須田椎、首陀椎 ブナ目/ブナ科/シイ属 花期/5月中旬~下旬 結実期/10月中旬~11月
学名/Castanopsis sieboldii (Makino) Hatus. ex T.Yamaz. & Mashiba subsp. sieboldii
食用自生種
スダジイの実(シイの実) 2017/11/04
森林に生える常緑の高木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)の雌雄異花。単にシイ、シイノキ(椎の木)といっても本種を指す。スダの語源は諸説あるもまったくの不明。湘南・鎌倉・三浦半島で普通種。公園にも植えられている。
時期・色的に開花しているスダジイか 大磯町・羽白山(坂田山)方面 2021/05/08
時期・色的に開花しているスダジイか 大磯町・羽白山(坂田山)方面 2021/05/08
時期・色的に開花しているスダジイか 大磯町・羽白山(坂田山)方面 2021/05/08
スダジイの巨木 逗子市沼間・鷹取山ハイキングコース 2018/10/30
スダジイの巨木 逗子市沼間・鷹取山ハイキングコース 2018/10/30
ふだん意識する機会はほとんどないスダジイであるが、身近なところでカキノキ(柿の木)の花がピークを過ぎてバラ(薔薇)がちょうど見頃を迎えている時期、丘陵地のところどころで木々が見事に白っぽく染まっているのが人の目に留まるだろう。その木こそがおそらくはスダジイである。スダジイより少し早くから開花しているクスノキ(楠)の大木もまた白っぽく見えるが、花の形状がまったく異なるのでよく確認すれば混同することはあるまい。花の香りも大きく違って、クスノキは清涼感漂う良好なもの、スダジイは反対に不快臭(ときに”精液のにおい”とも評される)。
スダジイ 茅ケ崎里山公園 2017/05/15
スダジイ 茅ケ崎里山公園 2018/05/12
スダジイ 茅ケ崎里山公園 2018/05/12
#スダジイの幹、右後方は#マツ 藤沢市・長久保公園 2018/05/14
ある程度大きく成長した木の樹皮は、米菓の”おかき”のように縦によくひび割れる。
#スダジイの幹 藤沢市・長久保公園 2017/11/03
#スダジイの葉 藤沢市・長久保公園 2018/05/14
#スダジイの葉 藤沢市・長久保公園 2018/05/14
#スダジイの葉の特徴 藤沢市・長久保公園 2018/05/14
スダジイの葉は互生。先端は細くやや長く尖る。先端側半分にだけ鋸歯あるものが多いが、鋸歯がまったくない全縁(ぜんえん)の葉であることも。葉裏の色はさまざまであるが、光沢ある(銅のような)茶色を帯びるものが目に留まる。
#スダジイの葉 藤沢市・長久保公園 2017/11/03
#スダジイの葉裏 藤沢市・長久保公園 2017/11/03
同様にシイノキと呼ばれるものに、たいへん紛らわしいツブラジイ(円椎)、別名コジイ(小椎)なるものあり。名前の通り、実が小さめで丸っこい(長さ1.3cm以下)。また樹皮は黒っぽくない灰褐色で、スダジイのようにはひび割れない(または、ひび割れても浅い)。但し、スダジイとの雑種とかいわれる中間型もあって、見分けが簡単でない。『神奈川県植物誌2018』によれば小田原市にツブラジイらしき自生があるも、殻斗(かくと)が長くてスダジイ型であることから、これがツブラジイであると断定していない。従って現状としては、ツブラジイは静岡県の伊豆半島以西に分布がある、ということになる。なお公園などに植栽されることがある。が、よく見ればその正体はただの(実が小さめな)スダジイだったなんていうことも。
スダジイの名前の由来であるが、一方のツブラジイ(コジイ)が実の形状から名づけられていることを鑑みれば、スダジイも対比するように実の形状が名前の由来である可能性はないのだろうか。実がすらっと長いシイなのでスラジイ、とかなんとか。(古資料を一切漁っていない与太話。)
スダジイの花
豊かに咲いているのはぜんぶ雄花。これが精液のような不快臭をぷんぷん放つ。よく「クスノキはくさい」といわれるが、大方は同時期に咲いているスダジイが真犯人と思われる(クスノキは爽やかな香りながら、昭和時代(-1989)の防虫剤に使われていた樟脳(しょうのう)のにおいが苦手ない人はクスノキも「くさい」というだろが)。雄花は長い穂になってだいたいは下向きに垂れる。花期も終わりに近づいてくると、小花が風に煽られぽろぽろぽろぽろと大量に降り注いでくるので注意したい。
スダジイ 茅ケ崎里山公園 2018/05/12
#スダジイ 藤沢市・長久保公園 2018/05/14
#スダジイの雄花 茅ヶ崎市・中央公園 2018/05/15
#スダジイの雄花 茅ヶ崎市・中央公園 2018/05/15
#スダジイの雄花 茅ヶ崎市・中央公園 2018/05/15
#スダジイの雄花 茅ヶ崎市・中央公園 2018/05/15
雌花は上向きの柄(え)に付いた小さいもの。「ピース!!」とVサインをしているように見える(が、花柱はふつうは三個ある)。
#スダジイの雄花と雌花 茅ヶ崎市・中央公園 2018/05/15
#スダジイの雌花 茅ヶ崎市・中央公園 2018/05/15
近似種のマテバシイ(全手葉椎)の花はスダジイが完全に終わった6月初旬から。
スダジイの実
実はドングリ形だが、ドングリではなくふつうは”シイの実”と呼び分けられる。シイの実は食用になるため。シカ(鹿)もシイの実が好物で、ばりばりばりばり殻ごと食らう。
#スダジイの実(シイの実) 藤沢市・長久保公園 2017/10/11
#スダジイの実(シイの実) 藤沢市・長久保公園 2017/10/11
スダジイの実(シイの実) 2017/11/04
スダジイの実(シイの実) 2017/11/04
#横浜市港南区日野中央(民家庭、県指定天然記念物「日野のシイ」、かながわの名木100選「日野のシイ」)
鷹取山ハイキングコース(かまくらと三浦半島の古木・名木50選)、横須賀市野比・白髭神社(県指定天然記念物「白髭神社の社叢林」)、#長久保公園(樹木見本園に低所に花ある良木・樹名板あり=平成30年(2018)抜根されてしまった、スイレンの池の四阿(あずまや)側にもう1本)、茅ケ崎里山公園(記念ガーデン西側など)、平塚市・#総合公園(球場入口付近、景観重要樹木)、大磯町・鷹取神社(県指定天然記念物「鷹取神社の社叢林」)
光則寺(土牢参道、高木のため観察不能・実はたくさん落ちている)、舟地蔵公園(低所に花あり)、茅ヶ崎市・#中央公園(低所に花あり)、大磯町・高来神社(スダジイの幹上部からヤブニッケイが生え出た合体木、周囲を常緑樹に囲われておりよくは見えない、町指定天然記念物「高来神社のシイニッケイ」)、大磯城山公園(強枝落としで樹形ぼろぼろのツブラジイ=駐車場自販機付近・北蔵ギャラリー、共に樹名板あり)
厚木市・松石寺(県指定天然記念物「松石寺の寺林」)、愛川町・八菅神社(はすげ-、県指定天然記念物「八菅神社の社叢林」)、南足柄市三竹・御嶽神社(県指定天然記念物「御嶽神社の社叢林」)、箱根町・早雲寺(県指定天然記念物「早雲寺林」)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)