宿根露草 ツユクサ目/ツユクサ科/ツユクサ属 花期/5月末~11月上旬
学名/Commelina erecta L.
外来種駆除稀少
シュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
熱帯アメリカなどを原産とする多年草。ツユクサの仲間で、群生する。宿根は、宿根草の宿根。冬などに地上部が枯れても土の中に宿った根は生き続けておりまた地上部が生え出てくるもの、つまり常緑でない多年草という意味。『神奈川県植物誌2001』に誤って「ホウライツユクサ」として掲載されていたのは本種。ホウライツユクサ(蓬莱露草)は一年草で根茎がなく、O字形雄蕊の花糸(かし)は直線的。シュッコンツユクサは多年草で根茎があり、O字形雄蕊の花糸は湾曲し、花は(ツユクサの仲間としては)非常に大きい。神奈川県内ではなぜか藤沢市(※後述)と二宮町の狭い二地点でのみ帰化が確認されており、分布域の拡大は特にみられない。二宮町のものは昭和32年(1957)の標本があるというのでなかなか居候歴は長い。
シュッコンツユクサの群生地、左は西湘バイパスと相模湾 二宮町・湘南二宮霊園管理棟前 2018/09/18
シュッコンツユクサの群生地、左が西湘バイパスと相模湾 二宮町・梅沢海岸駐車場 2018/09/18
シュッコンツユクサの群生 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサの群生 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサの群生とバーベキュー客が不法投棄したゴミ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
茎は草むらに埋もれて確認しづらいが、草地の中にあっては日光を求めてすっくと立ちあがる傾向が強い。競争相手がいない開けた場所では自重で倒れ地面を這い、茎途中の節からも根を出す。花が大きい割に、茎は(ツユクサよりも)細め。草丈は人の踝(くるぶし)、草地で人の脛(すね)から膝(ひざ)くらい。
茎が立ちあがるシュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
這ったのち斜上(しゃじょう)したシュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
葉は明確に細く長い。ササ(笹)の葉と混生していると見紛(みまが)いそうになるほど。葉の基部(葉鞘(ようしょう)の上端)は耳形に膨らむ(若い葉では耳が確認できないものもある)。葉の表面はざらっと、裏はつるっとした触り心地。
シュッコンツユクサの葉 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ササと混生したシュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサの葉 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサの葉の基部にある耳(白色矢印) 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
マルバツユクサ(丸葉露草)同様、花が咲き終わったあとの真昼間は葉を閉じる。
シュッコンツユクサの昼間の閉じた葉 二宮町・梅沢海岸 2019/08/03 12:55
しっかり根を張るのでひょいと引っこ抜くことはできない。
掘り返された#シュコンツユクサ 茅ヶ崎市浜之郷 2019/10/28
シュッコンツユクサの花
とにかく大きく、花弁が左右に広がり気味で特に大きく見える花は花径4.5cmもあった。これはシュッコンツユクサ一枚の花弁の中にふつうのツユクサの花全体がすっぽり収まってしまうサイズで、ツユクサの園芸種オオボウシバナ(大帽子花)とほぼ同等の大きさである。花弁は扇子形のものが二枚、のみに見えるが、舌をぺろっと出したような形の小さな花弁が下向きにあるので、計三枚。花色はやや薄紫色。しっかり青色をしているツユクサと並べて比較するまでもなく気づける程度に薄紫色(下向きの小さな花弁も同色)。ツユクサの仲間なので開花は朝のうちだけ。見頃は朝七時(晩夏は六時)から十時。秋口の肌寒い曇天日は午後まで花を保っていることがある。
シュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサ、花径4.5cm 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
ツユクサ(小・青色)とシュッコンツユクサ(大・薄紫色)の比較 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
前述の通り、O字形雄蕊が湾曲するのも大きな特徴。パオーンという鳴き声が聞こえてきそうなほど、まるでマンモスの牙のような姿をしている。
上から見たシュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサ 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
苞(ほう、花のすぐ下に付属する葉)は(ツユクサの仲間に共通して)閉じた状態。縁(へり)が合着しており、漏斗(ろうと)状。人為的に苞を開こうとすると合着部分が破ける(破らずには開けない)。苞外側は有毛。
シュッコンツユクサの苞 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサの苞 二宮町・梅沢海岸 2018/09/18
シュッコンツユクサの花は極めて変異が大きいらしいが、梅沢海岸にあった花はみな同じような形と色であった。花弁に皺(しわ)がやや多いものがあったのは開花時間の問題(花弁が完全に開ききっていないだけ)でしかないような気がする。一つの苞から同時に二つ花が咲いているものは見当たらなかった。なお一つの苞の中には種子が三つできるため、花も三つ(順に)咲くのだろう。
霊園内に白花があったので、ツユクサの例に倣(なら)ってシロバナシュッコンツユクサ(仮名)としておく。
シロバナシュッコンツユクサ 二宮町・湘南二宮霊園 2018/09/18
シロバナシュッコンツユクサ 二宮町・湘南二宮霊園 2018/09/18
シュッコンツユクサの実
緑色の実が熟して黒っぽい種子が露出し、ぽろりと落ちる。苞一つの中には種子は三つ出来る。
シュッコンツユクサの実 二宮町・梅沢海岸 2019/08/03
シュッコンツユクサの未熟な実(緑色)と種子 二宮町・梅沢海岸 2019/08/05
種子は冬を越す必要はなくじきに発芽し、それから一ヶ月もたてば開花に至る。
#シュッコンツユクサの芽生え 茅ヶ崎市浜之郷 2019/08/20
#シュッコンツユクサの若葉、基部に耳はまだない 茅ヶ崎市浜之郷 2019/08/29
二宮町・梅沢海岸(PLAZA Marine にのみや(アパート)前、湘南二宮霊園内に白花=一株のみか、湘南二宮霊園管理棟前の西湘バイパス北側一帯~梅沢川左岸の駐車場陸側の縁(へり)に多数 ※無数に湧き出るヒトスジシマカ(ヤブカ)対策を、梅沢川右岸にはない)
藤沢市宮前・#第5号市民農園周辺(湘南ヘルスイノベーションパーク(略称湘南アイパーク・旧武田薬品工業湘南研究所)のJR東海道本線を挟んで南向かい・神戸製鋼所藤沢工場西隣、平成30年(2018)9月下旬 なし、令和元年(2019)7月中旬 なし=滅失か、外来種・園芸種が多様に植えられている市民農園なのでその放置ないし周囲にこぼれたものでしかなくそもそも帰化と呼べる状態ではなかった疑いを指摘しておく・要するにただの栽培品、『神奈川県植物誌2018』では除外された)、#二宮町山西(「吾妻神社入口」交差点北)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
『増補改訂 日本帰化植物写真図鑑 第2巻』 植村修二・勝山輝男・清水矩宏・水田光雄・森田弘彦・廣田伸七・池原直樹編・著 全国農村教育協会発行(2015)
『神奈川県植物誌2001』 神奈川県植物誌調査会編集 神奈川県立生命の星・地球博物館発行(2001)
こんばんは。
ありがとうございます。
白花シュッコンツユクサの写真を拝見した時に、雄しべの葯の部分に青い色が見えましたので藤沢の淡色とよく似ていると思いました。藤沢の淡色も暑いと真っ白な花が咲きますが、雄しべの花糸に青い色がかすかに残ります。普通にあるツユクサ( communis)の白花は真っ白です。
藤沢で挿し穂を採取してきた方によると、その場所からは近いうちにツユクサはなくなってしまうかもしれないということでした。開発等によるものと思っていました。『神奈川県植物誌2018』では記載されていないということでしたので、納得しました。
淡色のシュッコンツユクサの挿し穂(15cmほど)を3本いただき木製プランターに挿し木したところ、半年ほどたって植え替えようとしたところ抜くことが出来なくプランターのくぎを抜き分解しました。根が固まってプランターの形になっていました。これほど根が張るとは驚きでした。
シュッコンツユクサは神奈川県にのみ帰化していると思っていましたが、大阪のブログの友人が大阪で咲いているのを見つけました。神奈川と比べ花は小さく2,5cmほどです。
栽培されるのでしたら藤沢と大阪のをお送りしますのでメールで連絡ください。