マダニ

真蜱 節足動物/ダニ目/マダニ科 活動時期/4月~10月(~12月中旬)

危険駆除

マダニ(タカサゴキララマダニの若虫) 平塚市・高麗山公園産か 2018/04/05

マダニ(タカサゴキララマダニの若虫) 平塚市・高麗山公園産か 2018/04/05

マダニはマダニ科に分類される生き物の総称で、マダニという名の一種類のダニがいるわけではない。昆虫ではなくクモ(蜘蛛)に近い仲間。私たちが気づいていないだけで(野山はもちろんのこと、都市部の公園なども含めて)身近な草むらなどに普通に生息するという(が、その割にはマダニ被害に遭ったという話は身近ではさっぱり聞かないけれども)。種類によるが体長は3mm~8mm程度。動物や人の皮膚に頭からダイブしたかのごとくぶっすり突き刺さり、血を吸う。丸一日以上吸血し続けるが、痛みはないらしい。吸血後のマダニのお腹はゴム製水枕のようにたぷんたぷんに膨れ上がり、体長は10~30mmに達するものも。日本紅斑熱による死者も出している静岡県の環境衛生科学研究所が平成20年(2008)から平成27年(2015)にかけて調査したところ、静岡県内に生息するマダニは、キチマダニとフタトゲチマダニを中心に、ヤマトマダニ、タカサゴキララマダニ、ヤマアラシチマダニ、タイワンカクマダニなど、十四種あった。

靴下に貼りついて吸血を試みるタカサゴキララマダニ 平塚市・高麗山公園産か 2016/06/01

靴下に貼りついて吸血を試みるタカサゴキララマダニ 平塚市・高麗山公園産か 2016/06/01

靴下に貼りついて吸血を試みるタカサゴキララマダニ 平塚市・高麗山公園産か 2016/06/01

靴下に貼りついて吸血を試みるタカサゴキララマダニ 平塚市・高麗山公園産か 2016/06/01

上(↑)に掲載したマダニについて


私の(水色の)靴下に引っ付いていたものである。何かあることには気づいていたが、雑草の種子かゴミかと気にせず帰宅、よく見れば噂のマダニであった。マダニは靴下に頭から突っ込んで私の足の血を吸おうと試みたらしい。幸いにして靴下の生地の厚みが勝利しマダニに咬まれることはなかった。マダニは巨石を打ち付けて破砕し殺した。

マダニ(タカサゴキララマダニの若虫) 平塚市・高麗山公園産か 2018/04/05

マダニ(タカサゴキララマダニの若虫) 平塚市・高麗山公園産か 2018/04/05

マダニ(タカサゴキララマダニの若虫、体長約3mm) 平塚市・高麗山公園産か 2018/04/05

マダニ(タカサゴキララマダニの若虫、体長約3mm) 平塚市・高麗山公園産か 2018/04/05

上(↑)に掲載したマダニについて


私の ピーーーー に食い付いていたものである。昨日からか一昨日からか、 ピーーーー の裏っ側が小さくチクリと痛むことには気づいていた。おそらくニキビか何か小さいできものができているのだろうと看過。その後風呂上りに恥ずかしい体勢で確認すればできものは(老化が原因でできる)小さなイボだった。しかも薄茶色に膿んでいるようだ。イボは除去することにし、指でつまんで力づくで引き千切れば、「プチっ」と皮膚が破れる小さいながら確かな音を発してイボは取れた。ああ、よかった。とイボを見やれば、それはまさかのマダニであった。私は3月31日午後から4月5日夜までじつに五日間も ピーーーー にマダニをぶら下げていたようである。 ピーーーー もぶら下がっているものであるが。おそらく靴か靴下に取り付いたマダニはズボンの裾(すそ)から私の足をえっちらおっちらよじ登ってきたのだろう。ピーーーー に咬みついたのはたまたまに違いない。その食らいついていたマダニ、知らぬこととはいえ自力で引き抜いてしまった。これで感染症に罹(かか)ってしまった可能性があるため、マダニはプラスチック容器に捕らえて証拠保全。マダニは三日後死亡。今後もし私が何らかの症状を発したならば、スポーツ紙あたりが「関東地方で初!マダニに ピーーーー を咬まれた神奈川県内の男性に感染症の疑い(笑)」と喜んで書き立てそうな珍事件であるが、 ピーーーー はチンではない方であることをここに書き残しておく。


(後記)

じつは、その後一ヶ月以上も ピーーーー の患部は硬く腫れたままとなっていた。単なる傷としてではなく、マダニが残した物質なのか何なのかが残存していたに間違いない。もうだめだ。これはもう病院で患部周辺のしわしわの皮膚と肉を切除してもらうしかないのではないか、と諦めつつも、現実から目を反らして放置するという得意の(しばしば悲劇的な結末を招いている)対処法を採用した。
7月15日 おそるおそる患部を確認してみたところ、マダニに咬まれた痕跡は完全に消え去っていた。ここに我が ピーーーー の勝利を宣言し、金メダルを謹上したい。

近年、日本では平成25年(2013)1月に初めて確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)というウィルス性感染症をマダニが媒介している疑いが強まり社会問題になっている。国立感染症研究所によれば、六日~二週間の潜伏期間を経て発症し、発熱・嘔吐・腹痛・下痢などの症状が出るという。平成27年(2015)10月28日時点で死者は国内累計43名(症例報告数163件=いずれも西日本 ※後述に追記1、生存は120名)、高齢者が発症すると重篤化しやすい傾向が見られている(最も若い死者は50代)。令和3年(2021)7月現在、ワクチンなし、特効薬なし。国立感染症研究所によれば、平成29年(2017)6月28日現在、症例報告数266件、生存209名・死亡57名、致死率は約21%。令和元年(2019)6月26日現在、症例報告数426件・死者62人、致死率約15%(症例報告数は増加、死者数は減少、の傾向)。なお同年に東日本(東京都)で初の発症者が出ているも旅行先の長崎県内でマダニに咬まれた模様。また、ペットとして飼われていたイヌ(犬)とネコ(猫)がSFTSを発症した事例(静岡県内ではイヌ2匹・ネコ5匹の感染が確認されており(※後述に追記2)、そのうちネコ1匹は回復したが他はいずれも死亡した。令和3年(2021)7月2日 テレビ静岡)、野良ネコに咬まれた人がSFTSを発症して死亡した事例があることが報じられた。令和3年(2021)8月3日 国立感染症研究所などの調査で、ペットのイヌ・ネコから人にSFTFがうつった事例は少なくとも12件確認され、うち1件は死亡していたことが判明(同日 共同通信)。

※追記1/令和3年(2021)7月3日 SFTSの感染例が千葉県で確認されたと報じられた。関東地方で初。(同日 共同通信)

※追記2/令和3年(2021)8月3日 SFTSに感染したネコの事例は300件超に上ると報じられた。(同日 共同通信)

なおマダニはSFTSのみならず日本紅斑熱なども媒介する。SFTSは令和元年(2019)7月現在、東日本産のマダニからは症例が報告されていない(※前述に追記)ため、神奈川県内ではじつは日本紅斑熱(全国で毎年200~300人前後の患者数を出している)の方が恐ろしい。静岡県・千葉県・茨城県では日本紅斑熱による死者も出ているので舐めてかかってはいけない。日本紅斑熱は、潜伏期間2~8日を経て、発疹(ほっしん、皮膚に赤いぶつぶつ模様)と38℃を超える(超えないこともある)高熱の症状が出る。人から人への感染なし。

神奈川県周辺で発生した日本紅斑熱による重大事例


令和5年(2023)10月12日、静岡県・熱海保健所管内在住の70代女性が発熱などを発症し入院、翌日死亡。血液検査で日本紅斑熱と判明。自宅の庭で作業していたときに虫に刺されたと話していた。静岡県内では平成12年(2000)以降53人が感染し7人が死亡している。(10月20日 あなたの静岡新聞)


令和2年(2020)8月、千葉県君津市で80代の女性が日本紅斑熱で死亡。右足にマダニに咬まれた痕があった。8月3日に発熱し、6日に医療機関を受診、11日に意識障害を伴うショック状態で救急搬送されて入院、14日に日本紅斑熱と診断され同日死亡した。平成18年(2006)年に国の感染症集計システムが導入されて以来、千葉県内で日本紅斑熱で死者が出たのは初。(8月16日 千葉日報、ヨミドクター(読売新聞))


令和元年(2019)10月、茨城県土浦市の70代の男性が、マダニが媒介する日本紅斑熱で死亡。腹部にマダニに咬まれたと思われる痕があった。12日以降に手足に発疹と高熱が出て、16日受診、17日入院、19日容態悪化、21日多臓器不全で死亡。平成11年(1999)の調査開始以降、茨城県内で日本紅斑熱で死者が出たのは初。(10月24日 茨城新聞、10月25日 産経新聞)

同年7月、静岡県伊豆の国市で70代の女性がマダニが媒介する日本紅斑熱に感染し多臓器不全で死亡。(7月24日 産経新聞)

同年5月、神奈川県湯河原市在住の70代の男性が感染するも死亡には至らなかった模様。静岡県熱海保健所の管轄となっているので熱海市内に所有するらしい畑が現場か。(5月16日 熱海市)


平成29年(2017)6月、静岡県熱海市で80代の女性がマダニが媒介する日本紅斑熱に感染、のち回復した。(7月7日 静岡新聞)

同年9月、静岡県東部で50~80代の男女5人が日本紅斑熱に感染、沼津市の70代と80代の女性が死亡した。過去5年間の静岡県内の患者数は11人で(10月5日現在)、このうち死者は4人。居住地はいずれも県東部だった。(10月7日 静岡新聞)

静岡県の日本紅斑熱


静岡県と神奈川県は箱根の山を介して接しており、残念ながら無関係だと油断はできない。芦ノ湖を向こう側へ下りたすぐのところに、あるいは熱海に、日本紅斑熱媒介マダニが待ち構えているのである。近年は”増えすぎてしまった”シカ(鹿)やイノシシ(猪)が神奈川県内の人里に出没しており、その範囲は湘南・鎌倉・三浦半島にまで及んでいる。これらの獣が、マダニ(やヤマビル(山蛭))を人間の生活圏の中にまで(皮膚に引っ付けて)運んできてしまうのだ。一旦侵入してしまえばあとは野良ネコがマダニを市街地にまで広めてしまうだろう。


令和元年(2019)10月3日静岡県発表 静岡県内における日本紅斑熱の患者数および死者数

令和3年(2021) 患者数1人 ※暫定

令和2年(2020) 患者数8人 ※熱海市5人

令和元年(2019) 患者数10人 ※過去最高、死者1人

平成30年(2018) 患者数3人、死者0人

平成29年(2017) 患者数6人、死者2人

平成28年(2016) 患者数2人、死者1人

平成27年(2015) 患者数2人、死者1人

マダニ対策

※詳細は国立感染症研究所のホームページ等で確認のこと。


予防 -マダニに咬みつかれないために-

草むらに近づくときはできるだけ肌を露出させないこと。長ズボンを着用し、裾は厚手の靴下の中にしまう。虫除けスプレーも併用したい。

昭和61年(1986)バイエル社(ドイツ)が開発し、日本では平成27年(2015)にようやく承認された忌避剤イカリジンがマダニにも効果を発揮するという。平成30年(2018)4月現在、市販されているイカリジンを有効成分とする人体用虫よけ剤は、フマキラー「天使のスキンベープ プレミアム」(イカリジン15% ※化粧品並みに香料が強烈なので注意)、KINCHO「お肌の虫よけ プレシャワーPRO」(同)などがある。
一般的な虫よけ剤の有効成分はディート(現在は30%)。これも使わないよりはましという。


対処 -マダニに咬みつかれてしまったら-

肌に食らいついているマダニを発見しても、自分で潰したり引き剥がしてはいけない。無理に剥がそうとすると、血液の逆流を起こしマダニの体内にあったウィルスが人体の方へ注入されてしまうおそれあり。また千切れた顎(簡単に抜けないように返しが付いている、のみならず、セメント物質を出して顎と人間の皮膚をがっちり固着させてしまう)が皮膚の中に残ってしまい炎症を引き起こすことも。マダニは皮膚に食いつかせたまま病院(皮膚科)へ行き、除去(咬まれた周辺の皮膚ごと切除)してもらうこと。

日本紅斑熱、SFTFに続き、第三の新たな脅威───
令和5年(2023)6月23日厚生労働省発表によれば、昨夏茨城県において心筋炎で死亡した(高血圧症・脂質異常症の基礎疾患ある70代の)女性がオズウイルス感染症に罹っていたことが明らかになった。オズウイルスは平成30年(2018)に日本国内で初めて愛媛県産タカサゴキララマダニから発見されたもので、人の死亡例は本件が初(日本初のみならず世界初)。患者は、倦怠感、食欲低下、嘔吐、関節痛、発熱を発症し、右鼠蹊部(そけいぶ、股関節周り)にはマダニに咬まれた痕があった。

参考資料)国立感染症研究所
初めて診断されたオズウイルス感染症患者
オズウイルス感染症とは
オズウイルス感染症に関するQ&A


高麗山公園(タカサゴキララマダニ(体長約6mm)、ヤブラン平の草むらに多く生息する疑い)

南足柄市三竹・御嶽神社(社叢林に多い)

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『マダニ』へのコメント

  1. 佐々木里香 投稿日:2020/03/17(火) 00:15:18 ID:984191422 返信

    秦野市に住んでいる者です。
    ピー…面白くて笑わせていただきました。
    我が家のマダニ体験ですが…
    2014年に中伊豆に蛍を見に旅行し、浴衣で
    見て戻って温泉に入ると5歳の娘の首筋に見慣れない小さなホクロが。
    爪で触るとマダニでした!
    6時台のニュースの特集等でマダニのことを知っていたのですぐに地元の病院へ。
    しかし、小さな皮膚科でもない病院だった為、先生も知らないのかその場でピンセットで根本から取ってしまいました。(取っていけないことは知っていましたがお任せしてしまいました。娘の首についた気味の悪いヤツを早く取りたい気持ちもあり…)
    帰宅してから皮膚科にいき、顛末を話すと取ってはいけないこと、マダニ本体持って来れば病原菌?の確認ができたこと…など。
    とりあえず様子をみるしかなく生きた心地がしない日々を過ごしましたが、熱も発疹も無理に取った部分も何も症状はなく済みました。不幸中の幸いでした。
    当時も西日本ではマダニの媒介する病気で亡くなっている方も多く伊豆でも怖いと思っていたのですが、平塚秦野市あたりもそろそろまずいのですね。
    最近弘法山から吾妻山など登ることもあるのでマダニやヒルに気をつけて服装や虫除けなど用意したいと改めて思いました。
    早くワクチンなどが出来ると安心ですね…。

    • mirusiru.jp 投稿日:2020/03/19(木) 20:04:14 ID:2713ee490 返信

      佐々木里香さん、こんばんは。

      ホタル狩りに出かけてマダニに噛まれて帰ってきましたか‥、悪い意味で一生の思い出になってしまったとんだ災難でしたね。
      地元の医者は、ヤブだったのかじつはテクニシャンだったのか‥。

      >とりあえず様子をみるしかなく生きた心地がしない日々を過ごしました

      ほんとそうなんですよね!
      100%運任せ、目を背けて日々やり過ごすだけという療法。
      ちょっと体調悪くなる度にマダニが原因かと疑うようになり‥。
      さすがにもう何年も経っているのだから大丈夫だろうとは思いながらも、”でもまだもしかして”なんていう頭が抜け切らなかったりも‥。
      何事もなければ良いのですが。ってもう六年前の話ですから、さすがに大丈夫でしょう!たぶん。

      新型コロナウイルス(COVID-19)って、感染者の生き血を吸ったマダニやらヤマビルやらヤブカがウイルスを媒介するなんてことはないんですかね。こわいこわい。
      ハイキングくらい気軽に行かせてよって感じです。