藪蘭 クサスギカズラ目/クサスギカズラ科/ヤブラン属 花期/8月~10月 結実期/11月下旬~2月
学名/Liriope muscari (Decne.) L.H.Bailey
自生種
#ヤブラン 鎌倉市・収玄寺 2018/09/28
丘陵地などのやや薄暗い林床に生える常緑の多年草。林があればだいたいどこでも見られる普通種。鎌倉の寺境内でもよく栽培されている。
#ヤブラン 鎌倉市・鶴岡八幡宮 2019/08/11
ヤブラン 秦野市・葛葉緑地 2018/12/29
葉の雰囲気はオオバジャノヒゲ(大葉蛇の髭)やキチジョウソウ(吉祥草)によく似ており、特にキチジョウソウとは見分けが困難。加えて、そっくりというほどではないものの、葉が細くて全体的に小振りなジャノヒゲ(蛇の髭)、ジャノヒゲにしては葉が異様に長くなるナガバジャノヒゲ(長葉蛇の髭)、葉がジャノヒゲに似ているが花はヤブランに近いヒメヤブラン(姫藪蘭)、巨大なノシラン(熨斗蘭)あたりも紛らわしい。
ヤブランの葉は、すこし幅のある線形。縁(ふち)には細かいぎざぎざがないので指でなぞるとつるっとしている。葉裏は濃い緑色と(白っぽくはない)緑色の細かい縞々模様。
ヤブランの葉 秦野市・葛葉緑地 2018/12/29
ヤブランの葉裏 秦野市・葛葉緑地 2018/12/29
民家の庭などでは、葉に斑(ふ)が入った園芸種が好んで栽培されている。白斑ではなく、うっすらと黄色がかっている。よく似たものにカレックス・オシメンシスなど数種あるので混同注意。
植桝の囲いとして植栽された斑入り#ヤブラン 茅ヶ崎市役所 2021/06/01
斑入り#ヤブラン 茅ヶ崎市役所 2021/06/01
斑入り#ヤブラン 横須賀市・衣笠山公園 2016/09/17
斑入り#ヤブラン 茅ヶ崎市西久保・西湘バイパス側道 2018/09/19
葉は毎春生え変わる。環境差により、3月中旬から4月中旬にかけて。古葉が地面にべたっと倒れ伏すと、新葉が生え出てくる。庭などで栽培しているヤブランは、古葉が倒れる直前の3月10日頃に、古葉を(地表から1cmくらいのところで、ハサミを使って)すべて刈り取ってしまうと、その後の見栄えがきれいに整う。
地面に古葉が伏して新葉が僅かに生え出てきた#ヤブラン 茅ヶ崎市浜之郷 2022/03/31
新葉が生え出てきたヤブラン 二宮町・吾妻山公園 2021/04/07
ヤブラン・ジャノヒゲ類の違いのまとめ
名前が紛らわしくて混同しがちなヤブミョウガ(薮茗荷)はまったくの別種。
ヤブランの花
花は直立し、薄紫色。
ヤブラン 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/31
ヤブラン 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/31
ヤブランの実
秋から冬にかけては正月飾りに好まれる赤色の実がたいへん多いが、ヤブランの実は緑色から熟すと黒光りした高級感あふれる珠(たま)となる。色は、青っぽさ、紺色、白っぽいなどを感じない、照りのある真っ黒。直径7mm程度。この実(のように見える種子)が美しくよく目立つ。受粉に失敗するのだろうか、花すべてが実となったものは見ない。柄(え)は本来は直立するものだが、付いた実が多いと自重で傾き倒れる。
ヤブランの未熟な実 大磯町・高麗山公園 2015/11/11
ヤブランのほぼ熟した実 逗子市・森戸川源流 2018/11/23
ヤブランの実 逗子市・森戸川源流 2018/12/21
ジョウビタキ(尉鶲)、野鳥愛好家に人気が高いヒレンジャク(緋連雀)・キレンジャク(黄連雀)といったあたりの鳥はヤブランの実を好んで食べるようだ。完熟した実が餌の少ない真冬でもふつうに残っているので、多くの鳥にとってはあまりおいしいものではないのかもしれない。
ヤブランの完熟した実 平塚市・高麗山公園・浅間山 2017/02/19
ヤブランの実と、皮を一枚剥いてみたもの 2018/11/24
きれいな実だが、摘んだらじきにしおれてしまうので手芸や飾りには向かない。
ヤブランとヒメヤブランの、数日でしおれた実 2018/12/01
ヤブランの実のようながら照りが弱く、白く濁ったような黒(のような紺のような)色に感じられたらオオバジャノヒゲである可能性。両者は果柄(かへい)の形状が明確に異なるので指でつまんでみると違いがはっきりわかる。ヤブランは丸っこく感じるものに四つばかり小さな稜(りょう、出っ張り)があるためあるいは四角っぽく感じるかも。対してオオバジャノヒゲ(などのジャノヒゲ属)は明らかに扁平である。参照)オオバジャノヒゲとヤブランの果柄断面の模式図
森戸川源流、#長谷寺(班入り多い)、高麗山公園(ヤブラン平などに群生、平成28年(2016)頃からイノシシによる掘り返し被害甚大・急激に減少するおそれあり ※マダニに注意)
#荏柄天神社(イチョウ下)、#鶴岡八幡宮(元大銀杏周辺)、#収玄寺、平塚市・#春日神社