リンドウ

竜胆 リンドウ目/リンドウ科/リンドウ属 花期/10月下旬~11月 結実期/12月~1月
学名/Gentiana scabra Bunge var. buergeri (Miq.) Maxim. ex Franch. & Sav.

薬用自生種改良種稀少保護

リンドウ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06

#リンドウ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06

乾燥しない半日陰の林床や低草地に生える多年草。一本の茎を直線的に長く伸ばし、立ち上がることもあるが、大抵は花の自重で倒れ地面すれすれを這うような姿になる。神奈川県内では広く分布がある普通種、だったはずであるけれど、人目に触れる機会が多い場所のものであればあるほど姿を消してゆく傾向。盗掘も多ければ、地球温暖化も含めて生育環境の不適合が招いている事態と思われる。湘南・鎌倉・三浦半島では今となってはかなりの希少種。自生地ではそこにリンドウが生えていることさえひた隠しにするようにさえなってきてしまった。丹沢や箱根といった山地に紅葉(もみじ)狩りに訪れた際には、やや人目に付きにくいひょんな草地にリンドウがたくさん生えていて驚かされるに違いない。鎌倉の寺境内でもよく栽培されているので観光客には馴染み深い花だろう。本来のリンドウらしからぬ姿や花色をした園芸種の鉢物が、市場に流通するのは晩夏から初秋にかけてが主。母の日(5月の第2日曜日)のカーネーションがごとく、敬老の日(9月の第3月曜日)に向けて出荷されてくる。なぜ敬老の日にリンドウを贈るのかは、あれこれ調べたがどれもしようもない無理矢理なこじつけばかりが挙げられていて正確な理由はわからなかった。旧暦の9月中旬はちょうどリンドウが咲いている頃だった季節感的にちょうど良い、という理由が一番な気もするし、園芸業界が仕掛けただけの話かもしれない。なお店頭にまだ夏の暑さがばりばり感じられるうちから早出しされて並んでいる鉢物は栽培難易度が極めて高く、買ってもふつうは(花を楽しむ前に)傷んで終わるので要注意。なんなら売り場にあるうちから既に、蕾は黒く腐り始めていたりすることも多々。じつは園芸栽培向けのリンドウの生産地は断トツで一位が岩手県、かなり引き離されて二位秋田県、三位山形県と、いずれも東北地方が占めている。寒冷な地方の温度管理の行き届いたビニールハウス内で栽培して強引に蕾を付けさせて、急いでトラックで運んで、神奈川県のまだ猛烈に暑い夏場の売り場に並べる、という無茶なことをやっているので、環境の変化に耐えられずして花(や葉)がたちまち傷んでしまうのである。リンドウを買うなら、暑さが和らいだ(近年は地球温暖化の影響で10月まで十分暑いが)秋に入ってからの方が断然良い。但しその頃にはもう傷んだものしか店頭には並んでいないだろうけれども。またリンドウの花は陽の光を浴びて開くので、晴れた日の昼間に、元気に咲いている株を選ぶこと。

低草地に野生したリンドウ 箱根町元箱根・白百合台園地 2022/10/27

低草地に野生したリンドウ 箱根町元箱根 2022/10/27

野生のリンドウ 箱根町元箱根・箱根ビジターセンター周辺 2022/10/27

野生のリンドウ 箱根町元箱根 2022/10/27

リンドウは神奈川県内では、鎌倉市の市の花、南足柄市の市の花、に制定されている。

鎌倉市のササリンドウ

鎌倉市の市章(市のシンボルマーク)がササリンドウ。昭和27年(1952)制定。鎌倉市内でよく目にする意匠なので観光客にもお馴染みだろう。五枚の葉の上にリンドウの花を三つあしらったもの。葉はササの葉ではなく、ササの葉のように見えるリンドウの葉である。つまり、ササリンドウはササとリンドウを模したデザインではなく、あくまでもリンドウだけを描いた図柄である。ちなみに、ササが茂るような場所にはリンドウは生えない。


源頼朝の笹竜胆

鎌倉市がササリンドウを市章としている理由は、笹竜胆紋が鎌倉幕府を開いた源頼朝の家紋であると考えられていたから。ただしあくまでも”イメージ(俗説)”。源頼朝(河内源氏)が笹竜胆紋を使用した史料は一切得られておらず、「源平合戦図屏風」などに見られる源氏方の旗は白一色である。村上源氏(ないし清和源氏)が笹竜胆紋を用いていたことからすべての源氏が同紋を使用したものとの俗説が生じたようだが、よくわからない。ただの白い布じゃあ面白くねえ見栄えがしねえ格好がつかねえと、江戸時代に流行した歌舞伎の演目で脚色されたイメージが広く庶民の間に根付いたのかもしれない。なお村上源氏の笹竜胆と鎌倉市市章のササリンドウは意匠が若干異なっている。

リンドウは変異が多く、葉は幅広なものからやや細いものまで。

野生のリンドウの茎上部の葉 箱根町元箱根・白百合台園地 2022/10/27

野生のリンドウの茎上部の葉 箱根町元箱根 2022/10/27

全体的な姿が少しばかり似ているホトトギス(杜鵑草)や花色が類似したキキョウ(桔梗)と混同せぬよう。

リンドウの花

花色はふつうやや紫がかった青。見頃はイエギク(家菊)とほぼ同期。

野生のリンドウ 箱根町元箱根・白百合台園地 2022/10/27

野生の#リンドウ 箱根町元箱根 2022/10/27

野生のリンドウ 箱根町元箱根・白百合台園地 2022/10/27

野生の#リンドウ 箱根町元箱根 2022/10/27

リンドウの蕾 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/11/15

リンドウの蕾 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/11/15

リンドウの蕾 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#リンドウの蕾 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

リンドウ 鎌倉市・海蔵寺 2021/11/20

#リンドウ 鎌倉市・海蔵寺 2021/11/20

リンドウ 鎌倉市・海蔵寺 2021/11/20

#リンドウ 鎌倉市・海蔵寺 2021/11/20

リンドウ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#リンドウ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

リンドウ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/11/15

リンドウ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/11/15

リンドウ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/11/15

リンドウ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/11/15

リンドウ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/11/15

リンドウ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/11/15

リンドウの萼 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#リンドウの萼 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

栽培されているものは園芸種である可能性。本種の系統であるササ系、花がぱっと開かないエゾリンドウ(蝦夷竜胆)の系統であるエゾ系、両者の交配種がある。花色はピンクのものも。ホームセンターでリンドウとして一般的に販売されているものと野生のリンドウでは、かなり草姿が異なっている。

リンドウの園芸種 箱根湿生花園・企画展 2023/11/21

#リンドウの園芸種 箱根湿生花園・企画展 2023/11/21

リンドウの実

ぱかっと口を開けた袋の中に長さ1mmしかない(何かのかすにしか見えない)種子が大量に収まっている。

リンドウの実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2019/02/01

リンドウの実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2019/02/01


横浜市戸塚区・#舞岡公園(小谷戸の里)、横浜市栄区・横浜自然観察の森(令和3年(2021)管理が行き届いておらず激減)

#覚園寺(愛染堂前庭)、#報国寺(山門入って右手の苔に)、#東慶寺、#海蔵寺

鎌倉市山ノ内・#山田海人(山田稔)邸(明月院通り沿い、鎌倉自生という・花期に自邸庭公開も)、#大船フラワーセンター(森の小道に少々)

#箱根湿生花園(園内に点在=ノギク咲き終わった11月は唯一咲き残る、秋の企画展に園芸種多い)

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キキョウ