ニホンヤマビル

日本山蛭 環形動物/顎ヒル目/ヒルド科/ヤマビル属 活動時期/4月~11月

危険駆除

ニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

ニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

一般的には単にヤマビルと呼ばれる、環形動物(かんけい-)というミミズの仲間。アスリート系のゴム製ナメクジ(蛞蝓)のようにも思える。日本国内では唯一の陸生吸血ヒル。人間も含めた動物の皮膚に取り付いて生き血を吸う。やや湿りがちな林床に生息。乾燥が苦手なので、雨後など湿っているときに特に活発に活動する。体長はふつう2~3cmで、縮こまると0.5cm。人為的にびよーんと引っ張ると8cm程度にも伸びる。強靭な筋力が自慢で、引っ張っても千切れない、足で踏みつけても潰れない。とにかく気色悪い。デコピンの要領でぴーんと弾き飛ばすとあら不思議、中指の爪にぴっとりとくっついていたりする。

縮んで丸まっているときのニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

縮んで丸まっているときのニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

ニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

ニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

神奈川県内では丹沢広域に生息しており、被害が甚大。丹沢にはその名も蛭ヶ岳(ひるがたけ、1,673m)なる山があり、じつは神奈川県で最も高い山であるのだが(伊勢原市の大山は1,252m)、そもそもヤマビルはその蛭ヶ岳の東側一帯にいるだけでしかなかった。それが分布域を拡大させ、今では宮ヶ瀬湖や大山はもちろん丹沢方面の山周辺地域であればどこにでもうじゃうじゃいる(と考えて対策して出かけないとたいへんなことになる)有様に。平成(1989-2019)に入ってからは県内のみならず日本各地でヤマビル被害が深刻になっており、シカ(鹿)やイノシシ(猪)の生息数が増えた時期と符合することからシカなどが運び屋となって分布域を広げているのではないかと疑われている。幸いにして湘南・鎌倉・三浦半島ではヤマビルは問題になっていないので今のところはいないものとして安堵して大丈夫ながら、ハイカーや車に付着して移動してきたヤマビルが繁殖してしまう可能性を考えれば、湧水多く湿りがちな土地柄である鎌倉などではいつヤマビルが大量出現したって何ら不思議ではない差し迫った状況にある。今のところ箱根でもいないのか少ないのか問題になっていない。

平成19年(2007)現在の神奈川県におけるヤマビルの生息域 神奈川県「ヤマビル対策共同研究報告書概要版」より

平成19年(2007)現在の神奈川県におけるヤマビルの生息域 神奈川県「ヤマビル対策共同研究報告書概要版」より

ヤマビルは全身を自在に操りちょこまかと元気によく動く。動きはまるでゾウ(象)の鼻のよう。移動するときはシャクトリムシ(尺取虫)のごとく伸び縮みしながら歩く。カ(蚊)と同様に、人や動物の体温や二酸化炭素などを感知すると素早く集まってくるとされ、標的(人間でならばまず靴の上に乗ってくることがほとんど)にぴょんと飛びつきよじ登り、三十分から六十分の間吸血をし続けるそうな。血を吸っているヤマビルを発見したら速やかに引き剥がして(マダニ(真蜱)は絶対に自分で剥がしてはダメ)抹殺すべしの事。ヤマビルに咬(か)み付かれた瞬間はチクっと痛むが、痛みを感じない人も。ヤマビルに吸血されると血が固まらなくなる成分ヒルジンを注入されるため、一時間以上出血が止まらない。それより何より、かゆくなることがあるので厄介だ。草刈りが不十分な山道をハイキングすると、足首周辺に多数のヤマビルが襲ってくるので注意したい。山道をたった五分歩いただけで十匹くらい付着してきたことも。ヤブカ(藪蚊)より多い有様だ。ニ三分歩いたら足元をくまなく探して、ヤマビルがくっ付いていたらばデコピンを何度も何度も繰り返して弾き飛ばすか、それでも剥がれてくれないときはもう指で摘まんで投げ捨てるしかない。五分で三匹襲ってくる、くらいの認識で警戒していないといけないのでいちいち殺している暇はない。立ち止まっていれば標的にもなりやすい。吸盤でがっちりと張り付いてくるので、木の枝なんかでつついたところで剥がれはしない。ピンセットでつまんでもピンセットの付着してしまうので、もう指で摘まんで弾き捨てろ。

足元に付着してきたニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/14

足元に付着してきたニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/14

元気に靴下を登ってくるニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

元気に靴下を登ってくるニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

ボールペンで取り除こうとしたらボールペンに付着してしまったニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

ボールペンで取り除こうとしたらボールペンに付着してしまったニホンヤマビル 秦野市・蓑毛自然観察の森 2016/06/16

エコバッグにも登ってきたニホンヤマビル 松田町・最明寺史跡公園 2019/10/23

エコバッグにも登ってきたニホンヤマビル 松田町・最明寺史跡公園 2019/10/23

伸び縮みしながら歩行するニホンヤマビル 松田町・最明寺史跡公園 2019/10/23

伸び縮みしながら歩行するニホンヤマビル 松田町・最明寺史跡公園 2019/10/23

頭を持ち上げて獲物を探すニホンヤマビル 松田町・最明寺史跡公園 2019/10/23

頭を持ち上げて獲物を探すニホンヤマビル 松田町・最明寺史跡公園 2019/10/23

ヤマビル駆除のために山道沿いの強力な草刈りが実施されており一定の効果を上げているが、稀少な山野草を減少させてしまう心配も。シカ柵の設置、薬剤散布、バーナーでの焼き殺し、落ち葉かき等も行われているという。

ヤマビル対策


予防 -ヤマビルに吸い付かれないために-

梅雨の時期、雨の後など、ヤマビルが生息する地域の山道に入らないのが一番。

山道に入るときは服装に注意。靴(ゴム長靴推奨)、靴下、ズボン(ヤマビルが侵入できないように裾は靴下の中に押し込む)その他、よじ登ってきたヒルが皮膚に付着できないよう隙間を塞ぐ。ただし現実的には、シャツのボタンの間や、袖口、首周りなどからも侵入してくるため完全防御は難しい。ヒルが付いてないかこまめに足を確認する。なお頭部を細く変形させて靴下の編み目に突撃してくるので注意。普通の靴下一枚では突破されて咬み付かれる可能性が高い。

ヤマビル忌避剤(ヤマビル除けスプレー、なければ蚊除けのものでもよい)を靴などに塗布する。皮膚にではなく、足をよじ登って来ないよう靴や靴下に塗るのがポイント。消毒用エタノール(スプレーボトルに入れて持参するとよい、持っていればウェットティシューも活用できる)、塩水なども苦手なので、靴や靴下などにスプレー散布しておく。

吸い付いてきたヤマビル殺すための塩を持参する。


対処 -ヤマビルに血を吸われてしまったら-

1)引き剥がす。ただし吸盤で張り付いているため振りほどくことは困難。うにょうにょ動く気色悪いヤマビルを指でつまむのは慣れるまでは度胸がいるが、やるしかない。ナメクジ退治の要領で塩を直接振りかけるのがよい。

2)傷口から血(に混じっているヒルジン)をできるだけ出し、傷口に清潔な絆創膏などを当てて上から強めに圧迫する(直接圧迫止血法、注射後の止血方法に同じ)。

3)絆創膏はこまめに替える。かゆみは抗ヒスタミン剤(ウナコーワなど)で抑える。アンモニアを含むもの(キンカンなど)はかえって症状を悪化させるとか。

マダニと異なり、感染症はいまのところ報告されていない。

他に代表的なヒルとして、水生で血を吸うチスイビル(血吸蛭、緑色を帯びる)が田んぼの水中にいる。陸生で血を吸わないコウガイビル(笄蛭、紐のように長く頭がTの字、黄土色など)は扁形動物(へんけい-)の一種でサナダムシ(真田虫)などの仲間。


厚木市・県立自然環境保全センター自然観察園、秦野市・蓑毛自然観察の森、松田町・最明寺史跡公園

参考資料

「ヤマビル対策共同研究報告書 概要版」 神奈川県政策部総合政策課科学技術・大学連携室編集・発行(2009)

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