島露草 ツユクサ目/ツユクサ科/ツユクサ属 花期/6月下旬~9月 結実期/10月
外来種駆除
シマツユクサ 寒川町田端 2018/09/17
日本では鹿児島以南の島々に自生があるという一年草。ツユクサの仲間。湿地に好んで生え、花がツユクサに比べて極端に小さく、花弁は明確に三枚視認できる。神奈川県内では帰化が確認された平成20年(2008)前後から地球温暖化の恩恵に乗っかってか急速に分布域を拡大させている国内外来種で、特に小出川流域にたいへん多い。上流域、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)周辺の市民農園などで栽培されていたものの種子が川の流れに乗って拡散したものと想像できる。川の水際、土手、ときにイヌ(犬)がひっかける小便以外これといった湿り気はなさそうな畑周辺で見つかることも。川の水を引いている田んぼで茂れば水稲農家には迷惑なしつっこい水田雑草になる。人が熱中症でばたばた倒れてゆくような猛烈に暑い炎天下が大好きなご様子。真夏に増殖するのだろう、真夏の始めより終わりの時期に多く目にする。
シマツユクサ 寒川町田端 2018/09/17
シマツユクサ 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/24
水の中にも生えるシマツユクサ 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里ビオトープ水田 2018/10/03
全体的には蔓植物のように地面を這い、花が草むらなどから露出し日の目を見る程度に茎先端を立ち上げる。草丈は低く、人の脛(すね)まで。
各葉腋(ようえき)からも根を伸ばすため、もしかしたら刈払い機で茎をざくざく切断すればするほど逆に数を増やしてしまう悪名高き特定外来生物ナガエツルノゲイトウ(長柄蔓野鶏頭)方式を採用している可能性。
シマツユクサの茎と各節から生えた根 茅ヶ崎市浜之郷・小出川土手 2018/10/03
新しい侵略的外来種なので(直接的に被害を被っている稲作農家などを除いて)認知度は低いだろうが、シマツユクサは生命力が強く猛烈に繁茂(はんも)するため、ただでさえ生きてゆける場所が少なくなってしまっている湿生植物や水田植物にはたいへんな脅威である。またこういった迷惑雑草の勢力が増せば増すほど田んぼに除草剤を撒く農家が増えるため、余計に在来の希少植物の減少に繋がってしまう。デンジソウ(田字草)なんかはもう絶滅一直線ではないだろうか。
畑(奥)とイネ刈り後の田んぼ(左手前)の間を埋め尽くしたシマツユクサ 寒川町田端 2018/10/31
葉はツユクサに似る。ツユクサ(のしっかり大きく成長した葉)よりはやや小さめでやや細めか。表面はすこしざらつき、葉裏はどちらかといえばつるっとした触り心地。花が咲き始めるまではツユクサと区別が付かないかもしれないが、ツユクサよりも立ち上がらず地べたに張り付くように這って横へ横へ広がってゆく傾向あり。ツユクサなんかはどこにでも大量に生えている雑草なのでツユクサの可能性があるものもろともことごとく引っこ抜いてしまっても問題ない。
シマツユクサの葉 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
シマツユクサの花
小さく、花径は1cm未満。6mmから8mmのものが多いか。花色は、肉眼では青色に感じる。ただししっかり青いツユクサと並べて比較すると、やや淡くわずかに紫がかった青色であったことがわかる。花弁は三枚。丸っこくてよく目立つ上向きのものが二枚、他のツユクサ類では小さすぎてあることになかなか気づけない下向きの一枚もシマツユクサでは大きめかつ同色なのではっきりと視認できる。
シマツユクサ 茅ヶ崎市萩園 2018/09/16
シマツユクサ 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
シマツユクサ 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
シマツユクサ 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/24
シマツユクサ 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/24
シマツユクサ、花径8mm 茅ヶ崎市浜之郷 2018/10/03
シマツユクサ(小)とツユクサ(大)の比較 茅ヶ崎市浜之郷・小出川土手 2018/10/03
花が小さく、ほぼ青色の三枚花弁、という点で、インド原産のカロライナツユクサ(かろらいな露草)とよく似ているので混同に注意。Y字形雄蕊の色が違い、シマツユクサは紺色(暗紫色)、カロライナツユクサは白色である。これに共に黄色い花粉が付着している。両者の見分けの決定打は種子表面の様子の違い(参考/カロライナツユクサとシマツユクサの種子)。なおカロライナツユクサは主に西日本で帰化が多いが、神奈川県内でも確認され始めているなので、もしかしたらもう二十年もすればそこかしこで見られるようになってしまうかもしれない。
苞(ほう、花のすぐ下に付属する葉)は(ツユクサの仲間に共通して)閉じた状態。先端はやや細長めに伸びる傾向あり。縁(へり)はツユクサ同様に合着しておらず、人為的に苞を(破ることなく)平開させることが可能。苞外側は無毛。
シマツユクサの苞 寒川町田端 2018/09/17
シマツユクサの苞 茅ヶ崎市萩園 2018/09/17
シマツユクサの苞(白っぽい玉は若い実) 茅ヶ崎市浜之郷・小出川土手 2018/10/03
シマツユクサの実
晩夏以降、苞が茶色くなってきたあたりで、苞に包まれた状態で種子が茶色っぽく熟して露出し、(ときに傷んだ苞もろとも)ぽろりと地面に落下する。種子の表面には網目状のでこぼこがあり、まるでアミガサタケ(編笠茸)の傘のような姿をしている。種子は2.5mmとか3mm程度の小さなものだが、肉眼でもかろうじてでこぼこを視認できるか。なおカロライナツユクサの種子表面はほぼ平滑。
シマツユクサの若い実(白っぽい玉) 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/24
シマツユクサの若い実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/24
シマツユクサのアミガサタケ状の種子(白色矢印) 茅ヶ崎市浜之郷・小出川土手 2018/10/03
シマツユクサのアミガサタケ状の種子(苞は人為的に広げた) 寒川町田端 2018/10/15
小出川(藤沢市遠藤~寒川町~茅ヶ崎市浜之郷)、寒川町田端(西久保橋北側の田んぼ、「神の倉」バス停東方の田んぼ)、茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里(ビオトープ水田、新湘南バイパス側、茅ヶ崎養護学校北側の田んぼ)、茅ヶ崎市萩園・十二天神社入口バス停(東側の畑周辺、平成30年(2018)晩夏に刈払われたため種子未確認)
藤沢市大庭(平成30年(2018)10月2日 引地川流域の田んぼに一切の帰化なし)
中井町・「中井町役場入口」交差点(周辺一帯の田んぼ)
参考資料
『FLORA KANAGAWA No.67』 神奈川県植物誌調査会発行(2008)
mirusiruさん、返信をくださりありがとうございます。
いままで花繋がりのご縁を様々な方からいただき、この度は小出川繋がりのmirusiruさんとのご縁。。
これからも大切に…と思っていますので、よろしくお願いいたします。
小出川のヒガンバナがなければ、シマツユクサという花やまだ見る機会のないカロライナツユクサの存在を知ることは無かったと思います。
やはり人との出会いと同じ一期一会ですね。
花調べの掲示板での丁寧で分かりやすいコメントや、わざわざ種子の捜索までしてくださったこと、ほんとうにうれしく感謝申し上げます。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。