エゴマ

荏胡麻 シソ目/シソ科/シソ属 花期/9月中旬~10月 結実期/10月下旬~11月
学名/Perilla frutescens (L.) Britton var. frutescens

食用

エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/09/29

#エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/09/29

東南アジア原産という一年草で、元は人が栽培してきた農作物(のうさくぶつ)。古い時代に日本へ入ってきたため在来種の扱いになったりもする。葉が食用になり、種子からは油が採れる。鎌倉市・荏柄天神社(えがら てんじんしゃ)のある地は奈良時代(710-794)には荏草郷(えがや ごう)といったことからの転訛(てんか)。エゴマの生産農園が広がっていたのかもしれない。全体的な姿はアオジソ(青紫蘇)に似ているがアオジソでない、といった感じのもの。学術的には両者は変種の関係に位置付けられており、容易に交雑もするらしい。イラクサ科のカラムシ(苧)にも似ているか。搾油(さくゆ)向けだったと思われ昔はよく栽培されていたようであるが、油は安価なサラダ油(ゆ)が流通するようになり葉の風味も現代の日本人の口にはまったく合わないため、意図的に栽培されることは現在では滅多にない。但し、栽培されていた名残の逸出が神奈川県内に広くある。直射日光が当たり過ぎない、半日陰ないし明るい日陰の乾燥しないやや湿りがちな場所、がお好みらしい。県北部では林道沿いでまま見かける。ニホンジカ(日本鹿)も食べないらしい。

エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/08/27

#エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/08/27

葉は対生。シソのようには極端に薄からず、シソのようには縮れず。揉んでみればシソの香りも立たない上、ひと癖ある青臭さが漂う。エゴマの葉はスーパーマーケットでも売られていることがあるが、この青臭さが日本人好みではないためシソに比べれば格段に人気なし。韓国人は焼肉と一緒にこのエゴマの葉を食べているらしい。「ゴマの葉」と称して売られていたりもするが、韓国云々の説明書きあらばゴマ(胡麻)ではなくエゴマの葉である。

エゴマの葉 茅ヶ崎市・清水谷 2017/08/27

#エゴマの葉 茅ヶ崎市・清水谷 2017/08/27

葉身の基部側四分の一に鋸歯(きょし)がないこと。葉柄付近までびっしり鋸歯があったら希少種トラノオジソ(虎の尾紫蘇)である疑い。

エゴマの葉 茅ヶ崎市・清水谷 2017/08/27

#エゴマの葉 茅ヶ崎市・清水谷 2017/08/27

葉を揉むと爽やかなレモン(檸檬)の香りがするとされるレモンエゴマ(檸檬荏胡麻)なる近似の別種ないし変種あり。ところがエゴマにもレモン臭がするものが結構あって紛らわしい。エゴマは人に栽培されてきたものなので品種の違いがあるのか、はたまた雑種なのか、よくわからないが、いずれにせよエゴマとレモンエゴマを見分ける判断材料として”レモン臭がするかしないか”を基準にしてはいけないのは確か。『神奈川県植物誌2018』に従って、茎に短毛と縮れ気味の長毛が疎生(そせい)し、苞(ほう)が幅狭で緑色なのが、エゴマ。茎に下向きの短毛が密生し、(花序下方の)苞が幅広で白っぽいのが、レモンエゴマ。としておく。

エゴマの花

花序は葉脈にも付くが茎先端に突き出たものが印象的。シソのような姿である。花色はふつう白。生育環境により花期は少しずれが出るが、見頃はおよそ9月下旬ないしその前後。

エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/09/29

#エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/09/29

エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/09/29

#エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/09/29

エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/09/29

#エゴマ 茅ヶ崎市・清水谷 2017/09/29

エゴマの実

完熟した実の種子からは食用油の「えごま油」が採れる。α-リノレン酸を多く含んでおり、動脈硬化や心疾患を予防する、あるいは老化防止になる、認知症を予防する、ダイエット効果があるなどと謳われて、昨今は健康食品としての人気が高まっているようだ。えごま油は酸化しやすいため、加熱はしない(サラダにかけるなどの)生食用。えごま油にはエゴマ特有の臭みは一切なく、味はまろやか。オリーブオイルより使い勝手は良好。お高いが。


水間神社周辺、小網代の森、逗子市・池子の森自然公園、#清水谷(10月下旬に「清水谷を愛する会」が収穫)

茅ヶ崎市萩園・相模川沿い(茅ヶ崎市屋内温水プール駐輪場西側の林縁部・オオブタクサより外側でコセンダングサに混じって)

秦野市・戸川林道(竜神の泉付近の林道沿い)、小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース(シキミ畑向かいのやや南方道端午後)

※一年草なので生え出る場所は安定しない。

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

『鎌倉の地名由来辞典』 三浦勝男編 東京堂出版発行(2008)

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

シソ