ヨウコウザクラ

陽光桜 バラ目/バラ科/サクラ属 花期/3月中旬~下旬
学名/Cerasus ‘Youkou’

改良種

ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

#ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

園芸栽培される落葉高木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。正しい品種名は’陽光’。愛媛県で作出されたサクラの一品種。ハルメキザクラ(春めき桜)の次に咲くサクラである。作出したのは「伯方(はかた)の塩」でお馴染みの伯方塩業初代社長となる高岡正明氏。大東亜戦争(1937-1945)の最中には青年学校の教員をしており、多くの教え子を戦場に送り戦死させてしまったと後悔。戦没者の供養と世界平和を願うため、戦地をはじめ世界中にサクラを植えたいと発起し、ソメイヨシノ(染井吉野)よりも暑さ寒さに強くジャワやシベリアでも花が咲くようにと、カンヒザクラ(寒緋桜)とアマギヨシノ(天城吉野)を交配して新品種を生み出した。’陽光’という名は、太陽の光が照らして世界が平和になるようにとの思いが込められたもの。今のところ一般に知名度は高くなかろうが、意外と身近なところに植えられている。ほぼ同時期に似た花色のしかも神奈川県内で作出されたヨコハマヒザクラ(横浜緋桜)なる品種も咲いており両者の見分けが少々厄介ながら、湘南・鎌倉・三浦半島で見かけるそれらしきサクラはおよそヨウコウザクラの方だろう。横浜市内には両者植えられているので混同注意。※本頁では俗称のヨウコウザクラを用いる。

ヨウコウザクラ 藤沢市・伊勢山公園 2020/03/21

#ヨウコウザクラ 藤沢市・伊勢山公園 2020/03/21

ヨウコウザクラ 鎌倉中央公園 2020/03/21

#ヨウコウザクラ 鎌倉中央公園 2020/03/21

ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

#ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

#ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

ヨウコウザクラ(現在はこれより東側に移植されている) 寒川神社 2016/03/29

#ヨウコウザクラ(現在はこれより東側に移植されている) 寒川神社 2016/03/29

ヨウコウザクラ(移植後) 寒川神社 2017/04/03

#ヨウコウザクラ(移植後) 寒川神社 2017/04/03

ヨウコウザクラの花

オカメザクラ(阿亀桜)、ハルメキザクラが見頃を過ぎて、シダレザクラ(枝垂桜)がそろそろ華やぐ頃(あるいはそのちょっと前)、カワヅザクラ(河津桜)を思わせるピンク色がやや濃いめのサクラの花が神奈川県南部で咲いていたらヨウコウザクラかヨコハマヒザクラのどちらかだろう。カワヅザクラはとっくに咲き終わって緑の葉ばかりが茂っており、ソメイヨシノはまだ咲き始め(ないし早い所でも見頃前)。

ヨウコウザクラ 鎌倉中央公園 2020/03/21

#ヨウコウザクラ 鎌倉中央公園 2020/03/21

ヨウコウザクラの蕾 茅ヶ崎市・中原街道 2018/03/27

#ヨウコウザクラの蕾 茅ヶ崎市・中原街道 2018/03/27

ヨウコウザクラ 茅ヶ崎市・中原街道 2018/03/27

#ヨウコウザクラ 茅ヶ崎市・中原街道 2018/03/27

ヨウコウザクラ 茅ヶ崎市・中原街道 2018/03/27

#ヨウコウザクラ 茅ヶ崎市・中原街道 2018/03/27

花はソメイヨシノと同等に大きく、花径4.5cm未満(3.5~4.5cmでふつう4cm前後、ヨコハマヒザクラも同等ないし僅かに小さめ)。花弁一枚は幅広で真円に近い形(ヨコハマヒザクラはやや幅狭で楕円形)。花弁先端に切れ込みあり。その付近に鋭利にぎざぎざした細かな欠刻が複数個あり(ヨコハマヒザクラにはない)。花弁は縮れが入ってしわしわ(ヨコハマヒザクラも同様)。花色は、女子が喜びそうな濃いめのピンク。花数多く咲いていればそこだけひと際ぱっと明るく陽気に感じられるかわいらしいピンク色である(ヨコハマヒザクラも同系統の色で二つ並べて見比べてみなければわからない程度の違いでしかないが、ヨコハマヒザクラの方が赤が濃い)。雌蕊の長さは雄蕊と同等ないしやや短い(ヨコハマヒザクラの雌蕊は雄蕊より長いため一本突出して見える)。

ヨウコウザクラ 鎌倉市・高徳院(鎌倉大仏) 2020/03/18

#ヨウコウザクラ 鎌倉市・高徳院(鎌倉大仏) 2020/03/18

ヨウコウザクラ 鎌倉市・高徳院(鎌倉大仏) 2020/03/18

#ヨウコウザクラ 鎌倉市・高徳院(鎌倉大仏) 2020/03/18

ヨウコウザクラ 横浜市戸塚区・俣野別邸庭園 2020/03/16

#ヨウコウザクラ 横浜市戸塚区・俣野別邸庭園 2020/03/16

ヨウコウザクラとヨコハマヒザクラの花の違い

ヨウコウザクラとヨコハマヒザクラの花の違い

カンヒザクラのDNAを引いているだけあって、花は下向きに咲く傾向が強い(ヨコハマヒザクラも同様)。このため写真に撮ると花に黒っぽい影がかかってしまっているように写るだろう。

下向きに咲くヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

下向きに咲く#ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

#ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

#ヨウコウザクラ 寒川町・さむかわ中央公園 2019/03/25

ヨウコウザクラ 鎌倉中央公園 2020/03/21

#ヨウコウザクラ 鎌倉中央公園 2020/03/21

ヨウコウザクラ 寒川神社 2016/03/29

#ヨウコウザクラ 寒川神社 2016/03/29

ヨウコウザクラの萼 寒川神社 2016/03/29

#ヨウコウザクラの萼 寒川神社 2016/03/29

開花時、花柄(かへい、花序柄)がない(ように見える)ものが多い(ピーク過ぎには花柄が伸びてくるものと思われる、ヨコハマヒザクラは元より明瞭に花柄あり)。ふつう散形花序で、一地点で複数本の小花柄に分岐する(ヨコハマヒザクラは散房花序で、花柄のあちこちの地点で小花柄に分岐してゆく)。小花柄(から萼筒(がくとう)基部にかけて)は開出毛多い(ヨコハマヒザクラは無毛)。萼筒と萼片はほぼ無毛。萼片は幅広(ヨコハマヒザクラは細くシャープに感じられ、先端が微々たるものながら超音速旅客機コンコルドの鼻先状に内側に曲がる)、萼片基部に鋸歯が少々あり(※『新日本の桜』は全縁としている、ヨコハマヒザクラは鋸歯ない全縁)、萼片上部には(ルーペで覗き込まないと見えない程度の細かい)まばらな縁毛(えんもう)あり(ヨコハマヒザクラになし)。

ヨウコウザクラの小花柄など 横浜市戸塚区・俣野別邸庭園 2020/03/16

#ヨウコウザクラの小花柄など 横浜市戸塚区・俣野別邸庭園 2020/03/16

ヨウコウザクラの小花柄など 横浜市戸塚区・俣野別邸庭園 2020/03/16

#ヨウコウザクラの小花柄など 横浜市戸塚区・俣野別邸庭園 2020/03/16

鱗片葉(りんぺんよう)内側にはちりっちりに縮れた毛が多い(ヨコハマヒザクラはさほど縮れない長めの毛が多い)。

ヨウコウザクラの小花柄など 鎌倉市・高徳院(鎌倉大仏) 2020/03/18

#ヨウコウザクラの小花柄など 鎌倉市・高徳院(鎌倉大仏) 2020/03/18

ヨウコウザクラの咲き終わり 鎌倉市・高徳院(鎌倉大仏) 2019/03/31

#ヨウコウザクラの咲き終わり 鎌倉市・高徳院(鎌倉大仏) 2019/03/31


横浜市中区・#根岸森林公園(若木1本)、横浜市港南区港南・#桜道(老いて傷んだソメイヨシノから植え替え中)、横浜市旭区・#よこはま動物園ズーラシア(ごろろ橋~噴水口)、横浜市瀬谷区・#海軍道路、横浜市戸塚区・#俣野別邸庭園(休憩棟前の芝生広場に1本=低所の枝は落とされており花はやや高所のみ、ヨコハマヒザクラも=遅咲き)

#さむかわ中央公園(花弁細め・小花柄の毛少ない・萼片小さめといった違いあり)

#観音崎公園(花の広場)、#くりはま花の国(第2駐車場)、鎌倉駅前・#日本料理鯉之助(花期に大掛かりな切花を展示)、#高徳院(鎌倉大仏、手水舎の左側奥に三本、回廊西側に一本、いずれも場所・日当たりよろしからず生育不良、小花柄の毛はやや少なめ、#鎌倉中央公園(カツラの広場に2本、間髪入れずにオオシマザクラとヤマザクラも見頃)、藤沢市・#伊勢山公園(鐘楼前に1本、「横浜緋桜 2010年2月21日 植樹」の樹名板あるがヨウコウザクラ)、#寒川神社(南門西側に「横浜緋桜」としてあるがヨウコウザクラ→平成29年(2017)納札殿側へ移植、高木で低所に花なし)、#茅ケ崎里山公園(栗の木広場の畑内に3本、風の谷に1本)、#湘南東部総合病院(駐輪場西側に2本、花はほぼ高所のみ)、茅ヶ崎市・#県道45号丸子中山茅ヶ崎線(中原街道の茅ヶ崎市消防署本署(旧消防本部)周辺のまばらな街路樹、低木ばかりなので花の観察には良い)、平塚市・#金目親水公園、二宮町・#ラディアン花の丘公園(1本、「彼岸桜」の樹名板あり、3月下旬、花期がやや遅い・花弁が細め(さむかわ中央公園型、二宮果樹公園の薬剤散布日は共に休園)・萼筒および萼片は少ないながら有毛・鱗片葉は小さく内側は少ないながら直線的な毛が生えるなどの違和感あり=類似の別種である可能性)

相模原市緑区・#城山かたくりの里

参考資料

『新日本の桜』 木原浩・大場秀章・川崎哲也・田中秀明著 山と溪谷社発行(2007)

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