定家葛 リンドウ目/キョウチクトウ科/テイカカズラ属 花期/5月中旬~6月 結実期/11月中旬~12月中旬 紅葉/12月下旬~1月
学名/Trachelospermum asiaticum (Siebold & Zucc.) Nakai
有毒自生種
テイカカズラ 横浜市栄区・栄プール~天園 2022/05/28
主に丘陵地の林内ないし林縁にたくさん生えている常緑の藤本(とうほん)で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。蔓植物の、草ではなく木。地面を這うか、スギ(杉)など他の樹木の幹に絡み付いて高所まで登る。幼木はツルマサキ(蔓柾)によく似て紛らわしい。湘南・鎌倉・三浦半島では大きな林がある地域で無数に生えているありきたりの普通種。市街地には自生なし。古名マサキノカヅラ(マサキノカズラ、柾木の葛、真拆の葛、ツルマサキを指す可能性も)。
テイカカズラの地面を這う幼株 大磯町・高麗山公園 2022/08/11
テイカカズラ 横須賀市・観音崎公園 2017/06/06
テイカカズラという名前は、能の演目「定家(ていか)」から。要するに、平安時代末期の公卿で歌人の藤原定家(ふじわらのさだいえ、ていかとも呼ばれる)に由来。物語は、後白河天皇の娘で歌人の式子(しょくし)内親王が死後、自分に思いを寄せる亡き藤原定家がテイカカズラに姿を変えて式子内親王の墓にまとわりついてしまっている、これでは成仏できないと嘆き、僧侶に呪縛を解いてもらって晴れて自由の身となるも、最後はまたテイカカズラが絡みついた墓に戻ってゆく──、という話。その式子内親王の墓とされる塚および五輪塔は、京都・千本今出川(せんぼんいまでがわ)の般舟院陵(はんしゅういんのみささぎ)にあり。なお鎌倉・建長寺の総門と方丈は、かつてこの地にあった般舟院(般舟三昧院、廃寺)から関東大震災後に移築されたものである。
低い岩肌を這い上ったテイカカズラの幼木とイタビカズラ 大磯町・高麗山公園 2018/03/31
テイカカズラ(ほぼ全面) 横須賀市・観音崎公園 2022/06/13
テイカカズラ 横須賀市・観音崎公園 2022/06/13
ハイキングコース沿いのフェンスに絡んだテイカカズラ 横浜市栄区・栄プール~天園 2022/05/28
道端に生えた丸葉型のテイカカズラ 大磯町大磯 2020/11/18
つやつや照葉丸葉型のテイカカズラ 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2020/06/04
つやつや照葉丸葉型のテイカカズラ 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2020/06/04
つやつや照葉丸葉型のテイカカズラ 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2020/06/04
#テイカカズラ(階段右側) 鎌倉市・長谷寺 2021/02/23
林縁からこぼれ出てきた照葉丸葉型テイカカズラ 横須賀市・観音崎公園 2020/10/25
海に面した林縁に生えたテイカカズラの照葉丸葉型(上と同地点) 横須賀市・観音崎公園 2022/06/13
テイカカズラとツルマサキの違い
ともに日陰の林床にあって、蔓性で、地面を這い、葉の形状もそっくり。花はまったく異質なものなので咲いているなら一目瞭然ながら、どちらも花付きがよろしくない。
テイカカズラ
葉に鋸歯がない。茎はふつうの木の幹の色(灰褐色、なお花期の若い枝は緑色)。若い枝に毛が多い。
テイカカズラの葉 横須賀市・くりはま花の国 2018/02/08
ツルマサキ
マサキの仲間なので葉に鋸歯がある。茎は緑色。
ツルマサキの葉 鎌倉市・葛原岡ハイキングコース 2017/02/28
ツルマサキに葉が酷似するウメガサソウ(梅笠草)なるものもあるが、湘南・鎌倉・三浦半島で見かけることはまずないので気にしなくてもよい。鋸歯が妙に鋭利だったらウメガサソウである疑い。
イタビカズラ
見慣れないうちはテイカカズラと紛らわしい、イタビカズラなるものもあり。ただしイタビカズラは葉が互生なので、しっかり確認すれば判別は容易。
イタビカズラ 大磯町・高麗山公園 2018/03/31
葉は対生。株が若いうちはランナー(走出枝、ストロン・匍匐茎 ※当サイトでは両者を厳格には区別せずランナーと呼ぶ)を出して地面を這う。葉脈がやや白っぽく見えるので、ちょっと斑入りのように感じられるかも。地面を這う幼株の葉の裏は、ほぼ無毛。林床にいくらでも生えている。希に妙な形状の葉を見かけることも。
テイカカズラの幼木の斑が入る葉、左上はキヅタ 横須賀市・前田川源流 2017/01/03
テイカカズラの若木の斑が消えかかっている葉 横須賀市・前田川源流 2017/01/03
テイカカズラの珍しい長葉型の葉 茅ケ崎里山公園 2018/02/17
テイカカズラは他の樹木や壁面を登ってこそ成木となる。茎からこまめに気根を出してがっしりへばり付く。巻き付いて登る能力もあり。幼木の頃よりは葉は大きめ、長細め。脈上の白斑は目立たなくなる。
苔むした岩壁を登るテイカカズラから伸びた気根(白色矢印) 横須賀市・くりはま花の国 2018/02/08
テイカカズラの成木の葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2019/02/01
テイカカズラの成木の葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2019/02/01
テイカカズラの成木の葉、やや黄葉中 小田原市・石垣山農道 2017/01/05
臨海地域に、葉が大きく幅広なものがある。特に、まさに海に面して強い直射日光と潮風を浴びているだろうものは、葉の表面がつやつやによく照る。オオバテイカカズラ(大葉定家葛)とかマルバテイカカズラ(丸葉定家葛)とかテリハテイカカズラ(照葉定家葛)とか呼びたくなるほどの変異であるが、そのような呼称はない。葉と花が大きい海岸型の変種チョウジカズラ(丁字葛)なるものが(近隣では千葉県に)あるらしいが、神奈川県内のそれらしきものはすべてチョウジカズラではなくテイカカズラの変異内と判断されている。確かに大花といえるテイカカズラは見た例がない。
地面を這った(照葉丸葉型と思しき)テイカカズラの幼木 横須賀市・観音崎公園 2020/10/25
テイカカズラの丸葉型の葉 大磯町大磯 2020/11/18
テイカカズラの照葉丸葉型の葉 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2019/03/15
テイカカズラの照葉丸葉型の葉 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2019/11/21
テイカカズラの照葉丸葉型の葉 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2019/11/21
葉裏に見える緑色の毛細血管のような細脈の模様が特徴的。
テイカカズラの照葉丸葉型の葉裏 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2019/03/15
葉をもいだり枝を切るなどすると、イタビカズラの仲間同様にべったべたになる白色の乳液が出る。この手の汁は触れるとかぶれることがあるので注意。
丸葉型テイカカズラの葉をもいだ痕に出てきた乳液(白色矢印) 藤沢市・江の島 2019/11/21
テイカカズラは自然豊かな地域の林内に自生しているものであるが、壁面緑化に、民家の塀やフェンスを隠すのに、栽培されることがある。神奈川県内の森林で見かけるテイカカズラらしきものは野生種のテイカカズラでよいのだが、栽培品は外来種や交配されているだろう由緒不明の園芸品種であろうと思われる。純粋な野生種のテイカカズラと考えるには合点いかない点が(一般の人の目には極めて微々たる違いでしかないだろうが)ちょこちょこ見受けられる。何かがおかしい。幼株の葉裏が有毛で、萼筒(がくとう)と萼片の形態がテイカカズラと異なって、花柄(かへい)が有毛、葉柄(ようへい)も有毛、であれば近畿地方以西に分布があるケテイカカズラ(毛定家葛)ないしその系統の園芸種である可能性。ケテイカカズラはテイカカズラの単なる多毛品ではなく、別種である。ケテイカカズラに似て葉裏は有毛であるが、花柄が無毛で、花の香りが強ければ中国原産のスタージャスミンことトウキョウチクトウ(唐夾竹桃)である可能性。若葉がピンクだ白色だを帯びる斑入りのハツユキカズラ(初雪葛)はケテイカカズラ系の園芸品種らしい。他にも黄色の掃け込み斑が入るもの、覆輪となるもの、散り斑が入るもの、などの園芸品種がある。※テイカカズラっぽい風体で民家等で栽培されているものは、ケテイカカズラなどの他種を思わせる性質が一部に表れているものが多々見受けられるため、本頁には掲載せずテイカカズラ(園芸種)として別頁を設ける。なお、鎌倉などテイカカズラ自生地に接した民家では野生種のテイカカズラをそのまま利用して栽培していることもある。
神奈川県内では横須賀市・猿島に限定して、近似種のサカキカズラ(栄木葛)なるものあり。神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧IA類」、神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧IA類」指定の希少種。
テイカカズラの花
送風ファン形の白花。咲き終わりに近づいてくると強く黄ばんでくる。花喉部(かこうぶ)はふつうオレンジ色。ごく希に、黄色っぽいものも。花径2.5cm前後。5月末~6月初旬に満開。
テイカカズラ 横須賀市・観音崎公園 2017/06/06
#テイカカズラ 横浜市戸塚区・俣野園 2017/05/17
テイカカズラ 横須賀市・観音崎公園 2017/06/06
テイカカズラ 横浜市栄区・栄プール~天園 2022/05/28
#テイカカズラ 横浜市戸塚区・俣野園 2017/05/17
テイカカズラにしては花喉部が黄色っぽい花 鎌倉市・天園~市境広場 2022/06/10
若い枝は(ケテイカカズラの類にも共通して)多毛であるが、花柄(かへい)や萼などは無毛である。萼片は小さく、ふつう開かず(軽く開く個体もまま見かける)、(蕾の段階ではなく)開花時にはその先に花筒狭部(かとうきょうぶ、花筒のうち細くなっている部分)が(萼片や花筒広部(かとうこうぶ)の長さよりも)長く露出して見える。なお栽培品のテイカカズラ(園芸種)は、花筒狭部が長くない。
テイカカズラの萼と花冠筒部 横須賀市・観音崎公園 2022/06/13
#テイカカズラの特徴 横浜市戸塚区・俣野園 2017/05/17
つやつや照葉丸葉型のテイカカズラ 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2020/06/04
つやつや照葉丸葉型のテイカカズラ 藤沢市・江の島サムエル・コッキング苑 2020/06/04
照葉丸葉型テイカカズラの暗い赤紫色を帯びた萼 横須賀市・観音崎公園 2022/06/13
赤みが強く出る個体がある。
赤い彗星のテイカカズラ 横浜市栄区・栄プール~天園 2022/05/28
赤い彗星のテイカカズラの蕾 横浜市栄区・栄プール~天園 2022/05/28
赤い彗星のテイカカズラ 横浜市栄区・栄プール~天園 2022/05/28
赤い彗星のテイカカズラ 横浜市栄区・栄プール~天園 2022/05/28
テイカカズラはふつう林の中の薄暗い日陰に分布しているが、花が咲いている個体は、林縁部などそれなりに日当たりがある半日陰ないし明るい日陰に生えている個体に限られる。スギの幹などに絡んで上へ上へのぼって大きく茂った株に成長しないと花は咲かない。地面を這っている幼木に花が咲くことはない。
花期は思いのほか長く、花が黄ばみながらも、汚らしい花殻(はながら)は残しながらも、6月いっぱい咲き続ける。
テイカカズラの実
実は細長すぎるインゲンマメ(隠元豆)のようなものが一対。あの花がどうなればこんな実に変わるというのか。
テイカカズラの実 小田原市・石垣山農道 2017/09/09
テイカカズラの実 小田原市・石垣山農道 2017/09/09
テイカカズラの虫こぶ
虫こぶまたは虫癭(ちゅうえい)とは、植物に小さな虫の幼虫などが寄生することによってできる不思議なこぶ状の膨らみのこと。
テイカカズラミサキフクレフシ
テイカカズラの実の先端が(融合し)膨れて節になるもの、の意。テイカカズラっぽい謎の蔓性の木に未熟で緑色のち赤色の丸いヒメリンゴ(姫林檎)の実のようなものがぶら下がっていたらきっとコレ。テイカカズラミタマバエの幼虫が寄生している。
テイカカズラミサキフクレフシ 鎌倉中央公園 2017/11/16
テイカカズラミサキフクレフシ 鎌倉中央公園 2017/11/16
テイカカズラミサキフクレフシ 鎌倉中央公園 2017/11/16
テイカカズラミサキフクレフシ 鎌倉市十二所・吉沢川源流入口 2017/11/21
実が熟せば、中から綿毛付きの種子が放出され風に乗って遠くへ遠くへ飛んでゆく。
テイカカズラの熟して開いた実 横須賀市/逗子市/葉山町・乳頭山 2018/12/21
テイカカズラの熟して開いた実とこぼれ出た種子 横須賀市/逗子市/葉山町・乳頭山 2018/12/21
空から降ってきたテイカカズラの種子 鎌倉中央公園 2016/12/23
テイカカズラの種子 鎌倉中央公園 2016/12/23
林床に落ちていたテイカカズラの種子 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/11/30
テイカカズラの種子 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/11/30
空中を浮遊するなどの物体”ケサランパサラン”は、もしかしたらテイカカズラの実である可能性も。毛の部分だけが外れるとなおさら軽くなり、無風でありながらもふわふわっと空中を漂うことがある。
テイカカズラの紅葉
種子を放出し終えたあたりで紅葉する。
テイカカズラの紅葉 秦野市・葛葉緑地 2018/12/29
横浜市栄区・栄プール~天園(花多い)、横浜市戸塚区・#俣野園
観音崎公園(三軒家砲台跡上、第1駐車場や海岸園地外周路沿いなどに照大丸葉の海岸型、花多い)、三浦アルプス(乳頭山周辺)、天園ハイキングコース(花多い)、江の島(通常の観光路沿いに異様に照りの強い葉、裏参道に丸葉型)、江の島サムエル・コッキング苑(入園口外広場のヤシの木に照大丸葉の海岸型)、高麗山公園
横須賀市秋谷・前田川団地(大楠山ハイキングコース入口への車道分岐の川側、やや遠い)、逗子中学校(テニスコートの駐車場側フェンス、虫こぶ多い)、#逗子市役所、吉沢川源流入口、#光則寺(山門入って左前)
小田原市・石垣山農道(海蔵寺北側)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
上町あずさ・下村孝「緑化用および鑑賞用植物として流通しているテイカカズラ属(Trachelospermum Lem.)園芸品種の分類」 - 『日本緑化工学会誌』 日本緑化工学会編集・発行(2009)