畔菜、畦菜 シソ目/アゼナ科/アゼナ属 花期/6月下旬~10月? 結実期/7月下旬~11月?
学名/Lindernia procumbens (Krock.) Philcox
自生種
#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/21
田んぼなどの湿地に生える一年草。どうということのない一般的な水田雑草の一つ、といえばそうなのだが、田植え時や真夏の前後に実施される(除草剤の散布も含めた)雑草駆除の影響や、田んぼ内の水量の増減もあって、観察には意外と困難を要する植物である。名前はアゼナと言いながら、畦(通路を兼ねた、田んぼの区画を区切るための土盛り)の上には生えておらず、田んぼの中の耕されて土がべちゃべちゃになっているイネ(稲)の周りに生え出る。ないところにはぜんぜんない、あるところには雑草として大量にあるのだがその場所が意外と見つからない。夏本番前は草丈15cm程度の小振りな草なので、ぬかるむ田んぼ周辺で顔を近づけてまじまじ観察する機会はなかなか得られるものでなし。またアメリカアゼナ(あめりか畔菜)およびタケトアゼナ(たけと畔菜)という二種(正確には一種一亜種 ※以下便宜上別種として扱う)の侵略的外来種と(特に大きく成長する前は)外観が似ており紛らわしい。アゼナ、アメリカアゼナ、タケトアゼナの三種(ひっくるめてアゼナ類と呼ばれることがある)は、住み分けがされておらず、混じって生える。なお特にタケトアゼナが優勢なので、もしかしたら和製アゼナは減少に向かう可能性も。三種はいずれも、日当たり良く湿った土を好み、全草軟らかで、無毛。生え出したら、水をたくさん飲み、日に日にもりもりよく育つ。草丈は20cm超くらい。但し、田んぼに生えている限り(前述の影響で)何の障害もなくすくすくと育つことはまずあるまい。虫食い被害も多い。
田んぼに生えたアゼナ 茅ヶ崎市西久保 2022/07/09
アゼナ類の混生 平塚市真田 2021/09/24
アゼナ 平塚市真田 2021/09/24
アゼナ 平塚市真田 2021/09/24
アゼナ 平塚市真田 2021/09/24
#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/13
#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
成長に伴い葉が小さくなってきた#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30
成長に伴い葉が小さくなってきた#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30
成長に伴い葉が小さくなってきた#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/08/03
水や養分が足りない、あるいは真夏になって暑すぎる、などの生育環境に影響されてだと思われるが、葉が異様に小さくなることがある。反比例して、花柄(かへい)が異様に長く感じられるようになる。当初からそのような姿の個体もある。
成長に伴い葉がだいぶ小さくなった#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/08/15
成長に伴い葉がだいぶ小さくなった#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/08/15
アゼナの葉が小さい個体 茅ヶ崎市西久保 2019/10/07
結実期の#アゼナ(下部は#ミゾカクシ) 茅ヶ崎市浜之郷 2019/10/04
アゼナ類の見分けは、はじめ葉の鋸歯の有無で行う。アゼナは鋸歯がない全縁(ぜんえん)。よおく見れば鋸歯の痕跡のようなものがごく僅かに視認できる葉も多いのだが、切れ込みは入らないので大まかにいって全縁である。対してアメリカアゼナとタケトアゼナには鋸歯がある。次に、葉身基部の形状の違いを見る。細身のくさび形をしているのはアメリカアゼナ、それよりふっくらしているもくさび形なのがアゼナ、タケトアゼナはそれらとは明らかに異質な円形である。見慣れてしまえば二秒で判別できるようになるのだが、はじめはアゼナとタケトアゼナが少々紛らわしいだろうと思われる。葉の基部が茎を抱くとか抱かないとかいう話は考えない方がよい。特にアゼナとタケトアゼナは、写真を後で見返すと両者を特徴づける部分が明確に映っておらず判別に難儀することがあるので、必ず現地でしっかり見分けておくように。
#アゼナ類の比較(境界線はおよそ) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/13
アゼナの鋸歯らしきものがまったく表れない若い葉 茅ヶ崎市西久保 2019/08/21
#アゼナ類の比較 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナ類の比較 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナ類の葉の比較(葉より上部は切除した) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナ類の葉の比較 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/20
幼株では判別が難しいことがあるので、二週間ほど成長を待って経過観察すること。アゼナ類は旺盛なので、すぐ成長する。なお田んぼでは7月中旬から下旬にかけてイネの中干しが行われるので、それを機に田んぼ周辺は除草される。イネ刈りの時期が近付いた9月にもまた水が抜かれて大規模除草あり。アゼナ類の観察はその直前が限られた好機といえる。不耕作田(休耕田)は不意に機械で耕されたり、雨降れば水没する。
花色が違う、葉の形状が違う、実が長い、となれば、アゼトウガラシ(畔唐辛子)、ヒロハスズメノトウガラシ(広葉雀の唐辛子)、エダウチスズメノトウガラシ(枝蔚雀の唐辛子)、あたりの可能性。
珍しくもなんともない雑草であるウリクサ(瓜草)とトキワハゼ(常盤爆)にも注意する。花の形状が似ているものは多々あって紛らわしい。
アゼナの花
葉腋(ようえき)から花柄を伸ばして花を一つ付ける。花柄の長さはまちまち。花の形状はシソ科や旧ゴマノハグサ科でお馴染みの唇形花(しんけいか)。花色は、白にうっすら紫系統の色が入る。色みや濃淡はまちまち。花径は5mmから8.5mm程度とまちまちながら、アメリカアゼナやタケトアゼナに比べると小振りな花になる傾向。朝から昼過ぎくらいに咲き、日が傾き始めた午後には(雄蕊を伴って)花冠がぽろっと落ちる。一日花。草丈10cmちょっとの小さな株のうちから開花するので、咲きっぷりは悪くない。(アゼナ類に共通して)個体が未熟だったり環境が不適合だと、閉鎖花になることがある。
アゼナ 平塚市真田 2021/09/24
#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30
下唇(かしん)に沿って突き出て見える雄蕊二本の先端は(淡い)黄色。タケトアゼナの先端は白い。
#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/20
アゼナの下唇は90°に折れて下向きになる、アメリカアゼナとタケトアゼナの下唇は前方に突き出る、という違いがあるように感じられる。
#アゼナの90°に曲がる下唇 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30
#アゼナ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/13
アゼナの実
花冠が落ちた後に、萼片に半ば隠れるように実ができる。実の先端はやや丸め。外来二種の方は比較的細く尖り気味。といっても微々たる違いなので見分けの参考にはなるまい。あからさまに長細い実が突き出ていたら前述の通りアゼトウガラシなどである疑い。
#アゼナの未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナの未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナの未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/25
#アゼナの未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2019/09/29
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
今日は真田の田んぼを徘徊して来ました。
夕方の風は心地よく 暮れていく景色は素敵でしたよ
こちらで予習してから歩いたので アゼナ?アゼナ類を見付けて嬉し
画像も撮りましたがスマホでは厳しい、、次はデジカメ持参で歩きましょう!
ポケモン探すより楽しい
もしレア植物を見付けたら、、どうしようかって考えるのも楽しいですね