白山菊 キク目/キク科/シオン属 花期/8月中旬~11月上旬 結実期/10月下旬~12月上旬
学名/Aster scaber Thunb.
自生種
#シラヤマギク 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/10
多年草。ノギク(野菊)と総称されるものの一種。湘南・鎌倉・三浦半島でも広域でちらほら見かける普通種。『神奈川県植物誌2018』には”ススキ草原や明るいコナラ林などに生える”とあるが、丘陵地の林内を通る薄暗いハイキングコース沿いで目にする機会が多いように思われる。茎下部の葉がたいへん大きく形状も独特、というただ一点のみで他のノギクの仲間と誰でも簡単に見分けられる。一般的な公園や民家などで栽培されることはない。
成長途中の#シラヤマギク 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12
シラヤマギクの特長
丘陵地の薄暗いハイキングコース沿いに生える。
太い茎が直立し、他のノギクより大型化する。
茎下部の葉は、葉柄(ようへい)が長く、葉身はたいへん大きく形状が特徴的。
開花時期が他のノギクの仲間より早い。
花は小さく質素。舌状花はまばら、頭状花は鮮やかな黄色でない、ので地味。
草丈はおよそ1.5m以下。よく成長した株では茎がノギクの仲間としては太く(成人男性の親指くらいの太さ)、ごつく、背高になる。但しノギクの仲間は個体差大きく、また他の雑草もろとも夏の刈払いに遭うことも多いため、異様に小さい株もまま見る。
背高に成長したシラヤマギク 藤沢市・新林公園 2021/08/27
シラヤマギクの最大の特長は、葉。茎下部の葉、ないし地下茎から出た子株のロゼットの葉は、柄(え)がたいへん長く、葉身はときに人の掌(てのひら)くらいにもなる巨大な葉となる。形状も、三裂しないオオオナモミ(大葈耳)とでもいったような姿。表面は(日陰に生える植物らしく)暗い緑色で、触ると強めにざらざらするサメ肌。裏面はうってかわって(日向に生える植物のような)明るい緑色で、ざらつかない。鋸歯はふつう粗(あら)い。この葉を見ただけでシラヤマギクと分る。逆にいえば、この葉がなければシラヤマギクではない。見紛うことはないが、ウバユリ(姥百合)の葉もちょっと形状が似ているか。なお丹沢や箱根にはタテヤマギク(立山菊)なる類似種があるので注意。草丈低くて葉がざらつかなかったら念のためタテヤマギクの可能性を疑いたい。
#シラヤマギクの茎上部の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/10
シラヤマギクの茎中部の葉 藤沢市・新林公園 2021/08/27
シラヤマギクの茎中部の葉 横浜市緑区・四季の森公園 2021/07/10
#シラヤマギクの茎中部の葉 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12
#シラヤマギクの茎下部の葉(この葉があったらシラヤマギク) 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12
シラヤマギクの茎下部の葉(この葉があったらシラヤマギク) 横浜市緑区・四季の森公園 2021/07/10
シラヤマギクの茎下部の葉(この葉があったらシラヤマギク) 藤沢市・新林公園 2021/08/27
シラヤマギクの茎下部の葉(鋸歯が粗くないもの) 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28
シラヤマギクの来年用の新株 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02
名はシラヤマギクであって、シロヤマギクとは呼ばない。ハクサンギクと読んでもいけない。ヤマシロギク(山白菊)というとシロヨメナ(白嫁菜)ないし東海地方以西に分布があるイナカギク(田舎菊)の別名であるので混同注意。
園芸店で山野草として「シラヤマギク」が販売されていたら、おそらくその正体は千葉県南部の清澄山(きよすみやま)で発見されたノコンギク(野紺菊)の変種ないし雑種と推察されているもので、キヨスミコンギク(清澄紺菊)ないしキヨスミシラヤマギク(清澄白山菊)の名前で流通しているものだろう。花は紫色を帯び、茎や枝は黒っぽく、全体的な草姿も葉の形状もどう見たってシラヤマギクではないだろうと一目でわかる、観賞価値の高いノギクである。
シラヤマギクの花
他のノギクに先駆けて、早咲きする(咲き終わるのも早め)。頭状花序(頭花)の数は少なめでまばら、直径2cm程度とノギクの仲間としては小さい部類。花弁(のように見える舌状花(ぜつじょうか))は枚数少なく、白色で、紫色にはならない。筒状花(とうじょうか)は、(開花したごく初期の短い段階を除いて)他のノギクのような明るく鮮やかなきれいな黄色ではなく、咲き終わり感を醸し出す黄緑色をしている。従って、花の観賞価値は低い。冠毛(実に付く綿毛)は長い。
シラヤマギクの頭花の枝ぶり 藤沢市・新林公園 2021/08/27
シラヤマギクの咲き始め(この一瞬だけ筒状花が黄色い) 藤沢市・新林公園 2021/08/27
シラヤマギク 藤沢市・新林公園 2021/08/27
シラヤマギクのよく見る感じの典型的な花色 藤沢市・新林公園 2021/08/27
シラヤマギク(やや咲き終わり) 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28
総苞は、細長からず扁平でもなく、均衡の取れた形状。総苞片は反らない。赤紫色も帯びない。
シラヤマギクの総苞 藤沢市・新林公園 2021/08/27
シラヤマギクの実
#シラヤマギクの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/11/16
#シラヤマギクの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/11/16
東京都文京区・#小石川植物園(分類標本園)、横浜市緑区・四季の森公園(遊具広場~里山などに多い)、横浜市南区・#こども植物園(野草園)
新林公園(山道に少々)、平塚市/大磯町・高麗山公園(浅間山~湘南平)、吾妻山公園(果樹園付近のみに少々)
秦野市・葛葉緑地(けやきの道)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
『山溪ハンディ図鑑 11 日本の野菊』 いがりまさし著 山と溪谷社発行(2007)
こんにちは。シラヤマギクの舌状花は真っ白ですが、先日、草姿や葉はまさにシラヤマギクなのに、舌状花がクリーム色のものを見ました。シラヤマギクの終盤は舌状花の変化があるのでしょうか。