野紺菊 キク目/キク科/シオン属 花期/9月~11月上旬 結実期/11月~12月
学名/Aster microcephalus (Miq.) Franch. & Sav. var. ovatus (Franch. & Sav.) Soejima & Mot.Ito
自生種
ノコンギク 鎌倉広町緑地 2021/10/24
多年草。ノギク(野菊)と総称されるものの一種。『神奈川県植物誌2018』には”明るい林縁、河原、土手などに生える”とある。生育環境は広範囲に及び、シロヨメナ(白嫁菜)が好む丘陵地を通るハイキングコース沿いの半日陰になる明るい草地、カントウヨメナ(関東嫁菜)やユウガギク(柚香菊)が好むべちゃべちゃ湿った日当たり良い(湿地や田んぼ周辺の)草地、の中間的な場所に生える。確かに神奈川県内ほぼ全域に分布が広がっておりどうということのない普通種ではあるものの、そこかしこで見かけるかといえばそうでもない。しかしながら、丘陵地で森林が多く残っている鎌倉あたりだと住宅近くのひょんな場所でも見かけるほぼ雑草だったりもする。夏の終わりから初秋にかけて人家に近い林縁などは機械で丸裸に刈払いされることが多いため、ノコンギクの花は意外とさほど多くは見かけない。
ノコンギク 鎌倉広町緑地 2021/10/24
ノコンギク 平塚市/大磯町・高麗山公園・湘南平 2021/11/02
草地に生えたノコンギク 平塚市/大磯町・高麗山公園・浅間山 2021/11/02
#ノコンギク 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06
生育不良な#ノコンギク 平塚市/大磯町・高麗山公園・浅間山 2021/11/02
道端のアスファルトの割れ目に生えたど根性系ノコンギク 鎌倉市佐助・源氏山公園付近 2021/11/20
代表的なノギクは何かと尋ねられれば、ノコンギクを挙げる人が多い。希少種ではないこと、人に身近な環境で生えること、従って栽培もしやすいこと、全体的な草姿も葉の形状もシロヨメナよりは均整が取れていること、花が見栄えすること、あたりが理由になるか。
ノコンギクとシロヨメナの見分けが難しい件
ノコンギクは、シロヨメナやらの雑種起源と考えられている。そのため、典型的な姿をしている多くのものはともかくも、シロヨメナとたいへん紛らわしい姿をしているものがある。ノコンギクなのか、シロヨメナなのかは、各部分の特長から総合的に判断する以外にない。
ノコンギクとシロヨメナの典型的な葉の比較
チェックポイント
花⇒薄紫色ならノコンギク、白色ならノコンギクかシロヨメナ
総苞⇒均整取れた形ならノコンギク、細身ならシロヨメナ
総苞片⇒先端が反るならノコンギク、反らないならシロヨメナ
冠毛⇒ノコンギクもシロヨメナもあり、なかったらカントウヨメナかユウガギク
葉数⇒多いならノコンギク、少ないならシロヨメナ
葉の形状⇒丸っこいならノコンギク、細長いならシロヨメナ
葉の色⇒明るい緑色ならノコンギク、暗い緑色ならシロヨメナ
葉の感触⇒ごわごわざらざらなサメ肌ならノコンギク、さほどざらつかないならシロヨメナ
枝先の葉⇒丸っこいならノコンギク、細いならシロヨメナ
枝⇒茎下部からもよく分枝していればノコンギク、茎上部だけで分枝するならシロヨメナ
茎の細かい毛⇒密生ならノコンギク、あまりないならシロヨメナ
※あくまでも傾向であり、すべてがぴたりと適合するわけではない。
茎は細く、ひょろっと直立する。茎下部から上部までまんべんなくよく分枝(ぶんし)し、こんもり茂る。となると自重に耐えられずに倒れたりしてよく荒れる。野生では他の草にまみれて生える。茎を支柱で支えて栽培すると、草丈は人の腿(もも、高さ60cm)くらいになる。シロヨメナよりはややコンパクト。茎や枝や総苞には短毛が密に生える。
#ノコンギク(支柱で茎枝を立てたもの) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギクの茎 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
葉は、均整の取れた卵形から長披針形。平たくいえば、ノコンギクの葉は丸っこい(シロヨメナは細長い)。葉色は明るい緑色(シロヨメナは暗い緑色)。触ると、見た目以上に強くごわごわざらざらするサメ肌(シロヨメナのざらつき度は弱い)で、革のように感じることさえ。両面に短毛あり、光沢なし。支脈はよく凹み、葉の縁に達さず連続する環結脈(Brochidodromous)のため三行脈のように見える。鋸歯は粗く、少なめ(茎下部の大きな葉で6対以下)。ぱっと見で、全体的に葉数は多い(シロヨメナは少ない)。枝先の(花近くの)葉は小さくて鋸歯なく、ツゲ(柘植)のような丸っこい形状(シロヨメナは細長い)。根生葉は花時になし。但し、地下茎の先に子株のロゼットあり。
若い#ノコンギクの葉 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12
ノコンギクの枝先(花直下)の小さく丸っこい葉 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギクの枝先(花直下)の小さく丸っこい葉 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギクの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギクの葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2021/10/30
ノコンギクの典型的な葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2021/10/30
ノコンギクの、ユウガギク形の葉 平塚市/大磯町・高麗山公園・湘南平 2021/11/02
葉が丸めで鋸歯粗からず、やや光沢あり、という海辺に生える海岸型変種ハマコンギク(浜紺菊)、別名エノシマヨメナ(江島嫁菜)なるものあり。
ノコンギクの花
花色(舌状花の色)は、基本的に淡い紫色~極薄紫色(ほぼ白)。ときに白色のものがあり、これが特にシロヨメナと紛らわしい。頭花(頭状花序)の直径は2~2.5cm(花の大きさは個体差大きいので見分けの参考にはならない)。筒状花(とうじょうか)は明るく鮮やかな黄色で、老けて咲き終わりが近づいてくるとシラヤマギク(白山菊)のような色褪せた黄緑色に変わる。冠毛は長い(シロヨメナも長い)。カントウヨメナ(関東嫁菜)やユウガギク(柚香菊)は花のぱっと見はそっくりながら、冠毛がない(ように見えるくらいに極めて短い)ので見分けは簡単。
ノコンギクの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギク 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギク 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギク 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギク 平塚市/大磯町・高麗山公園・浅間山 2021/11/02
ノコンギク 鎌倉広町緑地 2021/10/24
ノコンギク 平塚市/大磯町・高麗山公園・浅間山 2021/11/02
総苞は、縦横の長さが均整が取れた形状のものが多い(シロヨメナは細めで縦長)。総苞片の先端は、紫色を帯びることがあり、軽く反る。
ノコンギクの総苞 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/14
ノコンギクの総苞 鎌倉広町緑地 2021/10/24
ノコンギクの総苞 鎌倉広町緑地 2021/10/24
ノコンギクの総苞 平塚市/大磯町・高麗山公園・浅間山 2021/11/02
花の紫色が最上級に濃い選抜種が栽培され、コンギクと呼ばれて流通している。ホームセンンターの園芸コーナー等では紫色が濃くもなく薄くもなくというものがノコンギクの名前で売られているが、発色がまあまあ良い野生のノコンギクなのか、栽培品コンギクの発色不良品なのかはわからない。少なくとも、湘南・鎌倉・三浦半島で一般的に見られるノコンギクよりは色濃い紫色である。鎌倉の寺境内等で栽培されているものは、自生のノコンギク(を移植したもの)、買ってきたノコンギク(発色不良コンギク)、買ってきたコンギク、の三種がある。※本サイトでは、一般的な野生種より花色が濃い栽培品はコンギクの頁に含め、野生状態で生えている花色が濃いものはノコンギクの頁にて掲載する。
ノコンギクの実
(ノギクの仲間としては)長い冠毛を伴う。茶色の綿毛感がしっかり感じられる丸形のぼんぼんになる。
#ノコンギクの実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/11/16
#ノコンギクの実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06
#ノコンギクの実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06
#ノコンギクの実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/11/16
横浜市栄区・横浜自然観察の森(ノギクの広場、アキアカネの広場・上~タンポポの道9番に白花、ミズキの道1?)
鎌倉広町緑地(入口広場横の湿地に少々、#管理事務所前花壇)、#大船フラワーセンター(森の小道西側に多い、森の小道東側にシロヨメナ、ロックガーデンにコンギク(花小さい)あり)、平塚市/大磯町・高麗山公園(浅間山~湘南平、シロヨメナと紛らわしい(雑種が疑われる)ものも多い)
源氏山公園~葛原岡・大仏ハイキングコース
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
『山溪ハンディ図鑑 11 日本の野菊』 いがりまさし著 山と溪谷社発行(2007)