駒繋 マメ目/マメ科/コマツナギ属 花期/6月下旬~9月 結実期/11月
学名/Indigofera pseudotinctoria Matsum.
自生種稀少保護
コマツナギ 三浦市・城ヶ島 2023/07/07
日当たりの良い野山や林縁、道端や河川の土手など、市街地でなければおよそどこにでも生え得るはずの小低木。茎はかなり細くて一直線にぴーんと伸びる。分枝(ぶんし)はよくする。小型で細いのでこれが樹木であるとはちょっと理解しがたいかもしれない。名は、茎が細いくせにウマ(馬)をも繋ぎとめることができるのではないかと思われるほど意外と丈夫なもの、の意と思われる。むやみに引っ張れば茎は根元のところでぶちっと切れるので、実際には怪力のウマを繋ぎとめられるものではない。神奈川県内ではほぼ全域に広く分布あり。湘南・鎌倉・三浦半島では、人があまり入り込まない磯の基部(磯と海岸草地の境)でミヤコグサ(都草)と仲良く近所付き合いしながら生活しているものを見かける。内陸部にも。この植物に関してはいくつかよくわからない点がある。
磯の基部に生えたコマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
海岸草地から生え出たコマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
磯の基部に生えたコマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
海岸草地の際に生えたコマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
海岸草地の際に生えたコマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
海岸草地の中に生えたコマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
磯と海岸草地の境に生えたコマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
磯と海岸草地の境に生えたコマツナギ 三浦市・城ヶ島 2023/07/07
磯と海岸草地の境に生えたコマツナギ 三浦市・城ヶ島 2023/07/07
コマツナギ 三浦市・城ヶ島 2023/07/07
コマツナギの株元 三浦市・城ヶ島 2023/07/07
コマツナギ 箱根町・仙石原すすき草原 2023/08/04
#コマツナギ 箱根湿生花園 2023/07/19
#コマツナギ 箱根湿生花園 2023/07/19
一、『神奈川県植物誌2018』は市街地でなければその辺に生えている普通種として掲載しているが、どうだろうか。市街地化が進む湘南・鎌倉・三浦半島では見かけることは今や希。おいそれとお目にかかれるものでは最早ないのではないか。丘陵地を通るハイキングコース沿いなどでも見かけない。
一、外来の近似種トウコマツナギ(唐駒繋)、別名キダチコマツナギ(木立駒繋)なるものあり、これとの見分けが難問である。これは道路の法面(のりめん)緑化を目的として人為的にタネがばら蒔かれて分布が広がった侵略的外来種で、自然豊かな地域を通り抜ける道路沿いおよびその周辺の野山にこそ多く帰化している。平凡社『改訂新版 日本の野生植物 2』はコマツナギとトウコマツナギは酷似しており同一種として扱っている。対して『神奈川県植物誌2018』は明らかに異なるので両者を別のものとして掲載。全国農村教育協会『増補改訂 日本帰化植物写真図鑑 第2巻』は違いは一目瞭然と述べ別種として扱いながらも再検討を要すると結論をぼかした。トウコマツナギはハギ(萩)のように大きく成長し茎が成人男性の親指より太くなるので、そのような姿をしていればそれは確かにトウコマツナギで間違いない。が、生えたての幼木が一株だけあったらどう見分けよというのか。
歩道に生えた、茎が細く斜上するトウコマツナギの若木か 大井町柳・東名高速付近 2023/07/27
一、『神奈川県植物誌2018』は”茎はふつう斜めに立ち長さ1m前後になる”と記載。但し、湘南・鎌倉・三浦半島の海辺で見かけるものは裸地(らち)に生えているせいか海風を避けている海岸型なのか、茎は完全に地べたを這うばかりで立ち上がらない。競合する他の植物に囲まれていれば日光を求めて茎は斜上するが、裸地でも立つものなのかは(観察対象が見つけられていないので)不明。トウコマツナギは積極的に立つ。
草地に生え、茎が立った#コマツナギ 箱根湿生花園 2023/07/12
※本頁では、周辺一帯にトウコマツナギの親株が生えておらず、茎は細くて這う傾向が見られ、茎の長さは1m程度と小型なもの、のみをコマツナギとして掲載する。茎は細いながらも斜上し株が大きく成長したコマツナギは、コマツナギの大株なのかトウコマツナギの小株なのか判断できかねるため、掲載から漏れる。
葉は小型で、頂小葉が一枚ある奇数羽状複葉。かわいらしいと感じる葉である。小葉の大きさはおよそ均一で、トウコマツナギの大株は大きな葉も付ける。軸先端に巻きひげあらばヒロハクサフジ(広葉草藤)などの他種である。
コマツナギの葉 三浦市諸磯 2023/06/21
コマツナギの葉 三浦市諸磯 2023/06/21
#コマツナギの葉 箱根湿生花園 2023/07/12
#コマツナギの葉 箱根湿生花園 2023/07/12
#コマツナギの葉 箱根湿生花園 2023/07/12
#コマツナギの葉 箱根湿生花園 2023/07/12
コマツナギの虫こぶ
虫こぶまたは虫癭(ちゅうえい)とは、植物に小さな虫の幼虫などが寄生することによってできる不思議なこぶ状の膨らみのこと。
コマツナギハイボフシ
葉にイボ状の突起ができることがある。
コマツナギハイボフシ 三浦市諸磯 2023/06/21
コマツナギハイボフシ 三浦市諸磯 2023/06/21
外国産の近似種タイワンコマツナギ(台湾駒繋)などは染料のインディゴ(Indigo)の原料として世界的に栽培されていた(現在は化学合成品が主流)。見かける機会はまずないか。
コマツナギの花
葉腋(ようえき)から直立する総状花序を出す。軸先端を伸ばしてそこに蕾を作っては長期にわたって咲き進んでいくので、古い花序には異様に長い柄(え)があるように見えるだろう(花が咲き終わった痕)。花色はピンク色(赤紫色)。かわいらしいと感じる花である。
コマツナギの咲き始め 三浦市諸磯 2023/06/21
コマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
コマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
コマツナギ 三浦市諸磯 2023/06/21
コマツナギ 箱根町・仙石原すすき草原 2023/08/04
コマツナギ 箱根町・仙石原すすき草原 2023/08/04
コマツナギ 箱根湿生花園 2023/07/12
園芸栽培されるニワフジ(庭藤)はコマツナギと同属の近似種ではあるが、似てはいないので混同することはない。
城ヶ島、三浦市諸磯
#箱根湿生花園(②ススキ草原区に少ない)、箱根町・仙石原すすき草原
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
『改訂新版 日本の野生植物 2』 大橋広好・門田裕一・邑田仁・米倉浩司・木原浩編 平凡社発行(2016)
『増補改訂 日本帰化植物写真図鑑 第2巻』 植村修二・勝山輝男・清水矩宏・水田光雄・森田弘彦・廣田伸七・池原直樹編著 全国農村教育協会発行(2015)