ヒメジソ

姫紫蘇 シソ目/シソ科/イヌコウジュ属 花期/9月下旬~10月 結実期/11月~12月
学名/Mosla dianthera (Buch.-Ham. ex Roxb.) Maxim.

自生種稀少保護

花期序盤のヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤の#ヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

やや湿った日当たりの良い場所を好む一年草。名は、小型なシソ(紫蘇)の意。確かにシソの仲間ではあるのだが、一般の人が見てシソを連想できるかは怪しいところ。むしろ葉などはイヌコウジュ(犬香薷)に酷似しており、両者の見分けが必ず問題となる。湘南・鎌倉・三浦半島で見かける可能性があるのは、田んぼ周辺か。畦、休耕田など。但し、真夏やイネ(稲)刈り前の除草で被害を受けやすい。あるいはライバル雑草がいなくなったイネ刈り後の田んぼにも生えるだろうか、その場合は草丈は低く小型にしかならないかも。山地・丘陵地周辺の半日陰な林縁などにも生えるらしい。草丈などは生育環境による個体差大きかろうが、また前述の通り人為的な刈払いを受けやすいため全体的な姿は一定でないが、ふつう人の膝(ひざ)下(40cm)くらいが多いか、ときに膝上(60cm)にもなる。茎一本を直立させるが、要領を得ないほど多数の枝を出し、直径60cmくらいの大株となる。枝は横へ横へ伸びて広がるが、枝先をくいっと持ち上げて花序は立たせる。全草シソ科ならではの(シソほど好感を得るものではなかろうが)芳香あり。栽培は、日当たり良い場所で水枯れさせなければ容易(たやす)い。にもかかわらずやや希少化しているということは、タネができる前に盛大に実施される機械を用いた人為的な刈払いがやはり原因と考えざるを得ない。一年草なので、タネを作れなければ確実に個体数の減少に直結してしまう。水稲農家からしたら目障りな雑草でしかなかろうが。

大きく成長したヒメジソ(1株、高さ50×横幅60cm) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/08/05

大きく成長した#ヒメジソ(1株、高さ50×横幅60cm) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/08/05

花期序盤のヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤の#ヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤のヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤の#ヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

田んぼに生えたヒメジソ 寒川町田端 2018/10/03

田んぼに生えたヒメジソ 寒川町田端 2018/10/03

イネ刈り後に生えたヒメジソ 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

イネ刈り後に生えたヒメジソ 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

イネ刈り後に生えたヒメジソ 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

イネ刈り後に生えたヒメジソ 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

ヒメジソは湿った田んぼなどに、イヌコウジュは特に湿っているわけではない道端などひょんな場所に生える。ヒメジソは若々しい緑色を維持し、イヌコウジュは赤みを帯びる傾向。ヒメジソの葉の鋸歯はしっかり深く入り、イヌコウジュの鋸歯は浅いので鋸歯数を厳密には数え難いことも。イヌコウジュは花序直下の葉だけがやたら幅広で丸っこい。ヒメジソの花序軸はほぼ無毛、イヌコウジュの花序軸は細かい毛が密生するため白っぽく見える。ヒメジソの花は白っぽいと感じる、イヌコウジュは紫色が濃いめの傾向。といったあたりを総合的に勘案すればある程度は見分けられるのではないか。よく萼片の尖り具合がどうたら(果時、ヒメジソの上萼片はさほど尖らず、イヌコウジュは鋭利に尖る)との識別方法が挙げられているが、萼片は小さ過ぎる上に微妙な違いがあるのかどうなのかよくわからない場合も多いので、むしろ一般の人を混乱に陥れるだけな気も。いずれにせよ、観察不足があると最後の最後まで自信をもって断定できない、という残念な結果に終わることがないでもない。ヒメジソはイヌコウジュよりもかなり希少なので、湘南・鎌倉・三浦半島のそこいらで見かけたものはおそらくはイヌコウジュ(ないしシソ科の別種)だろう。

ヒメジソの特徴 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

#ヒメジソの特徴 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

葉は対生。鋸歯は明瞭。鋸歯の数は少なく、片側六個以下。花序直下の葉も(イヌコウジュのような異様に幅広でない)ふつうの形状。

ヒメジソの枝 茅ヶ崎市浜之郷 2020/08/05

#ヒメジソの枝 茅ヶ崎市浜之郷 2020/08/05

何者かは確認していないが、栽培環境下では枝先の若い芽の周辺に小さな毛虫(ハマキムシあたりなのかもしれない)がやたら付いて食害を繰り返した。殺虫剤(住友化学園芸「ベニカXファインスプレー」、同「オルトランGF・粒剤)の効果は実感できず。

ヒメジソの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/08/05

#ヒメジソの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/08/05

ヒメジソの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

#ヒメジソの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

イネ刈り後に生えたヒメジソの幅広な葉 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

イネ刈り後に生えたヒメジソの幅広な葉 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

茎には稜(りょう)があり、切断面は四角形。髄は白色。

茎、葉の両面、萼に、白色の長い軟毛が多い。葉の鋸歯が多い。といった場合は、変種または別種とされるシラゲヒメジソ(白毛姫紫蘇)の可能性を疑いたい。

なお丘陵地のハイキングコースを歩くとしょっちゅう目にするシソ科の紫花は、アキノタムラソウ(秋の田村草)ヤマハッカ(山薄荷)である。

ヒメジソの花

枝先に花序を伸ばし、小花は花序の片側に偏って付く。小花は花序軸下方から上方へ向かって徐々に咲き進んでいく。小花の花冠は幅4mm、高さ4.5mm、(咲き終わって萼から脱落したものを計測して)長さ6mm。肉眼では細部が見えない程度に小さな花で、かわいらしいが、一般には観賞価値はなかろう。花色はほぼ白といいたくもなる薄紫色(薄ピンク色)。開花してから時間がたった花は紫色が若干濃くなり、咲き終わる。

花期序盤のヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤の#ヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤のヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤の#ヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤のヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

花期序盤の#ヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

イネ刈り後に生えたヒメジソ 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

イネ刈り後に生えたヒメジソ 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

ヒメジソの無毛な花序軸 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

#ヒメジソの無毛な花序軸 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/07

ヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/16

#ヒメジソ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/16

各小花の直下に付く苞(ほう)が大きくて幅広だったらヤマジソ(山紫蘇)の可能性。神奈川県内では山地に少なく自生あり、湘南・鎌倉・三浦半島にはないはず。

ヒメジソの実

他のシソ科同様、花後しばらくたった萼の奥を覗き込むとそこに種子ができている。

ヒメジソの若い実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/16

#ヒメジソの若い実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/16

ヒメジソの果時の萼片 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/16

#ヒメジソの果時の萼片 茅ヶ崎市浜之郷 2020/10/16

ヒメジソの実 茅ヶ崎市行谷 2019/11/19

ヒメジソの実 茅ヶ崎市行谷 2019/11/19


横浜市戸塚区・舞岡公園(耕作体験田んぼ)、横浜市栄区・瀬上市民の森

茅ヶ崎市行谷・田んぼ(イネ刈り後でなければ観察できない)

衣笠山公園、寒川町田端・田んぼ(ごく少数、イネ刈り前に刈られて滅する)、清水谷(田んぼ周辺に少ない)

厚木市・神奈川県立自然環境保全センター

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

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