鼈鏡、水鼈 オモダカ目/トチカガミ科/トチカガミ属 花期/8月~9月
学名/Hydrocharis dubia (Blume) Backer
稀少
環境省レッドリスト「準絶滅危惧(NT)」
神奈川県レッドリスト2020「絶滅」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅」
トチカガミの雄花 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11 09:34
浅い沼などに生える多年草で、雌雄異株(しゆういしゅ)、または雌雄同株の雌雄異花。水底の土中に根を張って水面に葉を浮かべている浮葉植物、あるいは根張りが弱いようなので水面近くで茎も根も葉も浮かんでいる状態になる浮遊植物。名は、丸っこい葉がスッポン(鼈)の使う鏡に喩(たと)えられたもの。別名ドチカガミも同じ。別名カエルエンザ(蛙円座)は文字通りカエルが座る丸形座布団の意。神奈川県内、結構な昔はまあまあふつうに生えていたらしいが絶滅し、現在自生なし。『神奈川県植物誌1988』刊行に当たっての調査では茅ヶ崎市内の休耕田で最後の標本が採取されたようだが、そこが埋め立てられて絶滅と。杜若園芸(とじゃく-)などで通販可能なので、メダカ(目高)の産卵床(しょう)としてホテイアオイ(布袋葵)の代わりに育ててみても面白いかも、ちょっと花が地味かも。
トチカガミが生える湿地 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11
トチカガミの雄花 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11
水中を横に伸びる茎の節(ふし)から、根、長めの葉柄(ようへい)ある葉、同じく花柄(かへい)ある花が生え出る。葉は丸っこく、基部は心形(ハート形)。葉身はおよそ縦横各8cm程度、ただし小さいものからもっと大きなものまで差異激しく、葉の大きさはばらばら。似ているスイレン(睡蓮)の葉はよくよく眺めれば形状が異なり、それ以上に紛らわしいアサザ(浅沙)は葉の表面に走る(凝視(ぎょうし)すれば肉眼でうっすら見える)葉脈の様子がまったく違うので、共に見分けは可能だろう。
トチカガミの葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11
トチカガミの特徴的な葉脈(白線) 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11
なお通常は葉を水面に浮かべるが(水上葉(すいじょうよう))、水面が混雑してくると葉を水面よりも上に突き出す(気中葉(きちゅうよう))。トチカガミの水上葉の葉裏はぼこっと膨らんでおり、この気嚢(きのう、嚢は袋の意)が浮き袋の役目を果たしている。
トチカガミの水上葉裏にある気嚢 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11
トチカガミの気中葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11
水槽で密生しすぎている#トチカガミ 東京都調布市・神代植物公園生物多様性センター 2020/08/04
トチカガミの花
オモダカ(面高)の雌花を思わせる白色花弁三枚の花を、水中から突き出して咲く。花は単性で、両性花ではない。一日花。花径2.5cm~3.0cm程度。
トチカガミの雄花 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11 09:36
トチカガミの雄花 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11 09:33
トチカガミの雄花 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11 09:34
トチカガミの雄花の蕊 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11 10:05
トチカガミの雄花の萼 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/08/11 09:42
トチカガミの殖芽
秋になると茎や葉は枯れて腐るが、殖芽(しょくが)ないし越冬芽と呼ばれる芽だけはでろでろに溶けることなく若々しい状態で残る。これがタイムカプセルとなって水底に沈んで休眠し、翌春になると発芽する仕組み。育ちのかなり悪い小株でも二十個余りの殖芽を作ってからくたばったので、群生池の底にはそれは大量の殖芽が泥に埋もれて眠っているに違いない。
#トチカガミの殖芽 茅ヶ崎市浜之郷 2020/11/23
#トチカガミの殖芽 茅ヶ崎市浜之郷 2020/11/23
#トチカガミの発芽 茅ヶ崎市浜之郷 2021/03/03
#トチカガミの発芽 茅ヶ崎市浜之郷 2021/04/19
東京都調布市・#神代植物公園(植物多様性センター情報館西隣の水槽)、横浜市栄区・横浜自然観察の森(雄株のみか、葉は多いが花は少ない、移入とされている、アサザも)
#観音崎公園(花の広場とうみの子とりでの間の池、アマゾントチカガミと聞いていたがトチカガミが少数あった)、#大船フラワーセンター(グリーンハウス前コンテナ)?
海老名市中新田・相模川河川敷ワンド(釣り堀、平成22年(2010)アサザと共に発見=移入)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
「FLORA KANAGAWA NO.71」 神奈川県植物誌調査会発行(2010)
飯島市民の森から歩いて数分の所に、ワンワン池があります。
今では、県営住宅が建てられて、埋め立てのため小さくなりました。
昔は、大きさで十倍以上もあったというほどの灌漑池だったのです。
スイレンはありきたりに咲いていますが、ひょっとしたら、この花もあるかもしれない。
何せ、昔から存在していた池ですから、探しに行ってみようかと思います。