姫禊萩 フトモモ目/ミソハギ科/ヒメミソハギ属 花期/8月中旬~10月 結実期/10月~11月
自生種稀少保護
ヒメミソハギ 開成町延沢(のぶさわ) 2023/10/07
田んぼなどの湿地に生える一年草。名はミソハギに似ているも小型でかわいらしいものの意。畦(あぜ)の上ではなく浅く水が張った中に生え出て、アゼナ(畔菜)やキカシグサ(きかし草)あたりと同居しているだろう。大きからず、小さすぎず、草丈は高さ20cm内外。見つけ出すのは結構困難。夏、雑草がぼうぼうに茂った状態では田んぼに近づけもしないし、イネ(稲)刈りが近付いてくると今度は徹底した除草が行われるため本種も抜かれたり踏み潰されたりする。観察はイネ刈り直後(9月下旬~10月)のからからには乾ききっていない田んぼに再生してきたものに限られるか。神奈川県内では山地を除いて広く分布ある、昔ながらの水田雑草の一つ。ただ埋め立て開発によって水田そのものが毎年減少の一途を辿っており、湘南地域ではより大型な外来種ホソバヒメミソハギ(細葉姫禊萩)が断然優勢で、ナンゴクヒメミソハギ(南国姫禊萩)・別名アメリカミソハギ(あめりか禊萩)なる新たな外来種の侵入も確認されており、近い将来「絶滅危惧種」に指定されかねない憂慮を抱かざるを得ないのが本種の現状。
田んぼに生えたヒメミソハギ 開成町延沢 2023/10/07
田んぼに生えたヒメミソハギ 開成町延沢 2023/10/07
田んぼに生えたヒメミソハギ 開成町延沢 2023/10/07
田んぼに生えたヒメミソハギ 開成町延沢 2023/10/07
葉は十字対生。葉身基部は耳状に左右に張り出し茎を抱く。張り出し部分はホソバヒメミソハギほど顕著でなく、葉腋(ようえき)に付いた実に隠れてしまってよくは見えない。全体的なぱっと見の雰囲気は似ているも草丈10cm以下と小型で葉が輪生しているようなら、希少種ミズマツバ(水松葉)である可能性。
ヒメミソハギの葉 開成町延沢 2023/10/07
ナカグロクチバ(中黒朽葉)というガ(蛾)のまあまあ大きな気色悪い幼虫が付きやすいので、食痕あらば注意したい。毒はないらしい。
ヒメミソハギを食害するナカグロクチバの幼虫 開成町延沢 2023/10/07
ヒメミソハギの花
花径は1.5~2mm程度。膝(ひざ)をついて四つん這いになり顔をすぐそばまで近づけて覗き込んで目を見開いてまじまじ凝視してようやくはじめて”これで花が咲いている状態だったのね”と確認できる、ろくに見えやしない極小の花である。花弁は四枚、小さすぎて花弁と花弁の間はがら空きである。花色はかわいらしい極薄ピンク。ぱっと見ただけで花が咲いていることを視認できるものはホソバヒメミソハギだろう。
ヒメミソハギ 開成町延沢 2023/10/07
ヒメミソハギ 開成町延沢 2023/10/07
ヒメミソハギ 開成町延沢 2023/10/07
ヒメミソハギの小さすぎて肉眼ではろくに見えやしない花(白色矢印) 開成町延沢 2023/10/07
ヒメミソハギの花径2mm弱の花(白色矢印) 開成町延沢 2023/10/07
草姿(そうし)も葉の形も違うので混同はしまいが、花だけ見るとキカシグサがよく似ていて紛らわしい。ヒメミソハギ属に分類されるヒメミソハギやホソバヒメミソハギは葉腋に複数個の花が咲く(葉腋に複数個の実ができる)のが特徴。キカシグサ属に分類されるキカシグサなどは葉腋に花が一個だけ咲く(葉腋に一個だけ実ができる)、という違いあり。
ヒメミソハギの実
葉腋(ようえき)に赤い玉状の実ができる。完熟してくると中に納まっていた赤い粒々がうっすら見えるようにあるが、それが種子。ちょっとザクロ(柘榴)っぽい雰囲気。
ヒメミソハギの実 開成町延沢 2023/10/07
ヒメミソハギの実 開成町延沢 2023/10/07
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)