ヌスビトハギ

盗人萩 マメ目/マメ科/ヌスビトハギ属 花期/8月下旬~9月上旬 結実期/9月~10月
学名/Hylodesmum podocarpum (DC.) H.Ohashi & R.R.Mill subsp. oxyphyllum (DC.) H.Ohashi & R.R.Mill var. japonicum (Miq.) H.Ohashi

危険自生種

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/26

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/26

丘陵地などの林内やハイキングコース沿いに生える多年草。背丈はときに1mを超える大型の野草で葉も豊かだが、長く伸びた茎に付く花はかなり小さい。遠目にはミズヒキ(水引)か何かか、それにしては葉がもしゃもしゃと生えすぎているような気がする、近くに寄って花を見るならハギっぽい何かのように思えるが、それにしては枝垂れ感が特にないし花も小さすぎて見栄えがしない、といった印象を受けるだろう。一本ぽつりと生えているのではなく、群落を形成するのも特徴。単発で生えていて小花がある程度の大きさあらば同属のフジカンゾウ(藤甘草)である疑い。湘南・鎌倉・三浦半島では丘陵地周辺に普通種。どこにでもあるわけではないが、珍しいというほどのものでなし。市街地にはない。花の観賞価値が高くないため一般人には刈払いされやすく、大型で存在そのものはよく目立つものなので公園内では保護される傾向にある。晩夏を代表する野草の一つ。

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2019/09/06

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2019/09/06

ヌスビトハギ 鎌倉市・寿福寺前 2019/08/27

ヌスビトハギ 鎌倉市・寿福寺前 2019/08/27

ヌスビトハギの葉は互生で、三出複葉(さんしゅつふくよう)(茎から分岐した柄の先に”小葉が先端に1枚+脇に1対=計3枚”の葉が付く)。茎の下部のみならず上部にまでまんべんなく葉が付いていること。茎下方の一ヶ所からまとまって葉が出ているだけならヤブハギ(藪萩)ないしケヤブハギ(毛藪萩)である疑い。

ヌスビトハギの葉 鎌倉市・寿福寺前 2019/08/27

ヌスビトハギの葉 鎌倉市・寿福寺前 2019/08/27

ヌスビトハギの葉 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/26

ヌスビトハギの葉 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/26

ヌスビトハギの葉 茅ヶ崎市・清水谷 2019/09/06

ヌスビトハギの葉 茅ヶ崎市・清水谷 2019/09/06

頂小葉(ちょうしょうよう)が、より先端に近い方が最も幅広だったらマルバヌスビトハギ(丸葉盗人萩)という。タンキリマメ(痰切豆)を思わせる形状の葉である。

ヌスビトハギの、マルバヌスビトハギに近い形状の葉 茅ヶ崎市・清水谷 2019/09/06

ヌスビトハギの、マルバヌスビトハギに近い形状の葉 茅ヶ崎市・清水谷 2019/09/06

ヌスビトハギの花

花はたいへん小さく、薄紫色。ハギに引けを取らない、女性好みのかわいらしさが感じられる。

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/26

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/26

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2019/09/06

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2019/09/06

ヌスビトハギ 鎌倉市・広町緑地 2017/08/24

ヌスビトハギ 鎌倉市・広町緑地 2017/08/24

花に模様はこれといってない。

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/26

ヌスビトハギ 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/26

人間目線からは花の後ろ姿ばかりが見えるのみだったりする。

上から見たヌスビトハギ 鎌倉市・寿福寺前 2019/08/27

上から見たヌスビトハギ 鎌倉市・寿福寺前 2019/08/27

ヌスビトハギの実

花が終わるとたちまち実ができる。果実はふつう二つ(ときに三つ)の小節果からなるため、妖怪目目連(もくもくれん)の目のような形状をしている。花の姿からはまったく想像できないおもしろい形状。

ヌスビトハギの実 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/31

ヌスビトハギの実 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/31

ヌスビトハギは知らなくても、この実なら見たことあるという人も多いのでは。いわゆるひっつき虫の一種で、ふとズボンを見やるとこの実がびっしりくっついていて面倒なことに──。実の表面がマジックテープ仕様になっており、衣服によく貼り付いてしまう。

ヌスビトハギの実 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/31

ヌスビトハギの若い実 茅ヶ崎市・清水谷 2016/08/31

ヌスビトハギの若い実 鎌倉中央公園 2017/09/19

ヌスビトハギの若い実 鎌倉中央公園 2017/09/19

ヌスビトハギという何やら誤解を受けそうな妙な名前は、実の形状が泥棒の”足跡”に似るからだとされる。はてさてこの実のどこをどう見れば足跡となるか、よくわからない。本種の名前の由来には様々な憶測が飛び交っているが、もしかしたら実がひっつき虫(地方により泥棒草と呼ばれる)だからなのかもしれない。

ヌスビトハギの若い実を盗人っぽくしてみた 鎌倉中央公園 2017/09/19

ヌスビトハギの若い実を盗人っぽくしてみた 鎌倉中央公園 2017/09/19


神武寺(表参道)、寿福寺(前の水路に)、鎌倉中央公園、新林公園(川名大池手前、アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)と混生)、清水谷

秦野市・葛葉緑地(マルバなし)

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

アレチヌスビトハギ

フジカンゾウ

ヤブハギ

藪萩 マメ目/マメ科/ヌスビトハギ属 花期/8月下旬~9月上旬 結実期/9月~10月

自生種稀少保護

ヌスビトハギ(盗人萩)の変種という。ヌスビトハギに比べて小型で、葉は地面に近い茎の下部にしか生えないのが特徴。葉は先端がヌスビトハギよりもちょっとだけ長く伸びる傾向。日当たりのよくない林床にひっそり単発で生えていることが多いか。滅多に見かけるものでなし。

ヤブハギ 横須賀市・衣笠山公園 2017/09/05

ヤブハギ 横須賀市・衣笠山公園 2017/09/05

同様に葉が地面近くの茎下部に集中して生え、小葉は幅広でボリューム感があり、全体的に細かい毛が多く生えていたらケヤブハギ(毛藪萩)である疑い。


衣笠山公園宅間ヶ谷