吉祥草 クサスギカズラ目/クサスギカズラ科/キチジョウソウ属 花期/10月下旬~11月上旬 結実期/11月中旬~1月
自生種
キチジョウソウ 逗子市・神武寺 2018/10/25
やや湿った薄暗い林床に生える多年草。名前の由来は、いつも花はないが植えてある家に吉事があると花を咲かせるという言い伝えによる(牧野)。もちろんそのようなことはなく、花は毎年同じ季節にふつうに咲く。名前からしてキチジョウソウは珍しい幻の植物であるかのような印象を抱(いだ)く人があるかもしれないが、花や実が付いていないとヤブラン(藪蘭)などとたいへん紛らわしい形状の葉をしているので目立たず見分けが付けられないだけで、本当は丘陵地の林内のそこかしこに結構な数が生えている普通種。根茎(こんけい)が浅い地中を匍匐(ほふく)して先々で根を張り葉を付けるので、決まって群生する。湘南・鎌倉・三浦半島では丘陵地のハイキングコース沿いで見かけることがある。軽くぬかるむ程度に土が湿っているところに多い。市街地になし。
キチジョウソウの群生 秦野市・葛葉緑地 2019/11/10
キチジョウソウ 逗子市・神武寺 2018/10/25
#キチジョウソウの植え込み 鎌倉市・鶴岡八幡宮(神苑ぼたん庭園) 2020/01/09
葉は、ヤブラン同様に細く長いもの。ヤブランのように一地点でこんもり丸々とは茂らない。ヤブランの葉よりも柔らかめで、表から見ると主脈が一本くっきり窪む。葉裏は、キチジョウソウは目立った葉脈が三本あり、濃い緑と明るい緑色の縞々模様。ヤブランの葉裏は目立った葉脈は一本のみで、濃い緑と”白っぽい”緑色の縞々になる、という違いあり。なおキチジョウソウの若いは明らかに線形ではなく披針形(ひしんけい)になる。
キチジョウソウの葉(中央の2本)とヤブランの葉(両外側) 高麗山公園 2015/11/27
#キチジョウソウとヤブランの葉裏の比較 茅ヶ崎市浜之郷 2019/11/14
#キチジョウソウの披針形をした若い葉 茅ヶ崎市浜之郷 2019/11/16
オオバジャノヒゲ(大葉蛇の髭)の葉もよく似ており見分けは困難。小株が群生するというキチジョウソウの特性からなんとなく目星は付くが、シュンラン(春蘭)やスルガラン(駿河蘭)などの葉も形状は紛らわしい。
キチジョウソウの花
ヤブランに似た雰囲気の花を咲かせるが、キチジョウソウの穂状花序は背高には伸びず、株元で葉に隠れるように咲く。野山のものは葉や落ち葉に埋もれがちなのでうっかりすると咲いていることに気づかない可能性も。花軸はムラサキタマネギ(紫玉葱)色、開いた花は白。群生している大半の株が花を咲かせているという光景はなかなか見ないので、花付きはややよろしくないのかもしれない。
咲き始めのキチジョウソウ 秦野市・葛葉緑地 2019/11/10
#キチジョウソウ 鎌倉市・大巧寺 2017/11/05
キチジョウソウ 逗子市・池子の森自然公園 2017/11/05
キチジョウソウ 秦野市・葛葉緑地 2019/11/10
キチジョウソウ 秦野市・葛葉緑地 2019/11/10
キチジョウソウの実
実ももしゃもしゃ生えた葉の中に埋もれるように付く。ただし実付きはこれまた悪くなかなか見つけられない。実の色はラディッシュの赤からワインレッド。緑色から赤く熟すのではなくはじめから赤いようである。
#キチジョウソウの膨らみが足りない若い実 鎌倉市・鶴岡八幡宮 2020/01/09
キチジョウソウの実 南足柄市三竹・御嶽神社 2018/01/06
キチジョウソウの実 高麗山公園 2015/11/27
キチジョウソウの実 逗子市・池子の森自然公園 2017/11/05
武山ハイキングコース(砲台山~通信研究所南門バス停への分岐に大群生)、森戸川源流、神武寺(裏参道の分岐周辺など)、池子の森自然公園(散策路)、鎌倉市十二所・吉沢川源流(番場ガ谷、群生)、#大巧寺(庫裏玄関前)、#東慶寺、#長谷寺、高麗山公園
長柄桜山古墳群(長柄交差点分岐~第2号墳に大量、踏みつけ多いのか状態は不良)、#大船フラワーセンター(森の小道)
参考資料
『牧野日本植物図鑑』 牧野富太郎著 北隆館発行(1940)