モチノキ

黐の木 モチノキ目/モチノキ科/モチノキ属 花期/3月下旬~4月上旬 結実期/10月~2月
学名/Ilex integra Thunb.

自生種

モチノキの実 横須賀市・ヴェルニー公園 2017/10/24

#モチノキの実 横須賀市・ヴェルニー公園 2017/10/24

常緑の高木で、雌雄異株(しゆういしゅ)。昔はこの木の樹皮から鳥黐(とりもち、鳥を捕獲するためのねばねばした粘着物質、「ごきぶりホイホイ」(アース製薬)の粘着シートのような用途のもの)を作っていた。神奈川県内にも広く自生があるという。公園などにもよく植えられるのでどれが自生でどれが植栽でどれが栽培逸出なのかはよくわからないけれども。三浦丘陵などのハイキングコースを歩いていると時折かなりの高木に出くわすことがある。おそらくこういったものが自生品なのだろうが、葉などはかなりの高所に付いているため目利きでない限りそれがモチノキだとは判別できないだろうとは思う。

モチノキの若木 茅ヶ崎市美術館 2019/02/22

#モチノキの若木 茅ヶ崎市美術館 2019/02/22

公園に植えられていることが多いので目にする機会は多い。赤い実は同属のクロガネモチ(黒鉄黐)より一回り大きいがふつう数は少なめで観賞に向くものではない。株により色付きは極めて遅く、きれいな赤色に染まらないまま傷むこともしばしば。葉も実も健康でないのか黒ずむもの多い。カイガラムシ(介殻虫)が引き起こす”すす病”などに罹(かか)りやすいのかもしれない。きれいなモチノキなんてなかなか見かけない。このような木をお役人様はなぜわざわざ公園に今なお植えたがるのかはまったくの謎。強いていうなれば県内に自生がある木だから、か。

モチノキの雄花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

#モチノキの雄花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

モチノキの葉 茅ヶ崎市美術館 2019/02/22

#モチノキの葉 茅ヶ崎市美術館 2019/02/22

すす病に侵されたモチノキならではの汚らしい枝葉 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2019/02/23

すす病に侵された#モチノキならではの汚らしい枝葉 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2019/02/23

藤沢市渡内(わたうち)の慈眼寺境内に市指定天然記念物「混生樹(寄り木)」なるものあり。「混生樹」「寄り木(よりき)」は文化財指定時に考え出された造語。モチノキ4株、タブノキ(椨)3株、スダジイ(須田椎)1株、計8株の合体木という。確かに三種は見て取れるが、株元に覆いがかぶせられていることもあって本数はよくわからない。

市指定天然記念物「混生樹(寄り木)」(西側から) 藤沢市渡内・慈眼寺 2023/12/30

市指定天然記念物「#混生樹(寄り木)」(西側から) 藤沢市渡内・慈眼寺 2023/12/30

市指定天然記念物「混生樹(寄り木)」(北側から) 藤沢市渡内・慈眼寺 2023/12/30

市指定天然記念物「混生樹(寄り木)」(北側から) 藤沢市渡内・慈眼寺 2023/12/30

市指定天然記念物「混生樹(寄り木)」の株元(東側から) 藤沢市渡内・慈眼寺 2023/12/30

市指定天然記念物「混生樹(寄り木)」の株元(東側から) 藤沢市渡内・慈眼寺 2023/12/30

葉はハイノキ科のクロキ(黒木)に似ていて紛らわしい。といわれるが、神奈川県内では自生なく、栽培ものも見かけないのでは。若い枝に稜(りょう)があり、幹が黒っぽかったらクロキの疑い。花や実があれば混同しない。

モチノキの花

花弁はふつう四枚、ときに三枚。花色は黄緑なので、花数は多いが目立たない。数メートルも離れてしまえば咲いていることにさえ気づけないものである。

花の中心部から雌蕊が突き出ていないのが(雄株の)雄花。

モチノキの雄花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

#モチノキの雄花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

モチノキの雄花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

#モチノキの雄花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

モチノキの雄花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

#モチノキの雄花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

雌蕊が明確に突き出ているのが(雌株の)雌花。雌雄異株とされているのでそれでよいはずだが、雌花の退化した(しかけた)葯に花粉らしきものが確認できるものがある。機能を失っている花粉なのかじつは両性花であるのかは不明。

モチノキの雌花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

#モチノキの雌花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

モチノキの雌花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

#モチノキの雌花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

モチノキの雌花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

#モチノキの雌花 横浜市西区・野毛山公園 2019/03/22

モチノキの実

赤色(濃い朱色)に熟す。クロガネモチの実より明らかに大粒ながら、数は少なくたわわには実らないことが多い。花柱痕も大きめ。

モチノキの色付き始めた実 茅ヶ崎市・太陽の郷庭園 2021/10/11

#モチノキの色付き始めた実 茅ヶ崎市・太陽の郷庭園 2021/10/11

モチノキの色付き始めた実 茅ヶ崎市・太陽の郷庭園 2021/10/11

#モチノキの色付き始めた実 茅ヶ崎市・太陽の郷庭園 2021/10/11

モチノキの実 鎌倉市材木座・五所神社 2017/11/16

#モチノキの実 鎌倉市材木座・五所神社 2017/11/16

モチノキの実には果序柄がない(”枝-果柄-果実”型)、クロガネモチの実には明らかな果序柄がある(”枝-果序柄-小果柄-果実”型)という違いあり。

モチノキとクロガネモチの実の比較

モチノキとクロガネモチの実の比較

赤く熟した実は10月中旬からぽろぽろと落下していることがある。稲村ガ崎や塚山公園でそうした光景を見たが、はて自然落下なのかそれともタイワンリス(台湾栗鼠)などの仕業か。

モチノキの落下した実 鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区 2017/10/12

#モチノキの落下した実 鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区 2017/10/12

モチノキの実 横浜市金沢区・長浜公園 2017/11/12

#モチノキの実 横浜市金沢区・長浜公園 2017/11/12

モチノキの熟した実 藤沢市・長久保公園 2020/11/26

#モチノキの熟した実 藤沢市・長久保公園 2020/11/26


東京都文京区・#小石川植物園(クロキ)、横浜市金沢区・#長浜公園(野鳥観察小屋A付近に実付きが最高に多い雌株)、横浜市金沢区・#金沢自然公園(ののはな館西側公衆便所前・男性用出入口向かい=場所としては不快極まりないが観察には稀少な良木、雄株)、横浜市戸塚区柏尾町1005(県指定天然記念物「益田家のモチノキ」、樹齢約250年の2本(1本は二股に分かれる)、平成25年(2013)旧家は売却され土地所有者が変わる、平成29年(2017)再開発工事中ながら木はかろうじて残されたか、同年2月11日 二股の片方を無許可伐採・県文化財保護条例違反で罰金5万円の略式命令(平成30年(2018)3月17日 カナロコ)、平成30年(2018)許可を得て国道1号線からすこし離れた地点に移植・モチノキ2本以外の益田家跡は完全な更地に、枯死、令和元年(2019)7月30日指定解除、かながわの名木100選「益田家のモチノキ」)

#ヴェルニー公園(多い)、#横須賀市秋谷(滅失、かながわの名木100選「軽部家のモチノキ」)、城ヶ島ハイキングコース(ウミウ展望台周辺に実多い)、鎌倉市材木座・#五所神社(参道に実多いがやや高所)、藤沢市渡内・#慈眼寺(モチノキ4株・タブノキ3株・スダジイ1株の合体木=市指定天然記念物「混生樹(寄り木)」)

#鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区、茅ヶ崎市・#中央公園、#柳島しおさい公園(ずば抜けて汚い木ばかり)

参考資料

『藤沢市文化財調査報告書 第六集』 藤沢市教育委員会編集・発行(1970)

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

クロガネモチ

タラヨウ