパで品種改良され日本に逆輸入された園芸品種群がミヤマシキミ属を意味するスキミア(Skimmia)と呼ばれ、小型な鉢植えが12月頃からホームセンターの園芸コーナーで販売されている。蕾の数が多くてふっさふさに、色も赤みを強く帯びたりして、クリスマスや正月の飾りにちょうど良いかも。なおスキミアとして売られているのは決まって、蕾の数がたくさん付く雄株の方。小さな実と勘違いされているきらいがあるように感じられるが、付いているのは花の蕾である。一般的に民家などで栽培されることがあるのはスキミア。スギの林縁などに生えた野生の(原種の)ミヤマシキミは、大抵は株全体の姿は少々だらしなく感じられ、庭や公園で栽培するにはちょっと躊躇するものである。※本頁では、花序が大きく見ごたえある栽培ものはスキミアとして掲載する。
寄せ植えに使われた#スキミア(雄株) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/01/10
寄せ植えに使われた#スキミア(雄株) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/01/10
#スキミア(雄株)の蕾 鎌倉市・浄妙寺 2017/02/03
#スキミアの雄花 鎌倉市・浄妙寺 2017/04/02
#スキミアの雄花 鎌倉市・浄妙寺 2017/04/02
#スキミアの雄花 鎌倉市・浄妙寺 2017/04/02
葉は互生で、鋸歯(きょし)ない全縁(ぜんえん)。葉脈(支脈)はサカキ(榊)などと同様に不明瞭で、はっきりとは視認できないもの。よくよく見れば、支脈は葉の縁(ふち)に達しない環結脈(Brochidodromous)。葉の縁は、ゲッケイジュ(月桂樹)のように葉裏側へ少し隆起する。ミカン科なので葉には油点(ゆてん)が無数にあり、光にかざして見れば白く点々が見える。千切ると僅かながらミカン科らしい芳香がしないでもない。
#ミヤマシキミ(雌株)の葉 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊)奥の院 2021/01/05
#ミヤマシキミ(雌株)の葉 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミの葉 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミの葉 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミの葉裏の特徴 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミの葉を光にかざすと見える油点 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/08
ミヤマシキミの花
冬のうちから蕾を蓄えており、かわいらしくちょっと気になる存在。スキミアは冬の彩りとして利用されることがある。人気はさほど高からず。
#ミヤマシキミ(雄株)の蕾 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミ(雄株)の蕾 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミ(雄株)の蕾 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#スキミア(雄株)の蕾 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/01/10
#スキミア(雄株)の蕾 鎌倉市・浄妙寺 2017/02/03
#ミヤマシキミ(雌株)の蕾 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミ(雌株)の蕾 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
咲いて少しばかり華やかなのは(雄株の)雄花。(雌株の)雌花はやや地味ながら、赤い実を付けてくれるのは雌株の方である。
#スキミアの雄花 鎌倉市・浄妙寺 2017/04/02
#スキミアの雄花 鎌倉市・浄妙寺 2017/04/02
花柄(かへい)や花弁外側がよく赤く染まるものをアケボノミヤマシキミ(曙深山樒)と呼び分けることがある。
ミヤマシキミの実
正月向けにうってつけな赤い実を付ける。やや大きめで、直径はモチノキの実と同程度の約1cm。この実が(ツルシキミ(蔓樒)の実と併せて)センリョウ(千両)やマンリョウ(万両)を凌ぐオクリョウ(億両)の名で珍重されることがあるとかどうとか。といっても知名度はずば抜けて低く、完全に滑っているのが現状。株を玉造りのように育てて豊かに実をならせることができれば、確かに億両の名に恥じない姿にもなろう。
#ミヤマシキミの実 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミの実 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
#ミヤマシキミの実 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
実の観賞は11月中旬が最適か。年を越しても実は残っていようが、鳥などに見つかると(特に餌が少なくなる12月中旬以降は)食べられてしまうことも。
#ミヤマシキミの実が鳥に食べられた跡 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
東京都八王子市上恩方町・夕やけ小やけふれあいの里(散策路(3号路・4号路)頂上から黒ドッケ方面への山道沿いに多数 ※「登山のため通り抜けたい」旨を告げれば夕やけ小やけふれあいの里の入場料200円は不要、4月20日頃か)、横浜市南区・#こども植物園(生垣園に雄株、雌株は滅失か)、横浜市金沢区・横浜自然観察の森(天園への道沿い左側に雄株、ツルシキミもある?)、横浜市緑区・#新治市民の森(にいはる-、駐車場(土日祝のみ開場)周囲に植栽、3月20日頃に雌花、白実も)
#浄妙寺(参道右手にタチバナモッコクとしてスキミア雄株、蕾が観梅客の目に留まる)、#大船フラワーセンター
南足柄市・#大雄山最乗寺(道了尊、駐車場周辺、慧春尼堂周辺に多い、奥の院階段下に貧弱ながら多い、奥の院にまずまずの良株多め、花=4月中旬?、実=11月中旬)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
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ツルシキミ
蔓樒 ムクロジ目/ミカン科/ミヤマシキミ属 花期/3月中旬~下旬、(箱根)4月中旬~5月上旬 結実期/11月~12月、(箱根)11月~12月
学名/Skimmia japonica Thunb. var. intermedia Komatsu
有毒稀少
ツルシキミの実 箱根町・湖尻 2017/11/17
ミヤマシキミ(深山樒)の変種。ツルミヤマシキミ(蔓深山樒)とも。あまり枝を分岐させずに茎を長く伸ばして倒れ地面に横たわる姿になる。上に積もった雪で枝を折らずに耐えるための変形という。こちらも山地に生えるので、神奈川県内では丹沢や箱根で見かける程度。三浦半島付け根にもあるとかないとか。にょきにょき伸びて姿にまとまりがないため、栽培はされないのでは。
ツルシキミの葉 箱根町・湖尻 2017/11/17
ツルシキミの花
地面を横たわっていた幹の先端がくいっと立ち上がり、花を咲かせる。他の低木の下木(かぼく)として生えているため、花や実の付きはあまりよくないかも。
ツルシキミの実
ツルシキミの実 箱根町・湖尻 2017/11/17
ツルシキミの実 箱根町・湖尻 2017/11/17
南足柄市三竹・御嶽神社(社殿裏山、県指定天然記念物「御嶽神社の社叢林」)、箱根町・湖尻
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
見つけました。
2012年11月13日に大雄山最乗寺で、赤い実と、蕾の写真を撮っていました。