小葉の立波 シソ目/シソ科/タツナミソウ属 花期/4月~5月、11月下旬~12月
学名/Scutellaria indica L. var. parvifolia (Makino) Makino
自生種改良種
#コバノタツナミ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/04/23
林内に生える、常緑の多年草。本来は海に近い丘陵地に好んで自生があるらしい。ハイキングコースを歩いていると時折見かけることがある。名は、コタツナミ(小立波)、毛が多いことからビロードタツナミ(ビロウドタツナミ、びろーど立波)ともいう、と説明されることが多いが、この名が使われることはまずない。コバノタツナミソウともふつうは言わない。姿はぜんぜん違うのだが、学術上はタツナミソウ(立波草)の変種に位置付けられている。なおタツナミソウの仲間はどれも見た目が似通っていて一般の人には見分けが難しいからか、いずれもタツナミソウの名で総称されることも多いのだが、一般にタツナミソウといったら見かける頻度が最も多いコバノタツナミを指していることがほとんど。※本頁でいうタツナミソウはコバノタツナミを含めないものとする。草丈は、ふつう10cm前後で、そこから花茎(かけい)が立ち上がっても高さ20cm程度までで、小型。適度によく茂り、実生(みしょう)もよく生え出て、手間がかからず簡単に育てることができ、小型でかわいらしく、花もよく咲くことから、人為的に栽培されることも多い。人家周辺で見かけるタツナミソウの仲間はいずれも本種であろう。市街地から野山に至るまで、栽培逸出が強く疑われるものも多く見かける。神奈川県内で、タツナミソウの仲間としてはもっともふつうに見かける。園芸栽培もよくされているので、一般の人もしばしば目にしていることだろう。乾燥しすぎない水はけの良い場所でさえあれば生育するようで、耐暑性・耐寒性・耐陰性はいずれも高い。
#コバノタツナミ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/04/23
花が咲いていないときのコバノタツナミ 横須賀市・観音崎公園 2022/06/13
#コバノタツナミ 横浜市南区・こども植物園 2017/04/28
#コバノタツナミ 横浜市南区・こども植物園 2017/04/28
#コバノタツナミ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/12/04
#コバノタツナミの大株 茅ヶ崎市浜之郷 2024/04/23
秋のコバノタツナミ 大磯町・高麗山公園 2024/11/21
草丈が10cm程度しかないので、他のタツナミソウの仲間との見分けは簡単。特によく生育している栽培ものは一目瞭然の姿をしている。花時に茎を背高く伸ばしても20cmまでである。葉は小さく、丸っこいと感じる心形。葉脈がべこべこによく凹むのが大きな特徴。鋸歯(きょし)は少なく、3~7対。茎に毛が多い。
コバノタツナミとオカタツナミソウの比較 茅ヶ崎市浜之郷 2022/04/18
#コバノタツナミの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2024/04/23
#コバノタツナミの葉、鋸歯は少なく7対以下 茅ヶ崎市浜之郷 2024/04/23
#コバノタツナミの葉 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12
#コバノタツナミの葉 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12
草丈が20cmを明らかに超過して30cm程度あったら別種を疑う。湘南・鎌倉・三浦半島の丘陵地を通るハイキングコース沿いなどで見かけるひょろっとした姿のものはおそらくはオカタツナミソウ(丘立波草)だろう。タツナミソウは希少。
コバノタツナミの花
開花は主に晩春から初夏にかけて。晩秋から初冬にも咲くことがある。また時期外れでも開花しているものをちらほら見かけることがある。花色は本来は紫色。開花に適した時期以外では閉鎖花を付けるようで、花が咲いた記憶はないのに実ができている、なんていうことも。
#コバノタツナミ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/04/23
#コバノタツナミ 横浜市南区・こども植物園 2017/04/28
#コバノタツナミ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/12/04
#コバノタツナミ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/12/04
立波(立浪)とは、大きな波が打ち寄せる姿のこと。例えば、葛飾北斎の名所浮世絵『富嶽三十六景』のうち「神奈川沖浪裏」にて、富士山と共に描かれた大きな波が立波である。タツナミソウの仲間の花が一方に向かって揃って咲く姿が立波に喩(たと)えられた。
横から見た#コバノタツナミ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/12/04
横から見た#コバノタツナミ 横浜市南区・こども植物園 2017/04/28
白色の品種もあり、よく栽培される。野生で見かける白花はおよそ栽培ものの逸出だろう。
コバノタツナミ(白花) 鎌倉市・浄妙寺 2017/05/08
#コバノタツナミ(白花) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/04/13
#コバノタツナミ(白花) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/04/13
#コバノタツナミ(白花) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/04/13
林内に逸出したコバノタツナミ(白花) 横浜市緑区・四季の森公園 2021/05/04
コバノタツナミの実
萼は上下に分かれる嘴(くちばし)のような形状で、花冠はその間から突き出ていた。咲き終わって花冠が落ちると萼が閉じ、上側の萼に付属していたリーゼントが前に倒れて、受け皿のような姿となる。これが妙な形の実。種子は花冠の付け根があった萼の間の奥地にできる。種子が熟すと、上蓋(上側の萼+リーゼント)がぽろりと外れて種子が露出し放出される仕組み。
#コバノタツナミの萼と実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/05/08
#コバノタツナミの未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/05/08
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)