露草 ツユクサ目/ツユクサ科/ツユクサ属 花期/6月~9月 結実期/9月下旬~10月
学名/Commelina communis L.
薬用自生種改良種
ツユクサ 茅ヶ崎市・下町屋河畔公園 2018/09/24
林縁部、道端、農地周辺など、どこにでも生える一年草。いわゆる里山地域に多いか。湘南・鎌倉・三浦半島に自生するツユクサの仲間は本一種類のみ。加えて栽培ものの逸出と思われるマルバツユクサ(丸葉露草)、シマツユクサ(島露草)、シュッコンツユクサ(宿根露草)が、帰化植物として野良で散見される。もしかしたらホウライツユクサ(蓬莱露草)、カロライナツユクサ(かろらいな露草)あたりもあるかもしれない。とかなんとか言い出すと混乱してしまうが、その辺に生えているツユクサらしきものの99%は本種と考えてしまって構わない。別名ボウシバナ(帽子花)。
ツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
茎は強めに立ち上がり、直立もする。
茎が立ちあがったツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
葉は均整の取れた形。柄(え)はない。花がしぼんだ午後には葉も閉じ気味になる。(花がどうこうは関係なく)強すぎる日照を避けているのかも。
ツユクサの葉 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサの葉 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
ツユクサの葉の基部(鞘)=耳状の膨らみなし 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
人家周辺のツユクサには葉が長く伸びないものが多々あるがあれは何者か。茎が特に強く赤茶色に染まっているものが多いような、ただの気のせいのような。
葉が短いツユクサ 茅ヶ崎市萩園 2018/09/24
晩夏から初秋、傷み始めたツユクサの葉には斑(ふ)が軽く入ってみえる。
ツユクサの初秋の傷み始めた葉 寒川町田端 2018/10/03
トキワツユクサ(常磐露草)、背高になるムラサキツユクサ(紫露草)は外来の近似種。名前が紛らわしい。
ツユクサの花
花弁(内花被片)は三枚。丸っこく大きな二枚はすぐに目に飛び込んでこようが、じつは舌をぺろっと出したような形状で下向きの花弁がもう一枚ある。よおく見ないと視認できないが、花弁は三枚なのである。ふつう上向きの花弁二枚はしっかりとした青色で、下向きの一枚は白色。開花は朝で、午前中のうちにはしぼんでしまう一日花。時間帯が悪いのか青色がいけないのか蜜を出さないことがバレちゃっているのかはわからないが、ツユクサに飛んでくる昆虫は少ない。花径は2cm前後。
ツユクサ 藤沢市稲荷・引地川土手 2018/09/12
ツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサ、花径2.1cm 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサの下向きの花弁(白色矢印) 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサの花の構造は結構複雑。青色花弁は黄色いX字形雄蕊をよく目立たせ、X字形雄蕊はここに花粉や蜜がありますよ(実際はない)と昆虫に誇大広告を展開し、Y字形雄蕊は飛んできた昆虫に少量ながら花粉を餌として与えることで昆虫を花に引き留め、その間に地味なO字形雄蕊(これが本当の雄蕊)が昆虫の体にこっそり花粉を引っ付ける、という、誰が考えたのかは知らないがじつに巧妙な仕掛けとなっている。しかも花が閉じる際には雄蕊と雌蕊が接触することで念入りに自家受粉(じか-)まで行っているというから、相当な戦略家である。
ツユクサの花の構造 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
苞(ほう、花のすぐ下に付属する葉)は(ツユクサの仲間に共通して)閉じた状態。縁(へり)は合着していないので、人為的に広げてみることは可能(苞の中には気持ちの悪いガ(蛾)の幼虫やアブラムシ(油虫)が潜んでいることがあるので注意したい)。広げた苞は丸々太った心形(しんけい、ハート形)。苞外側は無毛。
ツユクサの苞 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサ 茅ヶ崎市浜之郷・小出川土手 2018/09/19
ツユクサの苞 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
ツユクサの苞の中の構造 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/17
苞外側に白色の毛がはえているものはケツユクサ(毛露草)という。一般的な視点で見るなら、分けて呼ぶほどの価値はない。
ケツユクサ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/08/27
花色が少し薄めのケツユクサ 鎌倉広町緑地 2017/08/24
花弁が縮れ黒っぽく模様が入ったケツユクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園北方の農地 2017/08/27
ツユクサの花の色
上向きの花弁二枚は、ふつうは明確な青色。ときに白。紫、薄紫、薄青紫、薄い青色のものも。白花ならばシロバナツユクサ(白花露草)、淡い青色ならウスイロツユクサ(薄色露草)と呼び分けることがある。薄色は単に”色が薄い”ことのみならず、古来”薄い紫色”を指す言葉であるため、はて、ウスイロツユクサの薄色が何色を指すのかはさっぱりわからない。
白や紫が変異で誕生しさえすればその中間色の登場は簡単なことと思えるので、本頁ではツユクサの花色の差異はただの個体差として処理したい。
農地周辺では特に妙な姿のツユクサに出遭うことがある。
ツユクサ(各色混生) 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
ツユクサ(薄い青色) 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
ツユクサ(極薄青色) 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
ツユクサ(ほぼ白色) 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
ツユクサ(紫色) 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサ(薄紫色) 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
ツユクサ(薄紫色) 横須賀市・塚山公園 2019/09/17
ツユクサ(白・薄紫・やや薄い青) 茅ヶ崎市萩園 2018/09/16
ツユクサ(白色) 茅ヶ崎市萩園 2018/09/16
ツユクサ(白色) 茅ヶ崎市萩園 2018/09/16
シュッコンツユクサと混生する場所に生えていた、O字形雄蕊が湾曲するツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサの特に花が大型な園芸品種はオオボウシバナ(大帽子花)ないしアオバナ(青花)と呼ばれ、栽培されることがあるらしい。が、見かけない。花弁がよく縮れるのが特徴。
ツユクサの実
夏の終わり、苞が茶色く変色してきた頃、苞に包まれた中で実が熟して裂開す。露出した黒っぽい種子は何らかの拍子に落下、または傷んだ方ごとぽろりと地面に落ちる。種子表面は梅干しのタネのようにしわしわないしでこぼこ。
ツユクサの実 寒川町田端 2018/10/03
ツユクサの完熟した実 寒川町田端 2018/10/03
ツユクサの種子 寒川町田端 2018/10/03
東京都文京区・#小石川植物園(分類標本園にオオボウシバナ)、東京都小平市・#東京都薬用植物園(7月10日頃 オオボウシバナ、染料香料植物区)、横浜市南区・#こども植物園(7月10日頃 オオボウシバナ)、東京都八王子市・#東京薬科大学薬用植物園(7月中旬~下旬 オオボウシバナ)
塚山公園(中央広場の休憩所側に薄紫)、鎌倉広町緑地(畑、湿地に色が薄めのケツユクサ)
散在ガ池森林公園周辺(滝ノ入隧道北側)、茅ヶ崎市柳島・しおさいの森
中井町・厳島湿生公園(水田の厳島神社側に白花、名板あり)
>林縁部、道端、農地周辺など、どこにでも生える一年草。いわゆる里山地域に多いか。
>茎は強めに立ち上がり、直立もする。
>人家周辺のツユクサには葉が長く伸びないものが多々あるがあれは何者か。
離れ島・山村振興法での「僻地」指定の谷戸(里山地域)に所在するので、自生し普通種です。
遠目では楚々たる風情を感じるが、
花は朝に咲き、昼にはしぼむので、庭では(茎が長く、直立し、鬱蒼とした草姿になる)野暮な雑草にしか感じられない。
しかも、成長すると根が頑強に張り、茎も頑丈になるため、男手でも容易には引き抜けない。
叢生して面倒なので、見つけ次第に引き抜いています。