日本雨蛙 両生類/無尾目/アマガエル科/アマガエル属 産卵期/5月~7月
学名/Dryophytes japonica (Günther, 1859)
有毒在来種
ニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2016/08/28
いわゆるアマガエル。外国にはそっくりなヨーロッパアマガエルなど近似種がいるので、正しくはニホンアマガエルという。体色は緑色で、見た感じはシュレーゲルアオガエル(しゅれーげる青蛙)やモリアオガエル(森青蛙)に近い。目の前後に黒っぽい筋(すじ)が入る。体色は周辺環境に合わせて灰色などに変色させることができる。他のカエル同様、オスよりメスの方が大きくなる。理想的な生息地は昔ながらの田んぼ広がる谷戸(やと)だろうと思われる。つまりは、浅い止水・草地・森が一体となって広がった、産卵地と餌場が揃った地域。日当たりは良いが湿っぽいので草が生い茂っており、餌となる小さな虫がそこかしこでぴょんぴょん跳ねているような空間がお好みだろうと思われる。神奈川県南部ではそのような風景は大きく失われているせいか、アマガエルは市街地へも進出しており、民家に庭にもふつうに居ついている。人間に最も身近なカエル。田んぼ周辺のアマガエルは人が近付くと一目散に飛び跳ねて逃げるが、庭のアマガエルはほとんど人を恐れず、近づいてもじっとかしゃがんだまま動かない。天敵であるヘビ(蛇)が出現しやすい地表近くでは高い緊張感を維持しており、1m以上の高さで人間が作った工作物に垂直にへばりついているときはある程度くつろいだ状態でいるように感じられる。暗い森の中、人の目線以上の高所、樹上では、見かけない。湘南・鎌倉・三浦半島でありふれた普通種。夜行性。春、冬眠から目覚めるのはまさに啓蟄(けいちつ)を迎える3月上旬である。
イネにニホンアマガエルの子供 茅ヶ崎市西久保 2018/07/18
冬眠から目覚めたばかりと思われるニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2017/03/07
冬眠から目覚めたばかりと思われるニホンアマガエル 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
落ち葉に擬態したニホンアマガエル 茅ケ崎里山公園 2018/03/28
目がイッてるニホンアマガエル 葉山町上山口 2017/10/05
バイクのシートに擬態したつもりのニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2016/09/30
民家外壁の色に擬態したニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2016/11/22
ラカンマキにいた白過ぎるニホンアマガエル 茅ヶ崎市西久保 2019/10/23
ユキヒョウ柄のニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2020/09/02
黒いニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2021/08/26
独眼竜ニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2021/05/12
餌は、口に入る程度の大きさの虫の類であればだいたい何でも食べる。ガ(蛾)でも、クモ(蜘蛛)でも。庭にしゃがみこんでいた巨大アマガエル(一切飼育等していない放置もの)の目の前に乾燥イトミミズをピンセット給餌してみたら、食べた。庭にいるやつに野生のプライドはないのかもしれない。食べ方は、カメレオン程長くはないものの舌を伸ばし、と同時に口をがばっと開けて獲物めがけてかぶりつく。突っ込み過ぎて顔面を打ったりバランスを崩して左右に転ぶこともしばしば。あまりスマートではない食べ方は、おもしろかわいい。
窓ガラスにへばりついて獲物を待っている(黒に変色した)ニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2020/09/07
天敵はヘビ。逆をいうと、アマガエルが多くいる場所にはヘビがやって来るので注意されたい。シラサギ(白鷺)、カラス(烏)、ムクドリ(椋鳥)あたりにも捕食されやすいか。
#ヒバカリに捕食されたニホンアマガエル 2016/08/14
アマガエルは皮膚に有毒物質を分泌するとされる。アマガエルを触った後は念のため手を洗うこと。目や口に入ると危険という。あのアマガエルがまさかの有毒??じつは危険生物だった??という意外なトリビア(雑学)は話題性抜群だが、はてさて被害に遭ったという報告を一件も聞かない。私が子供の頃はアマガエルを触った手など洗ったためしはなかったが、はて。
ニホンアマガエルの産卵
産卵期は主に初夏。但し一斉に産卵をして終わり、ではなく、産卵期は日照りが続く夏本番を迎える前までだらだらと長く続く。基本的には、ゴールデンウィーク(4月末~5月初旬)から梅雨入り(6月上旬から中旬)にかけて、特に雨が降りそうな日没後に、オスが喉(のど)の鳴嚢(めいのう、鳴き袋)を膨らませてゲコゲコと合唱を始めたら産卵期を迎えた合図。産卵準備が整ったメスがやって来れば産卵となる。産卵場所は浅い止水。水が張られた田んぼがふつうは選ばれる。卵の粒はメダカ(目高)の卵と同程度のごく小さなもの。鈴カステラのように、球形の卵は半分黒くて半分白い(クリーム色っぽい)。それを透明なゼラチン質状の物質が囲っている。卵は一粒一粒ばらばらに産み落とされ、水中の水草などに引っかかっている。ゼラチン質には泥汚れなどが付着しやすく、カモフラージュに役立ってもいる。そんな卵なので、田んぼで探すとなると困難を極める。見つけ出すのはまず無理。ベテランの水稲農家(すいとう-)の方でさえ「アマガエルの卵なんか見たことはない」と口を揃える。基本的には、オタマジャクシがうにょうにょ出現するようになって初めて、アマガエルの卵がそこにあったと気づかされることだろう。
腹に卵をたんまり蓄えていそうなニホンアマガエルのメス 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17
腹に卵をたんまり蓄えていそうなニホンアマガエルのメス 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/23
#ホテイアオイの上で鳴くアマガエルのオス 茅ヶ崎市浜之郷 2022/05/06 19:17
#ホテイアオイの根に付着したニホンアマガエルの卵(白色矢印) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/05/14
#トチカガミの根に付着したニホンアマガエルの卵 茅ヶ崎市浜之郷 2022/05/14
ニホンアマガエルの卵 茅ヶ崎市浜之郷 2022/05/14
ホテイアオイの根に付着したニホンアマガエルの変形し始めた卵(中央) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/05/15
アマガエルの卵を観察したくば、庭に水場を作っておくのが一番。トロ舟に水を張って水生植物でも栽培していれば、(最初の一二年は水場の存在に気づかれない可能性は大いにあるが)アマガエルに覚えられて恰好の産卵場所として利用されることになるだろう。4月末に、水を交換し、藻やら何やらのゴミを片づけて、水場をきれいにしておくとよい。毎朝、卵が産み落とされていないか確認すること。アマガエルの卵は、翌日にはもう変形を始め、産卵からたったの二三日で孵化(ふか)しオタマジャクシになってしまうことを忘れてはいけない。きれいな球形の卵を見ることができるのはわずか一日限り(産み落とされたその日限り)なのである。
ニホンアマガエルのオタマジャクシ
小さな卵から孵ったばかりのアマガエルのオタマジャクシは小さく、ヒキガエル(蟇蛙)のオタマジャクシとよく似ている。が、すぐに大きく成長する。上から見ると、目が体の側面に付いていて、極端に離れ目なのが特徴。尾びれの付け根の部分が黒く見えることが多い。水から上げると、腹がぷっくり真ん丸くてまるでフグ(河豚)のよう。体色は褐色で、斑が全体に入る。尾のヒレは縦にたいへん幅広で、他のオタマジャクシに比類なし。アメリカザリガニ(亜米利加蜊蛄)やヤゴ(水蠆)などに捕食されやすい。オタマジャクシの期間は30日余りという。群れる習性はない。
ニホンアマガエルの孵化したばかりのオタマジャクシ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/05/20
ニホンアマガエルのオタマジャクシ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/01
ニホンアマガエルのオタマジャクシ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/01
ニホンアマガエルのオタマジャクシ 茅ヶ崎市萩園 2016/07/10
餌は、柔らかい有機物(動植物由来のもの)。朽ちた水草、魚などの死骸のふやけたもの、何でも食べる。人為的に与えるなら、きな粉(ダイズ(大豆)の粉末)、小鳥の餌として売られているコマツナ(小松菜)粉、釣り餌に使われる魚粉、メダカの稚魚用の粉餌、などを適当に混ぜてやるとよい。
オタマジャクシからカエルに変態するのは、ふつうは夜。と言われるが日中に見かけないでもない。水面から上がって水草などにしがみついてじっとかしてると、みるみるカエルに変化してゆく。
トロ舟に上陸して変態を待つニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/15 17:24
トロ舟に上陸して変態を待つニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/15 18:25
上陸後、コナギの葉につかまって変態を待つニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/18 02:48
トチカガミの上で休む、変態が概ね完了したニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2021/08/23 13:41
ニホンアマガエルの冬眠
11月に入ってからだろうか、早朝寒く、暖房を使い始める人もちらほら出始める頃から、アマガエルの姿が減ってゆく。冬眠を始めているのだろう。土に潜って冬を越す。
花壇に潜って冬眠を始めていたが人にびっくりして起きてしまったニホンアマガエル 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/10