烏山椒 ムクロジ目/ミカン科/サンショウ属 展葉/3月末~4月初旬 花期/7月~8月中旬 結実期/9月中旬~12月
学名/Zanthoxylum ailanthoides Siebold & Zucc. var. ailanthoides
危険自生種
カラスザンショウの雄花 大井町赤田/柳橋 2023/07/27
林内を中心に結構どこにでも生えている落葉高木。名は、サンショウ(山椒)と違って人が食用とするのには適さず、カラスが集まって種子を食らっているもの、の意。アカメガシワ(赤芽柏)ほど露骨ではないにせよ、山野を切り開くと先駆けて生え出てくる先駆植物(パイオニア植物)として知られる。野山のハイキングコースを歩くと幼木をよく見かける。逆に、樹高10mを優に超す結構な高木も。観察に向く適度な大きな株は不思議とぜんぜん見当たらない。里山の農地周辺に生えていることもあるので、一般の人にもまあまあ身近な樹木である。普通種。
畑に植えられた#カラスザンショウの若木(中央、周囲はタラノキ) 大井町山田 2021/05/29
日当たり不良でややひょろひょろなカラスザンショウ 大磯町・高麗山公園 2021/06/18
カラスザンショウ 横須賀市・観音崎公園 2022/06/13
カラスザンンショウ 茅ヶ崎市堤・市民の森付近 2022/06/30
開花中のカラスザンショウ 小田原市早川 2023/07/24
下から見上げた開花中のカラスザンショウ 小田原市早川 2023/07/19
開花中のカラスザンショウ 小田原市早川 2023/07/24
開花中のカラスザンショウ 小田原市早川 2023/07/24
実が熟してきたカラスザンショウ 鎌倉市大船・常楽寺付近 2021/10/08
実がなったカラスザンショウ 小田原市早川 2023/11/21
実がなったカラスザンショウ 小田原市早川 2023/11/21
葉は互生。但し枝先に集中して付くのでごちゃついていてよくは見えない。大型な、奇数羽状複葉。小葉の数がやたら多いのが特徴。葉身の縁(ふち)は、細かな鋸歯が多く、波打つ。葉の見た目に癖が強いので他種と混同することはあるまい。同属のサンショウやイヌザンショウ(犬山椒)に比べれば明らかに巨大な葉である。オニグルミ(鬼胡桃)は小葉がだいぶ幅広。ヌルデ(白膠木)は葉軸に翼(よく)がある。ニワナナカマド(庭七竈)は鋸歯が大きい。ハゼノキ(櫨の木)、ヤマハゼ(山櫨)は、小葉が鋸歯ない全縁(ぜんえん)。ニワウルシ(庭漆、シンジュ(神樹))は同じく全縁で、小葉の基部に鋸歯まがいの突起がある。ムクロジ(無患子)は偶数羽状複葉。
カラスザンショウの幼木の葉 横浜市金沢区・釜利谷市民の森 2020/11/30
下から見上げたカラスザンショウの葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2023/05/27
カラスザンショウの葉 真鶴町・番場浦駐車場 2022/06/17
カラスザンショウの小葉 真鶴町・番場浦駐車場 2022/06/17
カラスザンショウの葉裏 真鶴町・番場浦駐車場 2022/06/17
カラスザンショウの葉 小田原市早川 2023/07/19
カラスザンショウの葉 小田原市早川 2023/07/06
カラスザンショウにしては葉が小さい、イヌザンショウにしては大きすぎる、と感じたら、中間型で両者の雑種と推定されているコカラスザンショウ(小烏山椒)である疑い。
幼木や若い枝に特に、不規則に生える棘(とげ)が多い。成長と共に棘は退化し、古株の幹では小さな瘤(こぶ)状に変わり、ときにその瘤さえ見当たらなくなることも。
カラスザンショウの枝にある棘 小田原市早川 2023/07/19
カラスザンショウの幹にある瘤状になった棘 小田原市早川 2023/07/19
カラスザンショウの幹にある瘤状になってきた棘 大磯町・高麗山公園 2021/06/18
カラスザンショウの幹にある瘤状になった棘 藤沢市・新林公園 2022/07/11
カラスザンショウの幹にある瘤状になった棘 鎌倉市大船・常楽寺付近 2021/10/08
カラスザンショウの芽
春、一本直立した若木の幹から生え出た芽がタラノキ(楤木)の芽(山菜の「タラの芽」)と誤認されて採取されることがある。食べても死にはしないだろうが、美味しくはなかろう。両者は葉痕(ようこん)で見分けられる。
カラスザンショウの展葉直前の冬芽 鎌倉市大船・常楽寺付近 2023/03/15
カラスザンショウの(食用にするにはもう手遅れな)展葉 平塚市・湘南平 2018/03/31
カラスザンショウの葉痕 小田原市早川 2023/11/21
カラスザンショウの花
大きな円錐花序を頂生(ちょうせい)する。高い木の上の方の枝先で上を向いて花を付けているため、花を間近で観察できる機会は(平地では特に)まずない。丘陵地や山地に出向けば、断崖下から生え出ている木を沿道で見かけることがあるだろう。図鑑等では雌雄異株(しゆういしゅ)が定説。
カラスザンショウの蕾 真鶴町・番場浦駐車場 2022/06/17
カラスザンショウの開花直前の雄花 小田原市早川 2023/07/19
カラスザンショウの開花直前の雄花 小田原市早川 2023/07/19
カラスザンショウの雄花 小田原市早川 2023/07/24
カラスザンショウの雄花 小田原市早川 2023/07/24
カラスザンショウの雄花 小田原市早川 2023/07/24
雌雄異株とされているが、雌雄同株の雌雄異花で雄性先熟のものがある。長々と雄花を咲かせていたので雄株なのだろうと思っていたらば、(雌株は既に膨らんだ青い実をわんさか蓄えている)花期終盤になって(雄花を付けていた同じ花序に)雌花を咲かせた株があった。またその株では花期終盤に新たに生え出たと思しき(最初から雌花だけ付く)雌花序も咲かせていた。樹木は雄だ雌だとはっきり分かれてくれないややこしいのがままあるが、本種はその一つと思われる。イヌザンショウにも同様の性質が見られる。
雌雄同株カラスザンショウの雄花の蕾 小田原市早川 2023/07/06
雌雄同株カラスザンショウの雄花の蕾 小田原市早川 2023/07/06
雌雄同株カラスザンショウの雄花 小田原市早川 2023/07/24
雌雄同株カラスザンショウの雄花が終わった後に咲いた雌花 小田原市早川 2023/08/01
雌雄同株カラスザンショウの雄花が終わった後に咲いた雌花 小田原市早川 2023/08/01
雌雄同株カラスザンショウの雄花が終わった後に咲いた雌花 小田原市早川 2023/08/01
雌雄同株カラスザンショウの雌花(茶色は咲き終わった雄花の残骸) 小田原市早川 2023/08/01
雌雄同株カラスザンショウの雌花序 小田原市早川 2023/08/11
雌雄同株カラスザンショウの雌花序 小田原市早川 2023/08/11
カラスザンショウの実
雌株カラスザンショウの若い実 小田原市早川 2023/08/01
雌株カラスザンショウの若い実 小田原市早川 2023/08/01
雌雄同株カラスザンショウの若い実 小田原市早川 2023/08/11
カラスザンショウの未熟な実 横須賀市・鷹取第一配水池 2019/09/17
カラスザンショウの熟す直前の実 横浜市栄区・旧栄プール 2022/10/01
カラスザンショウの熟し始めた実 横須賀市・鷹取第一配水池 2018/10/30
日当たり良いところの実は強く赤く染まる。
カラスザンショウのほぼ熟した実 小田原市早川 2023/11/21
カラスザンショウのほぼ熟した実 小田原市早川 2023/11/21
カラスザンショウの実生の幼株 横須賀市・観音崎公園 2024/06/14
カラスザンショウの実生 大磯町・高麗山公園 2023/10/14
横浜市栄区・栄プール(ハイキングコースへの階段途中)
横須賀市・鷹取第一配水池、赤羽根十三図(南西側農地際)
藤沢市・新林公園(冒険広場西側、自然散策路休憩広場の鉄塔側に高木)
小田原市早川・姫ノ水橋(以西の道路北側に多い)、真鶴町・番場浦駐車場(番場浦海岸へ下りる階段近く、令和5年(2023)低所の枝は伐られた)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
『牧野 日本植物図鑑』 牧野富太郎著 北隆館発行(1940)