面高、沢瀉 オモダカ目/オモダカ科/オモダカ属 花期/7月~9月 結実期/10月~11月
学名/Sagittaria trifolia L.
自生種
オモダカの葉 茅ヶ崎市浜之郷・田んぼ 2018/08/16
主に浅い止水に生える多年草で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)の雌雄異花。湿地にもあるがほとんどはコナギ(小菜葱)などと共に水田雑草として田んぼに生え、水稲農家からしたらイネ(稲)の生育を阻害する迷惑雑草でしかないという扱いを受けている。湘南・鎌倉・三浦半島では田んぼあるところで普通種。ただし除草されやすい。川べりにも生える。湿生植物ないし抽水植物(ちゅうすい-、水底に根を張って水面より上に葉や花が突き出るもの)に分類される。
オモダカ 茅ヶ崎市西久保・湘南タゲリ米の里 2019/08/02
雌花が咲いたオモダカ 寒川町田端・田んぼ 2018/09/16
稲刈り後の田んぼで、雌花はもう実になり雄花が咲いているオモダカ 茅ヶ崎市行谷・田んぼ 2018/09/22
葉が矢じり形(V字形、Y字形にも見える)をしているのが大きな特徴。側裂片の先端が細く鋭くよく尖る。よく似た葉を持つものにアギナシ(顎無)というものがあるが、側裂片の先端があまり尖らずやや丸い。アギナシの自生地は神奈川県内では箱根町のみなので、身近なところには一切ないと考えて差し支えない。
オモダカの葉の特徴 大井町金手・田んぼ 2016/09/06
なお、あまり人目に触れることはないだろう沈水葉(ちんすいよう、水中葉)は、線形ないし細い箆(へら)形をしている。
オモダカの沈水葉 茅ヶ崎市西久保・湘南タゲリ米の里 2018/07/30
オモダカに似た姿ながら、概観は巨大、葉がサトイモ(里芋)さえ連想させるほど幅広、といった違いあらば中国から入ってきたという園芸品種のクワイ(慈姑)。かつて栽培されていたものの逸出が川べりや水路で見られる。
参考)クワイの葉 茅ヶ崎市浜之郷・小出川 2018/07/13
オモダカの花
花茎(かけい)を一本伸ばしてその先に花を付ける総状花序(そうじょうかじょ)と呼ばれるもの。下方で雌花がいくつか先に咲き、半歩遅れて上方で雄花がいくつか咲く。蕊が緑色なのが先に咲く雌花、黄色いのが遅れて咲く雄花である。花弁は白色。一日花であるため、複数の花が咲いているきれいな状態を見かける機会はあまりない。カモ(鴨)が踏みつけているのか、花茎はひしゃげていること多い。
オモダカの雌花(下)と雄花(上)の同時開花 藤沢市大庭・田んぼ 2018/09/12
オモダカの雌花 茅ヶ崎市浜之郷・田んぼ 2018/08/16
オモダカの雄花 茅ヶ崎市浜之郷・田んぼ 2018/08/16
オモダカの雌花 寒川町田端・田んぼ 2018/09/16
全体的な大きさはほぼ同じで、花が(蕊が緑色の)雌花しかなく、葉が箆(へら)のような形状をしていたら外来種のナガバオモダカ(長葉面高)だろう。
オモダカの実
雌花が咲き終わると、花径上方ではまた雄花が咲き続けている段階で実ができはじめる。ただし、九月に入ると田んぼでは稲刈りの下準備として徹底した除草が行われるため、オモダカもだいたいは抜き取られてしまうだろう。
オモダカの若い実 藤沢市大庭・田んぼ 2018/09/12
東京都八王子市・長池公園(#長池公園自然館(長池ネイチャーセンター)テラスにアギナシ=雑多に植えられた鉢植えで生育不良、第1デッキにアギナシ=藪まみれ・名板あり・7月中旬~8月上旬、共に数もなく観察不適)、横浜市戸塚区・舞岡公園(耕作体験田んぼ、葉の幅が広いので個体差かクワイと交雑か)
藤沢市大庭・引地川右岸の田んぼ(多数、除草されない)
箱根湿生花園(植生復元区にアギナシ、8月)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)