鏡芋 リンドウ目/キョウチクトウ科/ガガイモ属 花期/8月中旬~10月上旬 結実期/12月
有毒自生種
ガガイモ 茅ヶ崎市西久保 2018/08/18
ひょんな場所に生えている蔓性の多年草で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。湘南・鎌倉・三浦半島では川べりなどの水に近い場所に比較的多いか。丘陵地の林内や林縁部では見かけない。生育場所に大きな偏りがあるわけでなく、かといってどこにでも生えているわけでなく、従って探して見つけられるものでないが、(葉だけでガガイモと見分けられるのならば)意外とそこかしこでちょくちょく見かけることはある。数的には普通種。他の草木やらフェンスやらに絡まっている蔓植物なので人間からは鬱陶しがられて目の敵(かたき)にされやすく、夏場の刈払いで駆除されてしまうことが多い。花が咲いている途中で刈られてしまった、実ができるのを楽しみにしていたら刈られてしまった、なんていうことはざら。多年草でしっかり定着した場所ではよく茂りしつこい雑草と化すため同じ場所にまた来年生えてはくるだろうが、来年もまた刈られてしまうだろう。ガガイモを好んで栽培している公園や鎌倉の社寺はなく、あくまでも雑草の扱い。
不耕作田の草地に生えたガガイモ(白花) 茅ヶ崎市西久保 2019/08/25
川べりに生えたガガイモ、奥の道路は国道134号線の渚橋 逗子市・田越川河口 2019/09/01
葉は心形(しんけい)で明瞭に対生する。ヤマノイモ(山の芋)や、特にヘクソカズラ(屁糞葛)と紛らわしい。
ガガイモの葉 横浜市港北区・新横浜公園 2016/08/31
日陰がちな場所に生えたガガイモの色濃い葉 茅ヶ崎市西久保 2018/08/18
ガガイモという不思議な名前は、カガミイモから転じたらしい。名前の由来は諸説あり不明。まるで鏡にでも映したかのようにきれいに左右対称に生える対生の葉に因むのではないかと思っているが、そのような説を立てる者はどうもないらしい。葉がなんとなく似るヤマノイモに釣られたかあるいは大きな実が芋に見立てられたかよくわからないが、ガガイモは地中に芋は作らない。
ガガイモの、鏡にでも映したかのように左右対称な葉 茅ヶ崎市西久保 2018/08/20
ガガイモの葉は、主脈一本が直線的に白くくっきり表れる大きな特徴あり。托葉は、葉柄(ようへい)一本につき一対(二枚)生じる。葉は対生なので一ヶ所に四枚の托葉が集まることに。とはいえこの托葉はいつまでもあるわけではなく、葉腋から枝が伸びるとそれに生える一対の葉と変わる。となると元あった場所からは托葉が消滅することに。いずれにせよ、ヘクソカズラの托葉とは様子が異なるため、両者の見分けの大きな一助となる。
ガガイモの托葉 茅ヶ崎市西久保 2019/06/20
ガガイモの托葉があった場所から伸びる枝と葉(右)、左側は托葉がなくなっている 茅ヶ崎市西久保 2019/06/20
参考)ガガイモに似るが主脈が明瞭に白くは目立たず托葉も異なるヘクソカズラの葉 茅ヶ崎市 2019/06/08
葉には特に晩夏以降、黒とオレンジ色のヒメジュウジナガカメムシ(姫十字長亀虫)が群れていることがある。人が近づくとえっちらおっちら逃げ隠れし始めるだろう。
ガガイモの葉に付いたヒメジュウジナガカメムシ 茅ヶ崎市西久保 2018/10/31
茎などを切断すると白色の乳液がしみ出てくるのもガガイモの大きな特徴。この手の汁は大抵は触るとべったべたで、人(あるいは触れた場所)によっては皮膚がかぶれることがあったりするので注意したい。ヘクソカズラは切断しても白色の液を出さず、屁糞臭を放つ。
ガガイモの茎から出る白い乳液 茅ヶ崎市西久保 2018/08/20
ガガイモの花
蔓植物にありがちな性質として、大きく成長できた株だけが花を咲かせることができる。従ってガガイモの花は少しばかり稀少。花冠は五裂し星形になるので、花弁が五枚あるように見える。なんといっても白い毛がたくさん生えるちょっと異様な姿が印象的。妖艶で美しいと感じるか、ヒトデ(人手)のように見えて気持ち悪いと感じるか、意見は分かれそう。花冠はふつう小豆(あずき)色を帯びるが、白っぽいもの、白花もある。同一個体でも花色の濃淡は変異が出る。時季よっても花色が変わるような気がしている。
ガガイモの蕾(オレンジ色の粒々はキョウチクトウアブラムシ) 茅ヶ崎市西久保 2018/08/18
ガガイモ 横浜市港北区・新横浜公園 2016/08/31
ガガイモ 引地川親水公園湿性植物園 2016/08/31
花に鼻を近づけて意識して嗅いでみるなら、爽やかな心地よい甘い香りあり。通りすがりにふわっと香ってくるほど強い芳香ではない。
ガガイモ 茅ヶ崎市西久保 2018/08/18
ガガイモ 茅ヶ崎市西久保 2018/08/18
ガガイモ 茅ヶ崎市西久保 2018/09/24
両性花と一回り小さい雄花があるらしい。ただし外観からその違いはわからない。
ガガイモの実
花は数多く咲いても、実の付きはかなり悪い。花序が二、三十個咲いて、実がようやく一個できるくらいの低確率。ただし一つの実の中に種子は多数あり。
ガガイモの未熟な実 茅ヶ崎市西久保 2018/11/25
ガガイモの未熟な実 茅ヶ崎市西久保 2018/10/15
冬になって葉が枯れて乾燥してくると実が割れ、中に納まっていた種子を放出する。種子にはふわふわの種髪(しゅはつ、冠毛は実に付く毛)が付いており、風に煽られ遠くの地まで飛んで行く。
ガガイモの完熟した実からこぼれ出た種子 藤沢市・引地川親水公園湿性植物園 2016/12/01
ガガイモの完熟した実からこぼれ出た種子 藤沢市・引地川親水公園湿性植物園 2016/12/01
真冬になって枯れたガガイモの株、残っていた実もじきに干からびて裂開する 茅ヶ崎市西久保 2019/01/10
ガガイモの完熟して裂開した実をぶら下げている枯れた株 茅ヶ崎市西久保 2019/01/10
ガガイモの完熟して裂開した実 茅ヶ崎市西久保 2019/01/10
ガガイモの種子 藤沢市・引地川親水公園湿性植物園 2016/12/01
ケサランパサラン
白いふわふわの正体不明浮遊物体をいう。語源等不明。ケセランパサランとも。
ガガイモの種子から離脱した綿毛もその一候補か。極めて軽量なので、風が吹いていないように思えるところでもふわふわ~っと空気中を気まぐれに漂う不思議さあり。
今後は、住宅地を漂うようになっても来たアメリカオニアザミ(あめりか鬼薊)の種子(のように見える痩果(そうか))が注目を浴びるようになりそうな気配。
キジョラン(鬼女蘭)、コバノカモメヅル(小葉の鴎蔓)、テイカカズラ(定家葛)なども似たような冠毛付きの種子を作る。
横浜市港北区・新横浜公園(フェンスなどに絡まって多い)
引地川親水公園湿性植物園(ヨシに絡まって多い、結実する)、茅ヶ崎市萩園/西久保・小出川左岸(湘南タゲリ米の里西側に多数、土手上の刈払い後に露になるが更なる刈払いで全滅させられる)
逗子市・田越川河口(レッドロブスター逗子店上流のフェンスに)、茅ヶ崎市西久保・新湘南バイパス側道(茅ケ崎支援学校(旧茅ケ崎養護学校)東側に少数、結実する)