タウコギ

田五加木 キク目/キク科/センダングサ属 花期/10月 結実期/10月末~11月

薬用自生種稀少保護

タウコギ 藤沢市大庭 2018/10/16

タウコギ 藤沢市大庭 2018/10/16

湿地や田んぼに生える一年草。今となってはアメリカセンダングサ(アメリカ栴檀草)に非常によく似ているもの、と形容するとイメージしやすいか。湿った場所に生えるという点で侵略的外来種であるアメリカセンダングサに生息場所を追われ、やや乾燥した畦の上などでは同じく侵略的外来種であるコセンダングサ(小栴檀草)に終われ、水稲(すいとう)農家からはイネ(稲)の発育を阻害して収穫の際には邪魔になる迷惑雑草として駆除されて、数を大きく減らして今日(こんにち)に至る。田んぼそのものの減少に歯止めがかからない神奈川県下にあって、少なくとも湘南・鎌倉・三浦半島では近い将来に絶滅することも視野に入ってきているのではないか。なおタウコギは神奈川県内で見られるセンダングサの仲間としては唯一の在来種である。古い時代に日本へ入ってきたものとも。

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

田んぼの畔とイネの間に生えたタウコギ(葉の傷みは台風塩害による) 藤沢市大庭 2018/10/16

田んぼの畔とイネの間に生えたタウコギ(葉の傷みは台風塩害による) 藤沢市大庭 2018/10/16

プランターが小さすぎてやや細身に育ったタウコギ(葉の紅葉は寒さによる) 藤沢市大庭産 2019/11/09

プランターが小さすぎてやや細身に育った#タウコギ(葉の紅葉は寒さによる) 藤沢市大庭産 2019/11/09

9月中旬以降、イネ刈りが近づいてくる頃には田んぼから水が抜かれるが、これに伴ってタウコギは威勢よく成長してくるか。草丈はおよそ人の膝(ひざ)程度。イネより、アメリカセンダングサより背丈は低い。アメリカセンダングサは茎や葉柄(ようへい)が細いためひょろっとした姿であるのに対し、タウコギはちょっとずんぐりむっくりなメタボリック体形に感じられるかもしれない。茎はやや太め。茎の色は基本緑色で赤みがかる感じ。アメリカセンダングサのように暗褐色に染まるほどの色付きでなし。茎の断面は円形。アメリカセンダングサの上部の若い茎には稜(りょう、出っ張り)があることがある。

田んぼの畔とイネの間に生えたタウコギ 藤沢市大庭 2018/10/16

田んぼの畔とイネの間に生えたタウコギ 藤沢市大庭 2018/10/16

アメリカセンダングサとタウコギの比較 藤沢市大庭 2019/10/10

アメリカセンダングサとタウコギの比較 藤沢市大庭 2019/10/10

葉はタウコギの方が大きめ。鋸歯もやや大きめで粗(あら)め。羽状に三裂することがあるためアメリカセンダングサの葉に似ていないでもないが、タウコギは積極的には三裂せず、大きく成長した葉がしぶしぶ三つに分かれてゆく感じ。アメリカセンダングサはしっかり羽状に三裂ないし五裂する。タウコギの葉柄には翼(よく)がある点も大きな見分けの要素。アメリカセンダングサも頂小葉の柄(え)には翼ができることはあるが、葉柄には翼は(小さいために)ないように感じられ細さ長さばかりが際立って感じられる。

タウコギの三裂しない葉 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギの三裂しない葉 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギの葉 藤沢市大庭 2018/10/16

タウコギの葉 藤沢市大庭 2018/10/16

タウコギの三裂気味になった葉 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギの三裂気味になった葉 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギの三裂する葉 藤沢市大庭 2018/10/16

タウコギの三裂する葉 藤沢市大庭 2018/10/16

タウコギの葉(葉の紅葉は寒さによる) 藤沢市大庭産 2019/11/09

#タウコギの葉(葉の紅葉は寒さによる) 藤沢市大庭産 2019/11/09

タウコギの花

花の周りを総苞片が取り囲んでおり、アメリカセンダングサにそっくり。タウコギの花の方が若干大きめではあるが、見分ける際の決め手にはならない。茎頂部の花は株が若いうちに真っ先に咲くため、大きく成長した頃にはもう若い実になりかけているかもしれない。見頃は10月上旬。その後は葉腋(ようえき)から出た花が咲いてゆく。

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

若めのタウコギ 藤沢市大庭 2018/10/16

若めのタウコギ 藤沢市大庭 2018/10/16

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギ 藤沢市大庭 2019/10/10

タウコギ 藤沢市大庭産 2019/11/09

#タウコギ 藤沢市大庭産 2019/11/09

ほぼ同時期に丘陵地のサイキングコース沿いなどで見られる同系統の花はメナモミ(豨薟)の仲間か。

タウコギの実

きれいに咲いてから約一ヶ月で種子(に見える痩果(そうか))が熟す。アメリカセンダングサとほぼ同形で、刺(とげ)は二本。刺は鋭く、指にもざくざくよく刺さる。カモ(鴨)などの羽毛に突き刺さって遠方まで運んでもらおうという作戦なのだろう。

タウコギの実 藤沢市大庭 2018/11/16

タウコギの実 藤沢市大庭 2018/11/16

タウコギの熟した実 藤沢市大庭 2018/11/24

タウコギの熟した実 藤沢市大庭 2018/11/24

タウコギの熟した実 藤沢市大庭 2018/11/24

タウコギの熟した実 藤沢市大庭 2018/11/24

タウコギは開花時期が遅いため、種子ができる時期も遅い。これが致命的で、実が熟す前にイネの収穫期を迎えてしまう。イネ刈り前には必ず農家が除草作業を一生懸命行うので、タウコギは種子を散布する前に引っこ抜かれてしまう運命に。一年草なので、根茎が土中に残っていて同じ場所からまた来年生えてくるということはなく、種子を付けさせてもらえないことが数の減少に直結してしまっているように思われる。


横浜市戸塚区・#俣野園(種子を送付したので栽培しているかもしれない)

藤沢市大庭・引地川親水公園南側の田んぼ(平成30年(2018)10月 ごく一部の限られた区画のみに僅少、一部の区画では意図的に引っこ抜かずに残しておいてくれているか)

引地川親水公園大庭遊水地(平成30年(2018)10月 なし)、寒川町田端(令和元年(2019)10月 田んぼになし)

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

アメリカセンダングサ

コセンダングサ

メナモミ

キンバイタウコギ