シロヨメナ

白嫁菜 キク目/キク科/シオン属 花期/9月~11月上旬 結実期/11月~12月
学名/Aster leiophyllus Franch. & Sav. var. leiophyllus

自生種

シロヨメナ 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナ 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

多年草。ノギク(野菊)と総称されるものの一種。『神奈川県植物誌2018』には”日陰の林縁や林の中などに生える”とあるが、湘南・鎌倉・三浦半島では丘陵地の尾根筋を通るハイキングコース沿いの、主に一定時間だけ直射日光が当たる明るい半日陰の草地で見かけることが多い。地下茎で増えるのでよく群生する。一般的な野草が生えるにはやや環境が悪い、ほぼ日陰の場所でも大丈夫。とあって、丘陵地の尾根筋でノギクの仲間を見たら基本的には全部シロヨメナだろう、と決めてかかってしまっても大きな問題はないかもしれない、というくらいの普通種。例えば、横浜市の円海山(えんかいざん)から横浜自然観察の森へ繋がる尾根道を歩いたならば、ノギクとしてはただただシロヨメナだけを約一時間延々と見続けてうんざりすることになる。傾斜地で水はけが良すぎたり、土質がかさかささらさらした、コウヤボウキ(高野箒)が生えているような所はちょっと乾燥し過ぎで、さすがのシロヨメナも見かけない。強い日陰に入ったらシラヤマギク(白山菊)がまばらに生えているかもしれない(葉で簡単に見分けが付く)、丘陵を下ってもうちょっと明るく環境が良くなった草地にはノコンギク(野紺菊)が現れるかもしれない(見分けが難しいものがある)、という二点には注意する。全体的な姿は荒れ気味になり、花が小さめなので見劣りし、葉も観賞価値がない上に虫食い多く、まるで雑草のごとし。そんな野性味あふれるシロヨメナが、一般的な公園や民家などで栽培されることはない。名は、ヨメナのようなノギクで花が白いものの意だろう。但し、ヨメナとは生育場所も冠毛の長さも大きく異なっており、さほど近似種ではない。とすると、ヨメナのように若葉が食用にされていたか。別名ヤマシロギク(山白菊)。東海地方以西に分布があるイナカギク(田舎菊)の別名でもあるため、用いない傾向が強まっている。

ハイキングコース沿いに生えたシロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

ハイキングコース沿いに生えたシロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

ハイキングコース沿いに生えたシロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

ハイキングコース沿いに生えたシロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

ハイキングコース沿いに生えたシロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

ハイキングコース沿いに生えたシロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナの直立した草姿 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナの直立した草姿 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナの群生 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの群生 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの群生 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの群生 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの群生 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの群生 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

草丈の低いシロヨメナ、葉はノコンギク形 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

草丈の低いシロヨメナ、葉はノコンギク形 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

花期終わりのシロヨメナ 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

花期終わりのシロヨメナ 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナとノコンギクの見分けが難しい件


シロヨメナは、典型的な姿をしている多くのものはともかくも、その見た目に変異が大きく、ノコンギクと見分けが困難なものがある。全体的な姿はシロヨメナのようで、葉の形状はちょっとノコンギクのようで(ユウガギクのようなものさえある)、葉のざらつきは両者の中間のようで、総苞の形状はシロヨメナで、総苞片の反り具合はノコンギクっぽい要素もあり、花は白色だが結構大きいのでノコンギクか、いやこれは雑種ではないのか、といった感じの、たいへん迷惑な個体がちらほら存在する。このようなものは、きっぱりと断定的にどちらだ、とは言いようがない。総合的に判断する以外に手はない。総合的な判断とは、平たく申せば、シロヨメナの要素が強ければシロヨメナ、ノコンギクの特長が多ければノコンギク、と結構適当なことを言うことを意味する。従って、同一個体を見ても「おそらくシロヨメナだ」と考える人と「ノコンギクではなかろうか」と言う人に分かれる事態が発生することも内包している。これ以上は、(経験を積んで目を養う以外に)どうしようもない。

ノコンギクとシロヨメナの典型的な葉の比較

ノコンギクとシロヨメナの典型的な葉の比較


シロヨメナは亜種だ変種だ品種だが多い。キクの仲間は交雑しやすい。ノコンギクはシロヨメナやらの雑種起源とされている。この三点をもってすれば、はっきりと見分けができないのは当然といえば当然。

本頁に記すシロヨメナの特長も、あくまでも傾向であって、ぴたりと当てはまってはくれない個体も存在することは予め承知しておかなければいけない。

茎は細く、ひょろっと直立する。が、自重や風で倒れ、曲がり、荒れる。美しいとは言い難い、荒れた姿のものが多い。自然状態では他の野草とまみれながらもたれながらひょろひょろっと伸びる感じのものが多い。と思いきやしっかりとほぼ直立するものもある。茎下部よりも茎上部でよく分枝(ぶんし)する。従って、頭でっかちで、バランス悪く、余計に直立しがたい。草丈は人の膝(ひざ)下(40cm)から腹(1m)くらい。

シロヨメナの直立した草姿 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナの直立した草姿 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

葉は互生で、茎下部から上部に至るまでほぼ均等にまんべんなく付く。全体的に葉数は(光合成で作られる養分はこれで足りるのかとちょっと心配になるほど)図体に対して少なめ。虫食いで葉数は更に減る。主たる茎から生え出る葉は大きめ(長さ10~15cm)、茎下部の葉は大きめ、ときに長さ20cmくらいはあろうかという巨大葉になる。葉の形状は細長めの披針形で、葉身中央より基部側が最も幅広となる。先端は長めに尖り気味。葉身基部は葉柄に流れて翼(よく)となり、葉柄は(短くあるといえばあるが)ないと感じるものが多い。鋸歯は(特に主たる茎に付く葉では)粗く鋭い傾向。枝先端の花に近い部分では葉は小さく、鋸歯もなくなる。葉色は、(日陰の植物に多く見られるような)暗い緑色。見た目に反して厚さは意外と薄めで、触ったざらざら感は弱い、ないしときにわずかにつるつる。但しノコンギクほどではないにせよざらざらする葉にもまま出くわす。葉の表側はやや光沢があるように感じるものも。支脈は葉の縁に達さず連続する環結脈(Brochidodromous)のため三行脈のようにも見える傾向。花時に根生葉(こんせいよう)なし。地下茎から出た子株がロゼットを作っており、葉は大きく、翼のある長い長い柄(え)を伴う。

若いシロヨメナの葉 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12

若いシロヨメナの葉 横浜市南区・こども植物園 2021/06/12

シロヨメナの典型的な葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナの典型的な葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナの典型的な葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナの典型的な葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナの茎中部の葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナの茎中部の葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナの茎下部の葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナの茎下部の葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナのよく見る感じの虫食い多い葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナのよく見る感じの虫食い多い葉 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナのノコンギク形の葉 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナのノコンギク形の葉 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナのやけに照りが強い葉 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナのやけに照りが強い葉 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

神奈川県内でも山地(丹沢、箱根)へ行くと、サガミギク(相模菊)、キントキシロヨメナ(金時白嫁菜)別名カミヤマシロヨメナ(神山白嫁菜)、という二変種がある。

シロヨメナの花

茎(枝)先端近くでよく分枝し、従って花序の枝は短めで、あまり横へ広がらないので、頭花(頭状花序)は密にまとまって咲く。花(舌状花)の色は白。ときに淡い紫色の花が咲くというが、基本的には白一択で考えておいてよい。筒状花(とうじょうか)は明るい黄色、但し咲き終わりが近づいてくると緑色に老けてシラヤマギクのような色になる。頭花は小さめで、直径2cm。もっと大きいものもあるので、花の大きさはあまり判断材料にはならない。冠毛(子房から生え出る綿毛)は長い。カントウヨメナ(関東嫁菜)およびユウガギク(柚香菊)は、平地の日当たり良い湿った場所(湿地周辺の草地、田んぼ周辺)に生え、冠毛がない(と思えるほど短い)ので、見分けは簡単。

シロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナ 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナ 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナ(頭花の直径2.5cm) 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナ(頭花の直径2.5cm) 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナ 横浜市金沢区/栄区・金沢市民の森 2021/10/30

シロヨメナ 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

シロヨメナ 二宮町・吾妻山公園 2021/10/28

総苞(そうほう)は、縦長で、やや細身。総苞片はやや細め。総苞片の先端は、尖り、黒っぽく染まったりそうでもなかったり、ふつうは反らない。

シロヨメナの総苞 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの総苞 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの総苞、茎の毛はノコンギク並みに多い 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの総苞、茎の毛はノコンギク並みに多い 平塚市/大磯町・高麗山公園 2021/11/02

シロヨメナの実

(ノギクの仲間としては)長い冠毛を伴う。

シロヨメナの実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06

#シロヨメナの実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06

シロヨメナの実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06

#シロヨメナの実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/11/06

シロヨメナの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/11/16

#シロヨメナの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/11/16

シロヨメナの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/11/16

#シロヨメナの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/11/16


横浜市磯子区/金沢区/栄区・横浜つながりの森(円海山~横浜自然観察の森の尾根道にたいへん多い)

平塚市/大磯町・高麗山公園(八俵山~湘南平の尾根道の平場周辺にのみ多い、ノコンギクと紛らわしいもの(雑種が疑われるもの)も結構多い)

吾妻山公園(展望台~釜野口にさほど多くなし、吾妻山公園シバザクラ園前のハイキングコース沿いに群生)、鎌倉広町緑地(山道になし)、#大船フラワーセンター(森の小道東側に多い、森の小道西側にはノコンギク、ロックガーデンにコンギク(花小さい)あり)

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

『山溪ハンディ図鑑 11 日本の野菊』 いがりまさし著 山と溪谷社発行(2007)

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