鬼女蘭 リンドウ目/キョウチクトウ科/キジョラン属 花期/7月中旬~10月 結実期/11月中旬~1月上旬
学名/Marsdenia tomentosa C.Morren & Decne.
有毒稀少保護
キジョランの葉 小田原市早川 2023/07/19
丘陵地や山地の林内や林縁部に生える常緑の蔓性の木本(もくほん、藤本(とうほん))で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。多年草といわれることが多いが、大きく成長すると茎はしっかり木質化する。ガガイモ(鏡芋)の近似種で、ラン(蘭)の仲間ではない。地表を這うこともあるが、基本的には他の樹木やフェンスなどにひょろひょろ登る。神奈川県内に分布は点々とあるもやや偏っており、見かける機会は滅多にないが、生息地には意外と多くちょこちょこと生えていて普通種。比較的幼株は生えているが、花が咲いて実がなるほどの大株はかなり希。蔓植物なので、人の手が入る場所では目障りなものとして刈払われてしまう。
キジョラン 横須賀市・観音崎公園 2022/06/13
石塀を登るキジョラン 小田原市早川 2018/12/01
石塀を登るキジョラン 小田原市早川 2018/12/01
キジョラン 小田原市早川 2023/08/01
蕾を付けたキジョラン 小田原市早川 2023/07/02
開花中のキジョラン 小田原市早川 2023/08/11
開花中のキジョラン 小田原市早川 2023/08/11
実がなったキジョラン 小田原市早川 2023/11/21
葉は対生で、丸々とした幅広なもの。葉身(ようしん)基部は円形~切形(せっけい)~浅い心形(しんけい)。やや厚みがあり、柔らかく、無毛なので表面は照りつるつるしている。質感は(どこにでもある)アオキ(青木)の葉に近い。
キジョランの葉 小田原市早川 2023/08/01
キジョランの葉 小田原市早川 2023/07/24
キジョランの葉 小田原市早川・関白林道 2018/12/01
キジョランの葉 小田原市早川 2018/08/26
キジョランの葉裏 小田原市早川 2018/08/26
キジョランの葉はアサギマダラ(浅葱斑)の幼虫の食草になることで知られる。有名であるが故に葉を千切ってみて白色の乳液が出るかどうか確認する高齢ハイカーがたくさんいるようだが、キジョランであるかどうかは似たような形状と大きさの葉が(神奈川県内では)他にないため、傷めずともその見た目だけで判断可能である。強いていうならオオバウマノスズクサ(大葉馬の鈴草)が大きな心形の葉を作ることがあるものの、互生で、短毛が密生しているため光沢がなく手触りもざらざらしているので、違いは明瞭。
ハイカーに千切られた痕のあるキジョランの葉(丸形の穴は虫の食痕) 小田原市早川 2018/11/02
ハイカーに千切られた痕のあるキジョランの葉(丸形の穴は虫の食痕) 小田原市早川 2018/12/01
キジョランの葉に付いたアサギマダラの幼虫 東京都八王子市・奥高尾・夕やけ小やけふれあいの里 2019/03/08
キジョランの葉に付いたアサギマダラの幼虫 東京都八王子市・奥高尾・夕やけ小やけふれあいの里 2019/03/08
キジョランの茎の先端 小田原市早川 2023/07/24
キジョランの茎 小田原市早川 2023/11/21
キジョランの茎 小田原市早川 2023/11/21
キジョランの茎を特徴付ける枝の脱落痕 小田原市早川 2023/11/21
トウダイグサ科の植物と同様に、茎や葉が傷つけられると白色の乳液を出す特徴がある。この手の汁は体質によってはかぶれることがあるので注意したい。また有毒成分を含んでいるので、舐めたり、汁気が付いた手で目をこするなどしないこと。
キジョランの切断した葉柄からしたたる白色の乳液(既に葉を失っていた柄を切った) 小田原市早川 2018/08/26
キジョランの花
葉が大きい割に花は小さく小指の爪サイズ。花弁は平開しない。株数そのものが多くない上に開花できるほど大株に育ったものは更に少なく、キジョランの花はなかなかお目にはかかれないだろう。
キジョランの蕾 小田原市早川 2023/07/02
キジョラン 小田原市早川 2023/07/19
キジョラン 小田原市早川 2023/08/01
キジョラン 小田原市早川 2023/08/11
キジョラン 小田原市早川 2023/08/11
キジョラン 小田原市早川 2023/10/02
キジョラン 小田原市早川 2023/10/02
キジョラン 小田原市早川 2023/10/02
キジョラン 小田原市早川 2023/08/01
花期はおよそ夏。気が早く梅雨の頃から花開いていたり、冬なのに咲いていることもある。
キジョランの遅い時期に咲いた花 小田原市早川 2018/12/01
キジョランの実
ガガイモに類似した実ができる。実が大きく膨らんで熟すのは花が咲いた翌年の秋以降、と聞いているが、観察した限りではそのような性質は確認できず、ふつうに開花した年の晩秋から初冬にかけて膨らんで熟したように思われた。果実は緑色のまま熟す。乾燥するとぱかっと割れて中から白色の綿毛が付いた種子が放出されるが、その様子が鬼女の姿に見立てられたようだ。鬼女は鬼婆(おにばば)の若いやつ。種子に付く綿毛は種髪(しゅはつ)という(冠毛(かんもう)は果実に付く毛)。実ができるほどよく成長した株は本当に希有なため、キジョランの実にお目にかかれる機会はほとんどないに等しい。
キジョランの実 小田原市早川 2023/11/21
キジョランの実 小田原市早川 2023/12/10
キジョランの実 小田原市早川 2023/11/21
キジョランの熟して裂開した実 小田原市早川 2023/12/10
キジョランの種髪 小田原市早川 2023/12/10
キジョランの熟して裂開した実 小田原市早川 2023/12/10
キジョランの実の残骸 小田原市早川 2023/12/14
キジョランの種子 小田原市早川 2023/12/10
キジョランの種子 小田原市早川 2023/12/10
キジョランの種子 小田原市早川 2023/12/10
キジョランの実生 茅ヶ崎市浜之郷 2024/05/24
#キジョランの実生の幼株(2株) 茅ヶ崎市浜之郷 2024/06/13
#キジョランの幼株 茅ヶ崎市浜之郷 2024/06/29
#キジョランの幼株の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2024/06/29
#キジョランの幼株 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/15
東京都八王子市・#東京薬科大学薬用植物園(結実する)、東京都八王子市上恩方町・夕やけ小やけふれあいの里(散策路(3号路・4号路)頂上から黒ドッケ方面へ ※「登山のため通り抜けたい」旨を告げれば夕やけ小やけふれあいの里の入場料200円は不要)、東京都八王子市・高尾山(登り口から山頂に普通、実は希少)、横浜市緑区・四季の森公園(北口外の倉庫裏、観察不適)、横浜市栄区・栄プール~天園
猿島、観音崎公園、三浦アルプス、森戸川源流、高麗山公園
小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース(川側に点在=歩道確保のため定期的に刈払いされてしまう、早川石丁場群付近 ※真夏は吸血アブが飛ぶので要注意)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)