アカバナ

赤花 フトモモ目/アカバナ科/アカバナ属 花期/8月下旬~10月中旬 結実期/10月~12月中旬
学名/Epilobium pyrricholophum Franch. & Sav.

自生種稀少保護

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

日当たりの良い湿地や不耕作田(休耕田)に生える多年草。名は、赤い花が咲くの意ではなく、植物学者の牧野富太郎博士によれば夏から秋にかけて葉がよく赤く染まることから。水田雑草のチョウジタデ(丁子蓼)あたりがよく赤く色付くのと似た話。であるならばもしかしたら漢字表記は赤葉菜とするのが妥当なのかもしれない。菜っぱは食用にできる緑色で無毛の柔らかな葉物野菜をいうのでちょっと違うような気もするけれども。草丈は個体差大きく、貧弱なものでは20cm程度、大きく伸長したものはだいぶ背高で80cm内外にも達する。大型な個体はよく分枝(ぶんし)する。神奈川県内ほぼ全域に広く分布があるため普通種という扱い。但し、湿地そのものがそこかしこにあるわけではないので、湘南・鎌倉・三浦半島では見かける機会は滅多にない希少なものという印象しかない。地域の植生を調査している人たちくらいしか生えている場所は知らないのでは。その辺の田んぼを覗けば生えている雑草といった類のものではない。従ってSNSなどに写真が上げられることもない。コシロネ(小白根)あたりと併せて大切に残したい希少な湿生植物である。

若いアカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/10

若い#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/10

若いアカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/10

若い#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/10

若いアカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25

若い#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25

若いアカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/31

若い#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/31

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/08/20

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/08/20

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/15

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/15

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/26

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/26

アカバナ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2022/10/01

アカバナ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2022/10/01

アカバナ 箱根湿生花園 2023/10/03

#アカバナ 箱根湿生花園 2023/10/03

アカバナ 箱根湿生花園 2023/10/03

#アカバナ 箱根湿生花園 2023/10/03

結実期終盤のアカバナ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2021/10/30

結実期終盤のアカバナ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2021/10/30

アカバナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

アカバナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

アカバナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

アカバナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2022/10/20

#アカバナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2022/10/20

アカバナの茎 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナの茎 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

茎は稜(りょう、出っ張り)なく、断面は円形。稜があって角張っているなら近似の別種。

アカバナの茎 茅ヶ崎市浜之郷 2023/08/20

#アカバナの茎 茅ヶ崎市浜之郷 2023/08/20

栽培しているアカバナは、なぜか突然枯れることがある。株が順調にすくすくと大きく成長したあとで、除草剤でも浴びたかのようにあるときにわかに枯れ始めて一気に枯死に至る。生か死か、極端な道を行く。原因は不明。浅い水中にあるものでも枯れるので水切れではない。肥料を与えていないものも枯れるので肥料焼けではない。地上部に虫は付いていない。シンクイムシ(芯食虫)が入り込んだ形跡もない。同じ鉢植え内の別の株は元気にしているのでコガネムシ(黄金虫)の幼虫に根を食い尽くされたわけではなさそう。病気を伺わせる兆候はなし。ちょっとよくわからない。箱根湿生花園では枯れているアカバナを見ないので、高温障害の類だろうか。にしてはすぐ隣の株は問題なく元気に育っている。よくわからない。

枯れたアカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/07

枯れた#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/07

枯れたアカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/26

枯れた#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/26

神奈川県内では主に山地に同属の別種あり。ケゴンアカバナ(華厳赤花)は茎に稜があり、茎ではその稜にのみ毛が生える。柱頭(ちゅうとう)は球形。イワアカバナ(岩赤花)はケゴンアカバナの亜種で似ているが、腺毛(せんもう)が生えない。ヒメアカバナ(姫赤花)は小型で、葉は細めで鋸歯(きょし)がやや不明瞭。トダイアカバナ(戸台赤花)はヒメアカバナをやや大きくしたようなもので、よく分枝して葉は細め。ノダアカバナ(野田赤花)は外来の帰化雑草で、咲き始めの花は白く、のち赤みを帯びてくる。オオアカバナ(大赤花)は令和元年(2019)に横浜市瀬谷区で県内では初めて発見されたもので、花が大きいので一目で違いはわかる。これらのうち、ケゴンアカバナだけは湘南・鎌倉・三浦半島でも発見された例がある。

沖縄でアカバナ(アカバナー)といったらハイビスカスのこと。

アカバナの花

開花は9月およびその前後。茎上部の葉腋(ようえき)でぽつりぽつりと咲く。長い柄(え)を伸ばしてその先で咲いているように見えるが、じつは柄ではなく細長いのは(花後に実になる)子房である。花弁は四枚。花弁先端にはソメイヨシノ(染井吉野)のように切れ込みが入る。花径は1cm程度。

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/17

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/17

やや小振りで、柔らかな印象で、主張し過ぎない明るい薄ピンク色で、鐘(ベル)の舌(ぜつ)を思わせる形状の雌蕊は清楚な白色で小さなユキモチソウ(雪餅草)のよう。野草にしてはだいぶかわいらしい花である。

アカバナ 箱根湿生花園 2023/09/02

#アカバナ 箱根湿生花園 2023/09/02

アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/10/20

#アカバナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/10/20

アカバナの花と若い実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/10/20

#アカバナの花と若い実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/10/20

雌蕊先端の柱頭は短い棍棒(こんぼう)形(やや縦長な立体の楕円形)であること。ほぼまん丸な球形だったら近似の別種。

アカバナの萼と子房  茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

#アカバナの萼と子房  茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/12

市街地の道端などで似たような花を見かけたら南米原産の帰化雑草で、アカバナユウゲショウ(赤花夕化粧)ことユウゲショウである。こちらは花弁先端に切れ込みが入らない。

アカバナの実

細長い棒状の蒴果(さくか)ができる。茶色く枯れたように熟すと先端から裂開し、中に納めていた種子を放出する。熟して裂開した実もまたおもしろい姿である。タネはたいへん軽くて、種髪(しゅはつ、冠毛は実に付く毛)と呼ばれる綿毛付き。少々の風でもふわあっと飛ばされてゆく。

アカバナの実 箱根湿生花園 2023/10/30

#アカバナの実 箱根湿生花園 2023/10/30

アカバナの実 箱根湿生花園 2023/10/30

#アカバナの実 箱根湿生花園 2023/10/30

アカバナの熟して裂開し始めた実 箱根湿生花園 2023/10/30

#アカバナの熟して裂開し始めた実 箱根湿生花園 2023/10/30

アカバナの熟して裂開し始めた実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/25

#アカバナの熟して裂開し始めた実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/25

図鑑等に”種髪の色は赤褐色”とありやや困惑されるかもしれない。ルーペを除いて確認すれば確かに色が付いており赤褐色であるも、色は薄くて光沢あるため、肉眼でも写真でも白色にしか見えまい。

アカバナの熟して裂開し始めた実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/25

#アカバナの熟して裂開し始めた実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/25

花一個が作り出す種子の数はだいぶ多い。

アカバナの熟して裂開した実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2021/10/30

アカバナの熟して裂開した実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2021/10/30

アカバナの熟して裂開し終えた実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2021/10/30

アカバナの熟して裂開し終えた実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2021/10/30


横浜市栄区・横浜自然観察の森(ヘイケボタルの湿地)

#箱根湿生花園(仙石原湿原植生復元区に多い)

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

『牧野 日本植物図鑑』 牧野富太郎著 北隆館発行(1940)

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