花菖蒲 クサスギカズラ目/アヤメ科/アヤメ属 花期/5月末~6月中旬
学名/Iris ensata Thunb. var. ensata
改良種
#ハナショウブ 小田原市・郷土文化館分館松永記念館 2018/05/26
園芸栽培される多年草。日本自生の野生種ノハナショウブ(野花菖蒲)から作出された園芸品種を総称してハナショウブと呼ぶ。一般的には単にショウブといった場合もショウブ科(旧サイトモ科)のショウブ(菖蒲)ではなくこのハナショウブを指すことがほとんど。姿がアヤメ(文目、菖蒲)やカキツバタ(杜若)によく似ていることが知られているが、花弁(外花被片)基部の蜜標(みつひょう)が虎柄を思わせる綾目(あやめ)模様ならばアヤメ、白色の細い条(すじ)が入っているだけならカキツバタ、黄色い条ならハナショウブ、と花さえ咲いていればじつは簡単に見分けることができる。花期も三者でずれがある。また栽培環境も異なり、アヤメは乾燥地に、ハナショウブはやや湿った草地に、カキツバタはべちゃべちゃに湿った場所か浅い水に浸(つ)かった状態で見かけるのが普通。但し、東慶寺のようにハナショウブが完全な乾燥地に植えられしっかり耐えて花を咲かせていることもある。アジサイ(紫陽花)に先立って見頃を迎え、梅雨入りを彩る花として集客に利用されている。神奈川県内で庭園や田んぼ跡で大規模に栽培されて観光名所のようになっているのは、アヤメやカキツバタではなくいずれもハナショウブである。栽培比率は”アヤメ0.2:カキツバタ0.1:ハナショウブ9.7″といったところか。
#しょうぶ苑 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#しょうぶ苑 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#しょうぶ苑 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#しょうぶ苑 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#しょうぶ苑 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#菖蒲畑 鎌倉市・東慶寺 2019/06/06
#菖蒲畑 鎌倉市・東慶寺 2019/06/06
#菖蒲畑 鎌倉市・東慶寺 2019/06/06
#ハナショウブ園 鎌倉市・大船フラワーセンター 2017/06/09
#ハナショウブ園 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/06/13
#湿生花園 鎌倉中央公園 2018/06/02
#ハナショウブ 藤沢市・遊行寺 2019/05/24
#湿性植物区 藤沢市・新林公園 2017/06/12
#ハナショウブ 茅ヶ崎市・氷室椿庭園 2019/06/20
#ハナショウブ 藤沢市・遠藤笹窪谷公園 2023/06/08
#ショウブ田 大和市・泉の森 2019/06/11
#あつぎ飯山あやめの里 厚木市 2017/06/10
#しょうぶの里 愛川町中津 2017/06/10
#伊勢原あやめの里、背景は大山 伊勢原市下糟 2017/06/10
#ハナショウブ 小田原市・郷土文化館分館松永記念館 2018/05/26
#花菖蒲園 小田原城址公園 2017/06/11
#花菖蒲園 小田原城址公園 2017/06/11
#烏山用水 相模原市中央区水郷田名(すいごうたな) 2017/06/10
#水無月園 相模原市南区・相模原公園 2017/06/10
#菖蒲園 秦野市・浄徳院 2017/06/11
ハナショウブの花
花色は基本的には紫、それに白。アヤメやカキツバタに比べ、色彩は各段に豊かで多様な品種あり。黄色はなかった。そこに入ってきたのが外国産のキショウブ(黄菖蒲)で、キショウブはハナショウブに含めず独立させてキショウブと呼び分ける。ただしキショウブとハナショウブを掛け合わせた雑種も出回ってきており、それらは黄色花ながらハナショウブという扱いになる。キショウブの方がハナショウブよりも花期は早め。※本サイトでは種間交配種の黄色花はキショウブとしてキショウブの頁に掲載する。
#ハナショウブと#キショウブ(’金冠’) 茅ヶ崎市・氷室椿庭園 2019/06/05
#ハナショウブ(大船系’心の色’) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2017/06/09
#ハナショウブ(江戸系’紅公子’) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2017/06/09
#ハナショウブ(肥後系’皇玉’) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2017/06/09
#ハナショウブ(長井系’長井薄紅’) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2017/06/09
#ハナショウブ(江戸系’水玉星’) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2017/06/09
#ハナショウブ(江戸系’泉川’) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2017/06/09
#ハナショウブ(大船系’丹頂’) 茅ヶ崎市・氷室椿庭園 2019/06/20
#ハナショウブ 鎌倉市・東慶寺 2019/06/06
#ハナショウブ(江戸系’町娘’) 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#ハナショウブ(江戸系’桃児童’) 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#ハナショウブ(肥後系’麗月’) 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#ハナショウブ(長井系’長井清流’) 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
#ハナショウブ 藤沢市・新林公園 2017/06/12
#ハナショウブ 厚木市・飯山あやめの里 2017/06/10
アヤメやカキツバタとの明確な違いは、花弁(外花被片、アヤメの仲間は外花蓋(がいかがい)という)基部に単純な黄色い条が入ること。ハナショウブの花の最盛期にアヤメやカキツバタの花を見かけることはふつうはない(とっくに咲き終わっている)ので、見分けられるか神経質になる必要はじつはまったくなかったりする。アジサイの直前に満開しているものはハナショウブ。本頁掲載の(遠景のものも含めて)写真には一輪たりともアヤメやカキツバタの花は写り込んでいないはずである。
#ハナショウブの花の特徴と構造 小田原市・郷土文化館分館松永記念館 2018/05/26
花の形状は二種類あり。ぱっと見で花弁が三枚に見えるふつうの形状は三英花(さんえいか)という。ぱっと見で花弁が六枚に見えるものは六英花(ろくえいか)と呼ばれる。本来は小さく直立するものだった内花被片(内花蓋)が大きくなって、外花被片と大差ない姿に変わったもの。
三英花の#ハナショウブ 藤沢市・新林公園 2017/06/12
六英花の#ハナショウブ 藤沢市・新林公園 2017/06/12
ハナショウブの系統
ハナショウブの園芸品種は数千種を超えるとされ数限りない。そのうちの有名どころが伊勢系・肥後系・江戸系と呼ばれる三系統。素人目に見分けがつくものではないが、そういう流れがあるのだということだけでもわかっておけば、江戸時代から伝統的に愛されてきたハナショウブの栽培史も楽しめるのではないかと思う。
江戸系
江戸時代後期のハナショウブマニア、旗本松平左金吾定朝(号して菖翁(しょうおう))が作出したものに始まる系統。
基本的に花弁がよく横へ広がる平咲き。花色・形状などは様々、何でもあり。四阿(あずまや)のある菖蒲田(しょうぶた)に群生させて斜め上から眺め見て楽しむ。菖翁は特に’宇宙(おおぞら/うちゅう)’という品種が好きだったとか。
#ハナショウブ(江戸系・江戸古種’五湖の遊’) 横浜市南区・こども植物園 2017/07/01
肥後系
江戸系のハナショウブが現在の熊本県へ渡って発展したもの。満月会のみが育種し門外不出。これを横浜へ移り住んだ元会員が流出させたのをきっかけに世に知られるものとなったという。
大輪咲き。外花蓋(がいかがい)のみならず内花蓋(ないかがい)も豊かに大きく発達した花弁六枚に見える六英花(ろくえいか)が特に優れる。鉢植えにして座敷内で金屏風を背に立て横から見て観賞するもの。
#ハナショウブ(六英花の肥後系’七彩の夢’) 横須賀しょうぶ園 2017/06/16
伊勢系
江戸時代末期、紀州藩(現在の三重県松阪市(まつさか-)、松阪牛(まつさかうし、”まつざかうし”は誤読)で有名)の藩士吉井定五郎が作出したもの始まる系統。地元では松阪花菖蒲(まつさかはなしょうぶ)とも。三重県指定天然記念物「いせしょうぶ」。三重県の花「ハナショウブ」選定。
外花蓋三枚が大きく目立つ三英花(さんえいか)で、縮緬(ちりめん)状にしおれ、よく垂れるのが特徴。しおれてよれよれくたくた、なのではなくそれが伊勢系の美しさ。本来は鉢植えにして座敷内で横から見て観賞するもの。従って、露地栽培すると風に煽られ、結局のところしわしわよれよれくたくたになりやすい。雌蕊先端の蕊片(ずいへん)は、細かい切れ込みが入る蜘蛛手(くもで)と呼ばれる形状になる。
長井系
昭和37年(1962)山形県長井市・長井あやめ公園で”新発見”された、原種ノハナショウブ(野花菖蒲)に近い長井古種(三十四種)とそれを基にした系統。長井古種のうち十三種が井市指定天然記念物「アヤメ長井古種」となっている。※本項にいうアヤメはいずれもハナショウブのこと。
花は小さめの三英花で、花弁先端が尖る剣弁、といったノハナショウブの面影を残す。
#ハナショウブ(長井系・長井古種’長井小紫’) 横浜市南区・こども植物園 2017/07/01
#ハナショウブ(長井系・長井古種’小桜姫’) 横浜市南区・こども植物園 2017/07/01
#ハナショウブ(長井系・長井古種’野川の辺’) 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12
#ハナショウブ(長井系・長井古種’卯の花姫’) 横浜市南区・こども植物園 2017/07/01
大船系
大正時代に輸出産品とすべく、神奈川県立農事試験場(現在跡地に大船フラワーセンターあり)で江戸系を基に作出された品種群。大東亜戦争(1937-1945)で多くの品種が失われたようだが、その名残が大船フラワーセンターで今なお栽培されており見ることができる。空襲は受けていないはずなので、食料となるイネ(稲)やサツマイモ(薩摩芋)への作付け転換でも迫られたか。
花期がやや遅めで、ハナショウブ最盛期より半歩遅れる。
#ハナショウブ(江戸系’座間の森’) 座間谷戸山公園 2017/06/17
#ハナショウブ(江戸系’座間の森’) 座間谷戸山公園 2017/06/17
新しい蕾(つぼみ)を次々と威勢よく咲かせてゆくには花殻摘み(はながらつみ)が必須。傷み始めた花をどんどん摘み取ってしまうことで株の養分を新しい蕾へと集中させるため、の手間である。花殻摘みを行わずに植えっぱなしにしておけば、花数が少ない上、しぼんで汚くなった花の残骸ばっかりがいつまでも残ってしまって美観をすこぶる損なってしまうだろう。
花殻ばっかりが目立って見苦しい#ショウブ園 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/06/13
ハナショウブの見頃はおよそ六月十日頃、菖蒲田(しょうぶた)がほぼ満開に。一つの花がきれいに咲いているのはせいぜい二三日の間だけなので、どれだけ見事に咲き誇っているかはその年の情勢次第、見に行ったタイミング次第で当たり外れあり。花殻摘みされないところではそれより早め、ピークを迎える前に。地球温暖化に伴い開花時期が早まっているため、早いところでは五月下旬から開花状況の確認を。日当たりある方が花色に温かみと輝きが加わり風景として映える。梅雨の曇天日は風景としてはなんとも冴えないが、紫色に深み出るため個々の花を間近で見る(撮る)に向く。気温が上がり過ぎると花弁がくったりしてしまうため、花見は朝のうちが良い。風弱め(風速3m/s以下)の日に。
満開の#菖蒲畑 鎌倉市・東慶寺 2019/06/06
#水無月園 相模原市南区・相模原公園 2017/06/10
東京都葛飾区・#堀切菖蒲園(6月8日頃、200種6,000株・宇宙あり、江戸時代に盛んだった江戸系花菖蒲園の名残り、歌川広重『名所江戸百景』に「堀切の花菖蒲」として描かれる、荒川河川敷にある堀切水辺公園の花菖蒲田も併せて=東京スカイツリーを背景に)、川崎市多摩区・#生田緑地(東口入ってすぐのしょうぶ園、かながわの花の名所100選「生田緑地(ハナショウブ)」)、#三溪園(750株 ※6月上旬 -21:00 夜間開園・三重塔ライトアップ「蛍の夕べ」と併せて)、横浜市緑区・#四季の森公園(しょうぶ田、日照やや不良のためか花数多からず、かながわの花の名所100選「四季の森公園(ハナショウブ)」)
横須賀市・#しょうぶ園(通称横須賀しょうぶ園、412品種14万株、4~6月は入園有料(320円)・駐車場有料(320円/h+150円/30分)、開花期の6月中は「花しょうぶまつり」として花殻摘みを毎日実施・日曜日に演奏会、6月上旬に「衣笠しょうぶ祭」として民謡流し踊りなどの出し物開催=当日のみ入園無料・駐車有料、かながわの花の名所100選「横須賀市立しょうぶ園(ハナショウブ)」、ミズキンバイと併せて)、#明月院(本堂後庭園、入山料500円+本堂後庭園別途500円)、#東慶寺(乾燥した菖蒲畑に、開花時期に白蓮舎(写経会場)茶店、令和4年(2022)6月7日以降境内撮影禁止)、#フラワーセンター大船植物園(ハナショウブ園に大船系、柵があるので間近では観察できない、花期中盤以降は一切摘み取られない花殻が目立ち汚い)、二宮町・#せせらぎ公園(やや離れた木道からのみで間近では見れない、品種名なし、平成27年(2015)から花殻摘み実施=期間・時間限定、かながわの花の名所100選「二宮せせらぎ公園(ハナショウブ)」、ノハナショウブなし、夜はゲンジボタルも)
三浦市南下浦町菊名(みなみしたうらまち-)868・#隠れ花菖蒲園(石井農園、入園無料・駐車場無料)、#光触寺、#葛原岡神社(池に鉢植え)、#鎌倉中央公園(湿生花園)、#遊行寺(放生池、中庭に100株=6月の開花中のみ一般公開 08:00-16:00 無料)、#新林公園、#遠藤笹窪谷公園(えんどうささくぼやと-、令和4年(2022)7月開園、やや離れた通路からのみで間近では見れない)、#氷室椿庭園
#相模原公園(水無月園(花しょうぶ園)、管理・花数随一、強風時は土煙が猛烈、かながわの花の名所100選「県立相模原公園及び市立相模原麻溝公園(ハナショウブ・クレマチス)」)、#小田原城址公園(東堀跡菖蒲園、赤い常盤橋を背景に、平成29年(2017)からポット植えを並べて展示、数は多い)
大和市・#泉の森(花数少ない、かながわの花の名所100選「大和・泉の森(ハナショウブ)」)、座間市・#座間谷戸山公園(里山体験館前水田に極小規模、6月初旬 希少品種’座間の森’)、座間市・#立野台公園(たつのだい-、菖蒲の里、極小規模、禁止看板多く興を削ぐ、6月初旬 希少品種’座間の森’、かながわの花の名所100選「立野台公園(ハナショウブ)」)、綾瀬市・#蟹ヶ谷公園(かにがや-、敷地は広くて立派だが株自体がないまたはあっても極めて貧相=花はほとんどない)、愛川町・#しょうぶの里(「下谷」(したや)バス停周辺の道路沿い水路、極小規模、かながわのまちなみ100選「愛川・八菅橋周辺」の一部、6月中旬 古民家山十邸(やまじゅう-)コスプレイベント(コスプレ撮影会)に注意)、厚木市飯山・#飯山あやめの里(小鮎川久保橋南側の休耕田・厚木市消防団第5分団第2部隣、花殻摘み行われず、かながわの花の名所100選「厚木飯山あやめの里(ハナショウブ)」)、相模原市中央区水郷田名・#烏山用水(極小規模)、相模原市・#青根緑の休暇村(公称50種8,000株、平成29年(2017)滅失、かながわの花の名所100選「青根緑の休暇村(ハナショウブ)」)、伊勢原市小稲葉・#伊勢原あやめの里(歌川公園の歌川を挟んだ南向かい、平成27年(2015)市が財政支援打ち切りを決定、平成29年(2017)を最後に廃止、かながわの花の名所100選「伊勢原」あやめの里(ハナショウブ))、秦野市・#浄徳院菖蒲園(公称約130種15,000株、平成29年(2017)荒廃=足元泥だらけになりながら最奥まで入れば二三株の開花あり・他はドクダミと咲き終わりのキショウブのみ、令和5年(2023)荒廃したまま=花なし・ヤマビル多い立ち入るべからず、かながわの花の名所100選「浄徳院菖蒲園(ハナショウブ)」)