仙人草 キンポウゲ目/キンポウゲ科/センニンソウ属 花期/8月中旬~9月中旬 結実期/10月中旬~11月 紅葉/12月~2月
学名/Clematis terniflora DC.
有毒薬用自生種保護
センニンソウ 葉山町上山口 2017/08/24
林縁部などに生える蔓性の多年草。木質化もするようである。湘南・鎌倉・三浦半島では緑地が残る丘陵地周辺で見ることができ、特に三浦半島に多い。嫌われ者の蔓植物であるがゆえか花がきれいであるにもかかわらず盗掘の被害に遭っている様子はなく、意外にもしぶとくあちこちに生えている普通種。箱根にはたいへん多いので、避暑で訪れた際には確実に目にできるのでは。
満開の#センニンソウ 横浜市南区・横浜市こども植物園 2024/09/10
センニンソウの秋に出た若葉 大磯町・高麗山公園 2020/11/18
センニンソウの、センニンソウらしからぬ若葉 大磯町・高麗山公園 2020/11/18
近似種にボタンヅル(牡丹蔓)、コボタンヅル(小牡丹蔓)、コバノボタンヅル(小葉の牡丹蔓)がある。見分けのポイントは葉の生え方と形状(と、蕾の形状、花の形状と花数)の違い。見分けは難しいものではなく、ある程度見慣れてしまえば瞬時に判断できる程度の難易度。
センニンソウの葉は、小葉(しょうよう)がふつう五枚(ときに三枚ないし七枚)の奇数羽状複葉(茎から分岐した柄の先に”小葉3枚×1セット、+2枚”の計5枚の葉が付く)。小葉は鋸歯ない全縁(ぜんえん)。
センニンソウの典型的な葉(3+2=5枚) 逗子市・池子の森自然公園 2017/08/27
実際のところは葉柄(ようへい)がぐにゃっと曲がって変形し、ごちゃごちゃごちゃっと絡み合いながら藪を形成している。葉柄が曲がっているのは、何かに絡みついていた名残り。葉柄がくるくるっと丸まって、プロレス技のヘッドロックをするようにして何かに掴みかかり自身を固定する。
センニンソウのごちゃついた葉 平塚市高根・湘南平への登坂路沿い 2017/08/19
海辺に分布するセンニンソウはハマセンニンソウ(浜仙人草)と呼ばれる変種である。とかいう話はまったく聞いたことはないが、沿岸部で強烈な海風に晒されているセンニンソウには確かに葉が硬くなり縁(ふち)はよく縮れる傾向がみられるものがある。のちのち変種として扱われるようになるかもしれないが、センニンソウは個体差が結構あるのでそうはならないかもしれない。
センニンソウ(海岸型) 三浦市・黒崎の鼻 2017/08/29
センニンソウ(海岸型) 三浦市・黒崎の鼻 2017/08/29
センニンソウ(海岸型) 三浦市・黒崎の鼻 2017/08/29
センニンソウ(海岸型) 三浦市・黒崎の鼻 2017/08/29
センニンソウ(海岸型)の硬い葉 三浦市・黒崎の鼻 2017/08/29
センニンソウ(海岸型)の硬い葉 三浦市・黒崎の鼻 2017/08/29
乾燥すると黒っぽく変色するフジセンニンソウ(富士仙人草)なるものが、神奈川県内では丹沢などの山地にあるらしい。乾くと黒変する以外は、センニンソウと目立った違いは感じられないという。
センニンソウ属に分類される植物を総称して、その学名からクレマチスという。センニンソウやボタンヅルの仲間は花は少々小さいためにクレマチスとして知られている外国産のものに比べれば見劣りしてしまうかもしれないが、日本に自生している和製クレマチスである。
センニンソウの花
四枚の白色花弁(のように見える萼片)と蕊(しべ)が清楚で美しい。花弁は蕊の長さより明らかに長く(長さには個体差あり)、花が(コボタンヅルに比べれば)大きく豊かに見える。蕾は先端がやや尖っている。
#センニンソウ 横浜市南区・横浜市こども植物園 2024/09/10
センニンソウ 平塚市高根・湘南平への登坂路沿い 2017/08/19
センニンソウ 箱根町・湖尻園地 2017/10/27(咲き遅れ)
少し離れた場所から花を見るとほぼ真っ白に見えるのがセンニンソウ。ボタンヅル系はちょっと黄色っぽい感じがする。
センニンソウ 葉山町上山口 2017/08/24
センニンソウの実
冠毛が仙人の髭(ひげ)のようでおもしろい。種子(のように見える痩果(そうか))は思いのほか軽量なので、強い風に吹かれればふわふわっと風に乗って遙か遠くまで飛んでゆくことができる。
センニンソウの実 葉山町上山口 2017/11/05
まだ完熟していないのではないかと思われるような明るい茶色の状態で風に飛ばされ少しずつなくなってゆく。
センニンソウの実(背景の山は三浦アルプス) 葉山町上山口 2017/11/05
センニンソウの実 葉山町上山口 2017/11/05
センニンソウの実 箱根町・湖尻 2017/11/17
センニンソウの熟していると思われる実 平塚市八幡・相模川 2018/11/25
センニンソウの熟していると思われる実 平塚市八幡・相模川 2018/11/25
センニンソウの熟していると思われる実 平塚市八幡・相模川 2018/11/25
枝はよく分岐して花や実をたくさん付けるが、柄(え)が揃いも揃って真上を向くのがセンニンソウの特徴。
センニンソウらしい、よく分枝し上向きに伸びる様子 小田原市早川 2018/12/01
センニンソウの紅葉
センニンソウは常緑だという記述を方々で見かけるがどうだろう。綿密に観察した例(ためし)はないのでいい加減な話ではあるが、センニンソウの葉は冬は(少なくとも神奈川県南部においては)基本的にはおよそ枯れて落ちる。但しすべてが枯れるわけではなく、真冬にも青々とした葉を少数見かけることは確かにある。半常緑といったところか。なおごく一部は紫色に変色することもある。かなり色濃くて目を見張る。
センニンソウの真冬でも青々とした葉 鎌倉市・建長寺 2024/01/09 暖冬
地面を這ったセンニンソウの紅葉 二宮町・吾妻山公園 2021/01/21
地面を這ったセンニンソウの紅葉 二宮町・吾妻山公園 2021/01/21
センニンソウの紫色に染まった紅葉 逗子市・長柄桜山古墳群 2019/01/24
センニンソウの、紫色に染まった、あるいは黄色く枯れた葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2019/02/01
葉山町上山口(棚田の西、棚田の上)、池子の森自然公園、衣張山公園、#東慶寺、#光則寺
天神島臨海自然教育園、長柄桜山古墳群(長柄交差点分岐~第2号墳)、宅間ガ谷、鎌倉広町緑地、極楽寺坂切通、平塚市八幡・相模川沿い(湘南銀河大橋南側・農地内を走る土手上通路沿い)、平塚市高根・湘南平への登坂路沿い(「湘南平富士見」バス停付近に少数)、高麗山公園(高田公園~楊谷寺谷戸分岐)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
飯島市民の森でも、咲いていました。
ツルボもそうですが、この時期はミゾソバも咲いてきます。
秋の野草がきれいです。