犬山椒 ムクロジ目/ミカン科/サンショウ属 花期/7月下旬~8月中旬 結実期/9月~10月
学名/Zanthoxylum schinifolium Siebold & Zucc. var. schinifolium
危険自生種稀少
イヌザンショウの葉 箱根町仙石原 2023/08/11
林内または林縁に生える落葉低木。大きく育つと樹高3mくらいにはなる。サンショウの近似種でぱっと見はよく似ているのだが、芳香に青臭さがあるため香辛料としては役に立たないという意味で(ネズミ(鼠)を捕ってくれるネコ(猫)に対して役に立たない)イヌが冠される。一般には「香りがしない」と言われるがそうではなく、葉を揉めばミカン科特有の柑橘系の香りはあるも、料理の風味付けに用いるにはサンショウに劣るのでこんなものをわざわざ使用する理由がないということ。神奈川県内およそ全域に自生あるも、湘南・鎌倉・三浦半島では滅多に見かけるものではなかろう。丹沢や箱根といった山地へ行けばどうということはない普通種。
イヌザンショウ(白色矢印) 箱根町仙石原・「南温泉荘」バス停 2023/08/01
イヌザンショウ 箱根町仙石原 2023/08/11
若い実を付けたイヌザンショウの雌株 箱根町仙石原・「南温泉荘」バス停 2023/08/01
若い実を付けたイヌザンショウの雌株 箱根町仙石原 2023/08/04
葉は互生で、奇数羽状複葉。とされているが、頂小葉が一対ある偶数羽状複葉の葉も。
イヌザンショウの葉 神奈川県自然環境保全センター箱根出張所 2017/09/09
イヌザンショウの葉 箱根町仙石原 2023/08/11
イヌザンショウの葉 小田原市早川 2023/07/24
イヌザンショウの偶数羽状複葉 箱根町仙石原・「南温泉荘」バス停 2023/08/01
枝(や葉軸(ようじく)裏側)に鋭利な棘(とげ)があるので注意。サンショウとイヌザンショウは見慣れれば小葉の違いにも気づけるだろうが、基本的には枝にある棘の付き方で見分ける。サンショウの棘は対生、イヌザンショウの棘は(不規則に)互生する。枝を眺めて二個一対となっている棘が見つけられなければイヌザンショウである。
イヌザンショウの棘 箱根町仙石原 2023/08/11
イヌザンショウの棘 箱根町仙石原 2023/08/11
カラスザンショウ(烏山椒)とイヌザンショウの中間型と思しきコカラスザンショウ(小烏山椒)なるものもあり。両者は同属で開花時期が重複するためその雑種なのではないかと推定されている。カラスザンショウにしては葉が小さい、イヌザンショウにしては大きすぎる、そんなものがあったらコカラスザンショウである疑い。
イヌザンショウの花
枝先に円錐花序を作る。開花時期は梅雨明けから真夏の序盤の頃。図鑑等では雌雄異株(しゆういしゅ)が定説。花には小さなアリ(蟻)やアブ(虻)がひっきりなしに訪れている。
雄株イヌザンショウの咲き終わり近く 箱根町仙石原 2023/08/11
雌雄異株とされているが、不正確ではないか。花期序盤に雌花のみを付ける雌株(早々とたわわに実を付ける)、花期の間だらだらと雄花を咲かせ続ける雄株、雄花が咲き終わったあとで雌花を付ける雌雄同株の雌雄異花で雄性先熟(まばらな実を付ける)、があるのではないかと疑っている。というのも、他の雌株は既にある程度膨らんだ青い実をわんさか蓄えている花期終盤になってようやく雌花が咲き始める木があり、その小花はちょっと数が少ないのではないか、その前にじつは雄花が咲いていてそれが落ちた後に雌花を咲かせているのではないか、と疑われるものがある。または、雄花を散々咲かせていた雄株であったはずなのに秋に見たらまばらに実が付いている、という木がある。樹木の性別は単純に割り切れないものがままあるが、イヌザンショウはその一例に当てはまる。なおカラスザンショウにも同様の疑いがある。
雌雄同株イヌザンショウの雄花(粒は蕾) 小田原市早川 2023/08/01
雌雄同株イヌザンショウの雄花(粒は蕾) 小田原市早川 2023/08/01
雌雄同株イヌザンショウのぱらぱら咲き続ける雄花 小田原市早川 2023/08/01
雌雄同株イヌザンショウの雄花のそろそろ咲き終わり(のち雌花が咲くはず) 小田原市早川 2023/08/11
雌雄同株の疑いあるイヌザンショウの花期が遅い雌花 箱根町仙石原 2023/08/11
雌雄同株の疑いあるイヌザンショウの花期が遅い雌花 箱根町仙石原 2023/08/11
雌雄同株の疑いあるイヌザンショウの花期が遅い雌花 箱根町仙石原 2023/08/11
雌雄同株の疑いあるイヌザンショウの花期が遅い雌花 箱根町仙石原 2023/08/11
雌雄同株の疑いあるイヌザンショウの花期が遅い雌花 箱根町仙石原 2023/08/11
雌雄同株の疑いあるイヌザンショウの花期が遅い雌花 箱根町仙石原 2023/08/11
イヌザンショウの実
サンショウと似たような実がなり、熟すと黒色の種子を露出させる。
雌株イヌザンショウの若い実 箱根町仙石原 2023/08/11
雌株イヌザンショウの若い実 箱根町仙石原・「南温泉荘」バス停 2023/08/01
雌株イヌザンショウの完熟した実 箱根町・湖尻 2017/09/25
雌株イヌザンショウの完熟した実 箱根町・湖尻 2017/09/25
雌株イヌザンショウの完熟した実 箱根町・湖尻 2017/10/27
雌株イヌザンショウの完熟した実 箱根町・湖尻 2017/10/27
雌雄同株イヌザンショウの完熟した実 小田原市早川 2018/11/02
雌雄同株イヌザンショウの完熟した実 小田原市早川 2018/12/01
鳥に人気がないようで、種子の売れ行きは芳しからず長く残る。
雌雄同株イヌザンショウの完熟した実 小田原市早川 2022/12/26
東京都小平市・#東京都薬用植物園
新林公園
小田原市早川(石垣山一夜城歴史公園東方すぐ車道沿い北側に雌雄同株)、箱根町・仙石原湿原(六郎兵衛おばな西向いに雌雄同株疑い、ローソン箱根仙石高原店東側に雌株・雄株・雌株)、箱根町・温泉荘・県道75号ホテル花月園側「南温泉荘」バス停(湖尻集団施設地区碑裏に雌株、実=9月中旬~10月初旬)、神奈川県自然環境保全センター箱根出張所(駐車場出入口に若い雄株)、箱根町・湖尻園地・大涌谷湖尻自然探勝歩道(50周年記念広場近くに雌株、実=9月下旬~10月上旬)