ユウガオ(カンピョウ)

夕顔 ウリ目/ウリ科/ユウガオ属 花期/6月~8月 結実期/7月~9月
学名(ナガユウガオ)/Lagenaria siceraria (Molina) Standl. var. hispida (Thunb.) H.Hara
 〃 (マルユウガオ)/Lagenaria siceraria (Molina) Standl. var. depressa (Ser.) H.Hara

危険食用改良種稀少

ユウガオ(カンピョウ)の雄花 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

#ユウガオ(カンピョウ)の雄花 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

農作物(のうさくぶつ)として畑で栽培される、アフリカ(またはインド)を原産とするとかいう蔓性の一年草で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)の雌雄異花。カボチャ(南瓜)だスイカ(西瓜)だの比で、あるいはアレチウリ(荒れ地瓜)のごとく場所を取る大型植物である。果実を細長く削って乾燥させたものが、干瓢(かんぴょう)。巻き寿司(海苔巻き、細巻)「かんぴょう巻き」の中の具にされたり、ロールキャベツやおでん種(だね)の餅巾着を縛る紐(ひも)として使われる。このことから、別名カンピョウ。主な産地は栃木県。元は有毒なヒョウタン(瓢箪)と同一種という。そのうち毒性の低いものが選抜して栽培され、現在の無毒で食用になるユウガオになった。ユウガオは主に、実が細長いナガユウガオ(長夕顔)と、実が丸っこいマルユウガオ(丸夕顔)の、二系統あり。干瓢に使われるのはふつうマルユウガオの方で、その実は地方によってフクベ(瓢)とも呼ばれる。ヒョウタン同様に完熟して硬くなった実が器に加工されるのもマルユウガオの方。どちらも若い実は食用になり、主に煮物にされる。春蒔きの種子がホームセンターの園芸コーナーでも売られていることがある。苗は初夏にゴーヤの隣辺りに並ぶことはあるのかもしれないが、見かけない。シロバナユウガオ(白花夕顔)アカバナユウガオ(赤花夕顔)の苗がユウガオの名前で売られることの方が多いので、騙されないように。”ウリ科”や”カンピョウ”の注意書きがないユウガオは、本種ではない可能性の方が高い。湘南・鎌倉・三浦半島では、畑で栽培されているものも見かけない。実がスーパーマーケットの野菜売り場に並んでいることもないような気がする。平たくいえば、ユウガオを食べる食習慣がないのだろう。山形県だ秋田県だの東北地方、あるいは山梨県の山中湖あたりでは郷土料理としてふつうに食べられていると聞く。なお、スイカの接木苗(つぎきなえ)を買ったらその台木(だいぎ)として使われていたユウガオが芽吹いた、近所の人に頂いた、といった出所に信用の置けないものは特に、苦みを感じたら(ユウガオであっても)有毒であるので食べてはいけない。嘔吐(おうと)や下痢といった食中毒を引き起こす可能性。厚生労働省によれば平成25年(2013)から令和4年(2022)の十年間に3件(9人)の食中毒事件を発生させている。

ヤマノイモ用に立てたネット支柱を占拠したユウガオ(カンピョウ) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/07

#ヤマノイモ用に立てたネット支柱を占拠した#ユウガオ(カンピョウ) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/07

三種もあって紛らわしいユウガオ


ユウガオと呼ばれる植物は三種類ある。
1)ウリ科のユウガオ
2)アサガオ(朝顔)の仲間のシロバナユウガオ
3)アサガオの仲間のアカバナユウガオ
学術的な意味でユウガオといったら”1)”であろうが、園芸の世界でユウガオといったら”2)”である。


1)ユウガオ

果実が食用になる農作物として畑で栽培される、大型な蔓植物。ウリ科。花はウリ科の形状で白色、夜咲き。実は巨大なウリ(瓜)で、果肉を細長く削って干したものが干瓢(かんぴょう)になる。従って、植物自体としてもカンピョウと呼ばれることがある。


2)シロバナユウガオ

本名ヨルガオ(夜顔)。花を観賞するために民家の庭などで栽培される、蔓植物。ヒルガオ科(アサガオの仲間)。花はアサガオに似た形状で白色、夜咲き。実はアサガオに近い形状。


3)アカバナユウガオ

本名ハリアサガオ(針朝顔)。花を観賞するために民家の庭などで栽培される、蔓植物。ヒルガオ科(アサガオの仲間)。花はアサガオに似た形状で赤紫色、夜咲き。実はアサガオに近い形状。


ユウガオを紹介するウェブサイトで、花は”2)シロバナユウガオ”のものを掲載し、実は”1)ユウガオ”のウリの写真を載せている、という無茶苦茶な誤りがたいへん多い。
なおヒルガオ(昼顔)はアサガオの仲間で、ピンク花を昼咲きさせる蔓性の雑草。アサガオ・ヒルガオ・ユウガオといったガオ系で、唯一”1)ユウガオ”のみがウリ科で、他はすべてヒルガオ科(アサガオの仲間)である。

ユウガオ(カンピョウ)の種子 茅ヶ崎市浜之郷 2021/04/21

#ユウガオ(カンピョウ)の種子 茅ヶ崎市浜之郷 2021/04/21

若いユウガオ(カンピョウ)、右端はウリハムシ食害 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/03

若い#ユウガオ(カンピョウ)、右端はウリハムシ食害 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/03

大きく成長してきたユウガオ(カンピョウ) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

大きく成長してきた#ユウガオ(カンピョウ) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

葉は何ヶ所か角張るおよそ心形。人の掌(てのひら)など比べ物にならなく大きい。特に小さな苗のうちはウリハムシ(瓜葉虫)による食害に注意する。

ユウガオ(カンピョウ)の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/15

#ユウガオ(カンピョウ)の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/15

ユウガオ(カンピョウ)の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

#ユウガオ(カンピョウ)の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

蔓性で、茎は太い。成長は早く、毎日20cmくらいは伸びるのではないか。地面を這うが、支柱等あらば巻きひげでがっちり掴んで上に向かってもよく登る。実がなれば総重量はうん10kgにもなるので、一般的な園芸支柱では耐えられない可能性。頑丈な支柱(ないし犠牲にする樹木)を用意できるなら、狭い場所でも栽培は可能。但し、茎は軟らかく、折れやすいので注意。

令和2年(2020)7月、長野県安曇野市(あづみの-)の「JA松本ハイランド ファーマーズガーデンあかしな」(農産物直売所)でユウガオを購入し炒め物にして食べた70代の二名が嘔吐や下痢などの食中毒を起こし一時入院。ユウガオは苦みが強かったという。(同年7月11日 長野県発表)

ユウガオ(カンピョウ)の花

葉腋(ようえき)から長い柄(え)を伸ばして、その先端に花を一つ咲かせる。花はウリの仲間らしい形状で、品種にもよろうが花径10cm程度。白色。夕方から咲き始めて翌朝の日の出と共にしぼむ一日花(一夜花)。摘心(てきしん、ピンチ)を行わないと雄花ばっかり咲くらしいので、ある程度成長した段階(大きな葉が五枚程度になったあたり)で茎の頭をちょん切り、脇芽(わきめ)を成長させること。雌花は花の直下にいかにも膨らんで来そうな子房がある。なければ雄花。人工授粉(花合わせ)は夕方(真っ暗になる直前)に行う。

ユウガオ(カンピョウ)の雄花の蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

#ユウガオ(カンピョウ)の雄花の蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

ユウガオ(カンピョウ)の雄花 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

#ユウガオ(カンピョウ)の雄花 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

ユウガオ(カンピョウ)の雄花 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

#ユウガオ(カンピョウ)の雄花 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

ユウガオ(カンピョウ)の雌花の蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

#ユウガオ(カンピョウ)の雌花の蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2021/06/20

ユウガオ(カンピョウ)の雌花 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/17

#ユウガオ(カンピョウ)の雌花 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/17

心あてにそれかとぞ見る 白露の光そへたる夕顔の花──
ユウガオの花といえば、平安時代に紫式部が作った『源氏物語』の第四帖(じょう)「夕顔」を多くの人が思い浮かべるに違いない。身をやつしていながらも教養を身に着けていたがために光源氏に愛されるも、たちまち六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)の生霊に恨み殺されてしまう、儚い女を表現した花である。

ユウガオ(カンピョウ)の実

前述の通り、長細い実がなるものと丸っこいものの、二系統あり。大きさは品種によるが、細長型で長さ40cm以上と立派なダイコン(大根)サイズ、丸型では直径30cmでスイカサイズになる。どちらも巨大で、重量は5kgとか10kgとか、品種によっては遙かにそれ以上。そこまで待たずともある程度大きくなったものは収穫して”ひき肉あんかけ”などの煮物にできる。長く煮込めばナス(茄子)のようにとろっとろからべろんべろんに。前述の通り、はっきりとした苦みが感じられたら有毒なので食べてはいけない。無毒なものは、(ほんの僅かに癖を感じないでもないかもしれないが)ほぼ無味。

まずまず大きく成長したユウガオ(カンピョウ)の未熟な実(長さ30cm) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/07

まずまず大きく成長した#ユウガオ(カンピョウ)の未熟な実(長さ30cm) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/07

ユウガオ(カンピョウ)の未熟な実(長さ40cm) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/23

#ユウガオ(カンピョウ)の未熟な実(長さ40cm) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/23

ユウガオ(カンピョウ)の未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/20

#ユウガオ(カンピョウ)の未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/20

ユウガオ(カンピョウ)の未熟な実の断面 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/30

#ユウガオ(カンピョウ)の未熟な実の断面 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/30

ユウガオ(カンピョウ)の豚ひき肉入りあんかけ 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/09

#ユウガオ(カンピョウ)の豚ひき肉入りあんかけ 茅ヶ崎市浜之郷 2021/07/09

トウガン(冬瓜)は別種。

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

ヒョウタン

アサガオ

ヒルガオ

ヨルガオ(シロバナユウガオ)

ヘチマ

ハヤトウリ

アレチウリ