蛙 両生類/無尾目
最も身近な両生類。緑色をした小さなアマガエル(雨蛙)だけはまあまあかわいいけど他は全部気色悪いからカエルは嫌い、という人は多いのではないだろうか。
カエルは英語でフロッグ(frog)。ケロッグの方がカエルっぽいが、コーンフレーク製造会社の創業者の苗字だ。
両生類
両生類(りょうせいるい)とは、幼生の頃を水中で過ごし、成体になると主に陸上で生活する生き物のこと。具体的には、カエル(蛙)、イモリ(井守)、サンショウウオ(山椒魚)。水と密接に関係した生活環境に生息していることが多いが、水陸両用で水の中でも陸の上でも生きて行けるというわけではなく、陸生の両生類を水に長いこと浮かべていると力尽きて溺れ死ぬことがあるので注意したい。
両生類は餌取りがやたら下手くそな連中が多い。つぶらな瞳とどん臭さが両生類の愛嬌かもしれない。
両生類の指の数
基本的に、前肢(手)の指は4本、後肢の指は5本である。
カエルの幼生はオタマジャクシ(御玉杓子)という。「おたまじゃくしは蛙の子、なまずの孫ではないわいな」は有名な童謡「お玉じゃくしは蛙の子」(作詞/永田哲夫・東辰三、曲/アメリカ民謡「リパブリック讃歌」)の一節。それはそうだ、オタマジャクシはナマズ(鯰)の生き餌である。
オタマジャクシは、その発生時期と姿からどのカエルの子か見分けることが可能。
湘南・鎌倉で見かけるカエルとその産卵時期
3月
アズマヒキガエル
4月中旬~下旬
シュレーゲルアオガエル
5月~6月
ニホンアマガエル、トウキョウダルマガエル
5月~8月
ウシガエル
5月?~9月?
ツチガエル
5月下旬~6月
モリアオガエル
アカガエル
赤蛙 両生類/無尾目/アカガエル科/アカガエル属 産卵期/1月末~2月
在来種稀少保護
赤茶色のカエル。体色は黄土色や金色など個体差あり。地面に積もった落ち葉と保護色になっている。体長(鼻先~尻)は6~7cm程度(タバコの箱より少し小さい)と、カエルにしては結構大きい。ニホンアカガエル(日本赤蛙)とヤマアカガエル(山赤蛙)の二種あり。共に普段は草むらなどの地上で生活している。地上は餌になるバッタ(飛蝗)などが多い反面、天敵のヘビ(蛇)に襲われる危険も高い。人の気配を察するとぴょんと一っ跳びして草むらに逃げ込む。一蹴りで1.5m程度跳躍できる強力なジャンプ力が持ち味。
冬眠していたアカガエルは1月頃に一度目を覚まし止水中に産卵を行い、また再び春眠に入るという。最も早起きなカエルだが、二度寝するカエルでもある。極寒の時期に産卵を行うのは天敵のヘビが目覚める前にということか。カエルの産卵は小柄のオスが大柄なメスの背中にしがみつく抱接(ほうせつ)の状態で体外受精を行う(両生類共通)。といっても産卵するのは夜間で、さっと産んでさっと消えるのか、残された卵は見かけるが親御さんの姿にはなかなか遭遇できない。
卵は一つ一つの丸い粒が密集し、塊になる。卵塊(らんかい)全体の大きさは両手で掬(すく)いきれない程度。簡単にぱらぱらとは分離せず、どろっと一塊の状態を維持する。
ニホンアカガエルとヤマアカガエルの見分け方
ニホンアカガエルの写真。
黒っぽい模様の鼻・目・目の後ろと続くライン(赤線)が一直線である。
目の後ろの黒っぽい部分の上辺の長さ(青矢印・A)が斜めの高さ(B)より明らかに短い。
(下)
ヤマアカガエル風に画像を加工したもの。
黒っぽい模様の鼻・目・目の後ろと続くラインが、目の後ろで垂れる。
ニホンアカガエル
日本赤蛙 産卵期/1月末~2月
在来種稀少保護
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧II類」
平地を好む。本来は田んぼ周辺に数多く分布していたはずであるが、水田の減少および農薬(殺虫剤および除草剤)の使用などで生息できる環境の多くを失った。
ニホンアカガエルの卵塊(9個) 藤沢市・川名清水谷戸 2017/02/08
ニホンアカガエルの卵塊(1個) 藤沢市・川名清水谷戸 2017/02/08
ニホンアカガエルのやや成長した卵塊 茅ヶ崎市 2016/02/29
卵から孵(かえ)したニホンアカガエルの子供二匹を一ヶ月ばかり飼育してみたが、まぁ人に慣れないこと慣れないこと。飼育容器の蓋を外したとたんに大パニックになってぴょんぴょん飛び跳ね逃げる逃げる。生き餌は(見てないところで)食べてくれたがいかんせん落ち着かない懐かないでどうしようもなかった。陸上に棲む飛び跳ねるカエルはあまり飼育に向かないのかもしれない。
ニホンアカガエル 清水谷 2016/08/31
人が近づくと、成体はぴょーんと一蹴りだけ逃げて草陰でじっと息をひそめる。でっかい物体が飛び跳ねるから見つかるのであって、じっとしてると土と落ち葉の色と保護色で、草の影にも紛れてなかなか見つからない。
ニホンアカガエル 清水谷 2016/09/09
一蹴り逃げたあとは、そうっと接近すれば写真は撮らせてくれることが多い。
ニホンアカガエル 馬入水辺の楽校 2016/09/29
草地で、おそらくだが、小さなバッタ(飛蝗)やガ(蛾)やクモ(蜘蛛)食べ放題生活を送っているものと思われる。
土と落ち葉に紛れたニホンアカガエル 清水谷
川名清水谷戸(2月中旬~下旬、入って右手奥の蓮田に ※採取禁止)、清水谷(2月中旬、池に ※採取禁止)、馬入水辺の楽校(相模川沿い)
平成29年(2017)2月初旬 川名清水谷戸、清水谷
ヤマアカガエル
山赤蛙 産卵期/1月下旬
在来種稀少保護
丘陵地や山地を好む。ニホンアカガエル(日本赤蛙)は平地に棲むが、ヤマアカガエルがいるのはどうも山の斜面のようだ。足元が傾いていると気持ちが落ち着くのだろうか。神奈川県内では三浦丘陵などに広く生息しているが、ハイキングや野草観察をしていても遭遇するのは極めて稀。神奈川県内では三浦半島などの丘陵地で見られるが、箱根や丹沢などの山地にも分布。
産卵は雨が降っている夜間に行われる模様。雨が少ない時期だからこそ、雨を合図に短期集中で繁殖に及ぶことができるのかもしれない。
絶好の産卵場所は、生息地である山に面した止水である。丘陵地の谷戸深くにある田んぼが無農薬でそこに水が溜まっていれば最高なのだが、現代においてそのような場所はまずない。農薬を使わない稲作は常識破り、冬の間は田んぼから水を完全に抜いてできるだけ土を空気に触れさせるのが常套、そして近年は田んぼそのものが大幅に減少、農地がなくなれば農業用水を溜める池は子供が落ちて死ぬだけだとしてこれも消滅、アシ(葦)栽培をすることもなくなったため湿地は埋め立てられ、寺や旧家の池には天敵のコイ(鯉)が泳ぐ始末、ともう散々。そもそもアカガエル自体が可愛らしくない(気色悪い)、繁殖期には鳴いてうるさい、と救いようもない。こうしてヤマアカガエルは減少の一途を”順調に”たどっている。
産卵場は完全な止水であって、僅かにでもちょろちょろ水が流れているような場所は嫌われる。水が完全に堰き止められていても、水路のような細い狭い場所は嫌い(じつは水が流れる水路なのであるということがバレている模様)。水深はあまりなく、人の足のくるぶしくらいまでの深さのところが好き。コイが泳いでいる池は嫌い。要するに、冬の間も水が溜まっている田んぼ、ハス(蓮)池、湿地に好んで産卵する。
ハス鉢に産み落とされたヤマアカガエルの卵塊 鎌倉市・浄妙寺 2017/02/03
ヤマアカガエルの卵塊はニホンアカガエルのものと同様、黒色の”卵黄”(これがオタマジャクシになる)が球形の透明ジェル状”卵白”で包まれていてそれが多数密集して一つの卵塊を構成。一つの卵塊はおよそ成人男性が両手で掬い取るにはちょっと量が多いくらいのもので、これでメス一匹の一回の産卵分である。
ハス鉢に産み落とされたヤマアカガエルの卵塊 鎌倉市・浄妙寺 2017/02/03
ヤマアカガエルの卵塊はニホンアカガエルのものに比べて”卵白”の弾力が弱く、手のひらで掬い取ろうとするとだらーりとろーりと指の間からみるみるこぼれ落ちていってしまう。微妙な違いではあるが、より柔らかで溶けちゃいそうな感じがするのがヤマアカガエルの卵塊。湘南・鎌倉・三浦半島では産卵場所は限られているので、どこに産み落とされた卵かでヤマアカガエルなのかニホンアカガエルなのかおよそ区別ができてしまうかもしれない。
ハス鉢に産み落とされたヤマアカガエルの卵塊 鎌倉市・浄妙寺 2017/02/03
ヤマアカガエルのオタマジャクシの特徴は、ない。一般にイメージされるオタマジャクシ(ヒキガエルやアマガエルのもの)よりやや大型で、運動能力に優れており捕まえようとするとまるでフグ(河豚)のようにぴちぴち飛び跳ね猛スピードで暴れ逃げる。アカガエルは頬の赤みが他のオタマジャクシよりも強めに透けて見えるか。あとは生息地、時期から当たりを付けるしかない。
ヤマアカガエルのオタマジャクシ 鎌倉市・広町緑地 2017/05/12
ヤマアカガエルのオタマジャクシ 鎌倉市・広町緑地 2017/05/12
上陸直後のヤマアカガエル 鎌倉市・広町緑地 2017/05/23
上陸直後のヤマアカガエル 鎌倉市・広町緑地 2017/05/23
上陸直後のヤマアカガエル 鎌倉市・広町緑地 2017/05/23
横浜市金沢区・金沢自然公園、横浜市栄区・横浜自然観察の森(1月中旬~下旬)、横浜市栄区・瀬上市民の森
馬堀自然教育園(※撮影禁止)、横須賀市芦名・風早の谷戸(立入禁止)、葉山町・花の木公園、広町緑地(田んぼを中心に卵塊10個程度)
浄妙寺(石窯ガーデンテラスへの経路途中のハス鉢に1個)、瑞泉寺(庭園)、建長寺回春院(平成29年(2017)3月5日 田んぼ周辺の水路水溜りに1個)、台峯谷戸ノ池(平成29年(2017)春浚渫工事)、鎌倉中央公園(田んぼ、立入禁止で観察できない)、二宮町・せせらぎ公園(谷戸深部二ヶ所に卵塊あり、木道から下りることが禁じられており接近して観察できない)
金時山(3月初旬)
※以上、いずれも保護対象であり採取等は禁じられている。
アズマヒキガエル
東蟇蛙、東蟾蜍 両性類/無尾目/ヒキガエル科/ヒキガエル属 産卵期/3月
有毒在来種稀少保護
神奈川県レッドリスト2006「要注意種」
シュレーゲルアオガエル
シュレーゲル青蛙 両生類/無尾目/アオガエル科/アオガエル属 産卵期/4月中旬~下旬
在来種稀少保護
神奈川県レッドリスト2006「要注意種」
ニホンアマガエル
日本雨蛙 両生類/無尾目/アマガエル科/アマガエル属 産卵期/5月~7月
有毒在来種
トウキョウダルマガエル
東京達磨蛙 両生類/無尾目/アカガエル科/アカガエル属 産卵期/5月~6月
在来種稀少保護
環境省レッドリスト2018「準絶滅危惧(NT)」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧II類」
トノサマガエル=環境省レッドリスト2018「準絶滅危惧(NT)」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧I類」
ヌマガエル
沼蛙 両生類/無尾目/ヌマガエル科/ヌマガエル属 産卵期/5月~7月
在来種外来種
カジカガエル
河鹿蛙 両生類/無尾目/アオガエル科/カジカガエル属 産卵期/5月~7月
在来種保護
山地の渓流周辺に生息する。シカ(鹿)のようにフィーフィーと鳴く声が美しく、和歌でカエルといったらこのカジカガエルの声を指す。「山吹に蛙」もヤマブキ(山吹)の黄色い花の下で鳴くカジカガエルの美しい声を表現した構図である。現実にはヤマブキの下ではなく、渓流の大石の上にしがみついて鳴く。声は鳥のものと勘違いしてしまうかもしれない。基本的には夜に鳴く。
神奈川県内では湘南・鎌倉地方には分布せず、箱根・丹沢にのみ生息している。
ウシガエル
牛蛙 両生類/カエル目/アカガエル科/アカガエル属 産卵期/5月~8月
食用外来種駆除
外来生物法「特定外来生物」
生態系被害防止外来種リスト「重点対策外来種」
国際自然保護連合(IUCN)「世界の侵略的外来種ワースト100」
日本生態学会「日本の侵略的外来種ワースト100」
北米原産の外来種。日本へは大正時代(1912-1926)に持ち込まれ、戦後に食用ガエルとしてアメリカ合衆国への輸出品になった。ニワトリ(鶏)のササミのような食感だという。国策として各地の試験場で飼育されたが、日本国内では食材としては定着しなかった。ウシガエルの餌として導入されたアメリカザリガニ(亜米利加蜊蛄)と同様、現在は河川や池の迷惑者として絶大なる地位を築いている。体が大きく口に入るものなら何でも大量に食べてしまうため、生態系を破壊してしまうからだ。ブラックバス+アメリカザリガニ+ウシガエル+ミシシッピアカミミガメ(ミシシッピ赤耳亀)+アライグマは最悪の生態系破壊者セットである。
市や県が管理する公園の池に多い。普段は水辺の陸上におり、人の気配を察知するとすぐ水中にどぷんと飛び込む。夜行性。「ブォー、ブォー」とウシ(牛)のようなブタ(豚)のような大きな声で鳴くのが名の由来。声の大きさは騒音公害以外の何ものでもないレベルの大音量だ。
ウシガエルは外来生物法で特定外来生物に指定されており、捕獲して飼育することなどは禁止。違法である(罰則あり)。特に卵は積極的な駆除の対象になっているとされる。一刻も早い絶滅が期待されるが、行政の動きは愚鈍。デモンストレーションばかりで具体的な駆除活動は有効的には全く行われていない。
卵は水面に浮かんで広がり、数千から数万個まとめて産み落とされていたらウシガエルのものだろう。巨大オタマジャクシのまま年を越し、翌年成体になる。
ウシガエルのオタマジャクシ 引地川親水公園湿性植物園 2016/08/31
ウシガエルは、逃げるのが早い。異常に早い。こちらがどんなに足音を消していても、気配を消してみても、遙か10m以上先の方でウシガエルが水の中へ逃げる音がする。相当優れた視覚を備えているか、どこか草むらに赤外線センサーでも設置していたかどちらかだ。そして、水にどぼんと飛び込んでおしまいでもなく、まだまだそこから逃げに逃げる。人に気づくのも早ければ逃げ足も速い。ウシガエルの姿を間近で見たことないという人も多いのではないだろうか。
ウシガエルがネコのようにニャーと鳴く?!
鳴く。鳴くことは以前から知られてはいたが、『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)平成28年(2016)9月2日放送”「ニャー」と鳴くカエル”(探偵/竹山隆範)で一躍世間の脚光を浴びることに。出演したカエル捕り名人によれば200匹に一匹くらいの割合でいるのだそうで、調査103匹目のウシガエルを背後から掴んだら見事「ニャーーーーーーーーーァァ~~」と口を開けて叫んでみせた。まさに発情期のネコが夜中に絶叫するがごとく。
ウシガエルのニャーという鳴き声を聞きたい
小さくて短いネコ声なら聞くことは可能。朝から小雨がしとしと降り続いている日の夕、引地川親水公園湿性植物園へ行ってみるとよい。(邪魔な)雨音が聞こえない程度の小雨の日で、その日は誰も引地川親水公園湿性植物園に足を踏み入れていないことが条件。
ここの池にはウシガエルが多い。そして、人が来ない日は神経が弛緩しきってのんびりしている。そこへ、そうっと木道を歩く。鳴き声がよく聞こえるように足音や気配は完全に消して歩くとよい。すると、こちらに気づいてニャッとひと鳴きして慌てて逃げるウシガエルが。残念ながら姿は確認できないかもしれないが、木道のすぐ下で、ニャッとかニャンと一瞬鳴く声が聞こえるだろう。ニャーーーーと長く鳴く声はウシガエルを手でつまむなどしてみないとだめだろうが(ウシガエルは特定外来生物なので捕獲は違法行為、罰則あり)。木道を一周すれば10回以上のニャッという声に出会えるだろう。たまにプッとか鳴く変なのもいる。
引地川親水公園湿性植物園、茅ケ崎里山公園(芹沢の池)
ツチガエル(ムカシツチガエル)
土蛙 両生類/無尾目/アカガエル科/アカガエル属 産卵期/5月?~9月?
在来種稀少保護
神奈川県レッドリスト2006「要注意種」
モリアオガエル
森青蛙 両生類/無尾目/アオガエル科/アオガエル属 産卵期/5月下旬~6月
在来種外来種稀少保護
神奈川県レッドリスト2006「要注意種」
最後に。カエルは、下半身で水を飲む。カエルは水を経口摂取せず、尻の辺りだけを水に浸して皮膚を通して水分を吸収するのだそうな。
カジカガエル(河鹿蛙)について:
2006年は、
11月に入っても夏日や真夏日を観測するほど異常な高温が続いたが、
鶴仙峡(石川)を散策中の 10月 6日、正午前まで「カジカガエル」の涼やかな声が鳴り響いていた。
地球温暖化で、
すっかり季節が変調したが、
当地(栃木県東部の荒川流域)では、
大きな砂利や岩がある「渓流」域で、
5月下旬頃から梅雨明け頃の「陽が傾く頃合い(16時過ぎ)から明け方」にかけて
カジカガエルの鳴き声が、蝉しぐれのように響き渡ります。
水しぶきがかかり続けるような「石」の上が舞台ですが、
鳴き声の主は、
小指ほどに小さくて完璧な保護色なので、視認には手間取ります。
その美しい鳴き声は、心地好く「格別」です。