ゲンノショウコ

現の証拠 フウロソウ目/フウロソウ科/フウロソウ属 花期/7月下旬~11月上旬 結実期/10月中旬~11月
学名/Geranium thunbergii Siebold ex Lindl. & Paxton

薬用自生種保護

ゲンノショウコ 横須賀市・塚山公園 2017/10/12

ゲンノショウコ 横須賀市・塚山公園 2017/10/12

山野に生える多年草。日向(ひなた)の低草地のみならずやや湿った日陰にも生える。乾燥が続く場所はお嫌いなようで、葉がちりちりに枯れやすい。茎は地面を這うように倒れて長く伸び、環境が良いと意外とでかくなってあたかも大群落のような直径1mくらいの大株を一個体で形成することもある。基本的には這うので、高さはさほどなく膝(ひざ)下(40cm)くらいがふつうか。この手のかわいらしい花が咲く植物は皆ことごとく希少種となっているものであるが、ゲンノショウコは神奈川県内に広く分布がある普通種。湘南・鎌倉・三浦半島では特に三浦丘陵で比較的多く見つけることができるだろう。いわゆる里山地域の農地周辺にも生えていることがあるが、市街地にはない。ヒメウズ(姫烏頭)タチツボスミレ(立坪菫)と並んで、”自然豊か”を名乗るのであればこれくらいは最低限生えていてもらわねば困る、という指標になるだろう植物。(渋味成分としてお馴染みの)タンニンが多く含まれているため、乾燥させた葉が止瀉(ししゃ、下痢止め)に効く生薬(しょうやく)として利用される。セイロガン糖衣A(大幸薬品)にも補助的な成分として配合されている。ゲンノショウコという奇妙な名前の由来は、葉を煎じて飲めばたちまちのうちに効果が現れることから。ドクダミ(蕺草)センブリ(千振)と合わせて、日本三大薬草(日本三大民間薬)に挙げられる。誤ってフウロソウ(風露草)とも呼ばれることがあるらしいが、フウロソウは本来は近似の別種イブキフウロ(伊吹風露)の異名とのこと。なお近似種は皆、なんちゃらフウロという名前が付けられている。

ゲンノショウコの発芽(実生) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/03/09

#ゲンノショウコの発芽(実生) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/03/09

ゲンノショウコ(のち半年でこの四倍くらいの面積に巨大化した) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/04/05

#ゲンノショウコ(のち半年でこの四倍くらいの面積に巨大化した) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/04/05

ゲンノショウコ 鎌倉市・建長寺回春院参道 2019/10/03

ゲンノショウコ 鎌倉市・建長寺回春院参道 2019/10/03

日当たり良い農地周辺に生えたゲンノショウコ 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

日当たり良い農地周辺に生えたゲンノショウコ 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

ベニバナゲンノショウコ 鎌倉市・東慶寺 2020/10/06

#ベニバナゲンノショウコ 鎌倉市・東慶寺 2020/10/06

ベニバナゲンノショウコ 鎌倉市・東慶寺 2020/10/06

#ベニバナゲンノショウコ 鎌倉市・東慶寺 2020/10/06

ベニバナゲンノショウコ 鎌倉市・光則寺 2018/09/28

#ベニバナゲンノショウコ 鎌倉市・光則寺 2018/09/28

葉の切れ込みが深く全裂していないこと、三裂から五裂していること、葉に細さを感じないこと、茎・葉柄と萼片に開出毛(に見える腺毛)がたくさん生えていることを確認。そうでないものは他のフウロソウ(風露草)の仲間である疑いもあり。もしかしたら山地に生えるコフウロ(小風露)や、稀少種ミツバフウロ(三葉風露)の可能性も、ほぼないだろうがゼロではない。

ゲンノショウコ 葉山町・逗子市・森戸川源流 2017/09/26

ゲンノショウコの葉と、葉柄と萼片の開出毛(腺毛) 葉山町・逗子市・森戸川源流 2017/09/26

ゲンノショウコの茎・花柄・萼片の開出毛(腺毛) 富士山須走口・ふじあざみライン 2017/10/01

ゲンノショウコの茎・花柄・萼片の開出毛(腺毛) 富士山須走口・ふじあざみライン 2017/10/01

ゲンノショウコの葉柄と萼片に開出毛(腺毛)があまりないタイプ 茅ヶ崎市浜之郷 2021/09/19

#ゲンノショウコの葉柄と萼片に開出毛(腺毛)があまりないタイプ 茅ヶ崎市浜之郷 2021/09/19

ゲンノショウコの葉柄と萼片に開出毛(腺毛)がないタイプ 箱根湿生花園 2017/10/01

ゲンノショウコの葉柄と萼片に開出毛(腺毛)がないタイプ 箱根湿生花園 2017/10/01

ゲンノショウコの花

花色はふつう白色で、シロバナゲンノショウコ(白花現の証拠)と呼ばれることも。これに対し、どうも関西の方には多くあるようだが濃いピンク色(明るい赤紫色)の花を咲かせるものがあり、ベニバナゲンノショウコ(紅花現の証拠)という。神奈川県内の山野に自生しているのは専ら白花の方。ピンク花は栽培されることがある。

ゲンノショウコ 逗子市・池子の森自然公園 2017/10/09

ゲンノショウコ 逗子市・池子の森自然公園 2017/10/09

ゲンノショウコ 横須賀市・塚山公園 2017/10/12

ゲンノショウコ 横須賀市・塚山公園 2017/10/12

ゲンノショウコ 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

ゲンノショウコ 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

うっすらピンクがかったゲンノショウコ 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

うっすらピンクがかったゲンノショウコ 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

ベニバナゲンノショウコ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/08/02

ベニバナゲンノショウコ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/08/02

ベニバナゲンノショウコ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/08/02

ベニバナゲンノショウコ 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2018/08/02

ベニバナゲンノショウコ、開いてまだ間もないのか葯に花粉が多く残っている 鎌倉市・東慶寺 2020/10/06

#ベニバナゲンノショウコ、開いてまだ間もないのか葯に花粉が多く残っている 鎌倉市・東慶寺 2020/10/06

ベニバナゲンノショウコ 鎌倉市・東慶寺 2020/10/06

#ベニバナゲンノショウコ 鎌倉市・東慶寺 2020/10/06

ゲンノショウコの実

蒴果(さくか)は投石器のような仕組みになっており、熟して乾燥すると弾けてタネ(黒ゴマ(胡麻)のような小さな丸い粒)を放り投げる。タネ放出後はまるで五角の神輿屋根のような形状になるからおもしろい。この姿から別名ミコシグサ(神輿草)とも。よく種子を作り、よく発芽する。

ゲンノショウコの実 横浜市南区・こども植物園 2017/10/24

#ゲンノショウコの実 横浜市南区・こども植物園 2017/10/24

ゲンノショウコの種子を放出した後の実 横須賀市・鷹取山公園 2018/10/30

ゲンノショウコの種子を放出した後の実 横須賀市・鷹取山公園 2018/10/30

ゲンノショウコの種子を放出した後の実 横須賀市・鷹取山公園 2018/10/30

ゲンノショウコの種子を放出した後の実 横須賀市・鷹取山公園 2018/10/30

ゲンノショウコの種子を放出した後の実 横浜市金沢区・金沢自然公園 2020/11/30

ゲンノショウコの種子を放出した後の実 横浜市金沢区・金沢自然公園 2020/11/30

初夏の市街地などに似たような形状の実あらば、外来種アメリカフウロ(亜米利加風露)だろう。


横浜市栄区・#横浜自然観察の森(畑にベニバナ、アキアカネの丘(下)のクヌギの林側林縁部にベニバナ)、横浜市南区・#こども植物園(ベニバナ)

森戸川源流、#東慶寺(松岡宝蔵前庭にベニバナも)、#光則寺(ベニバナ)、鎌倉中央公園、清水谷(梅林)

横須賀市・鷹取山公園(鷹取第一配水池~摩崖仏)

松田町・松田山・中尾農道(国道246号線「桜観音前」交差点から最明寺史跡公園へのぼる農道沿い農地にうっすらピンク花)

参考資料

『牧野日本植物図鑑』 牧野富太郎著 北隆館発行(1940)

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