タマナワザクラ

玉縄桜 バラ目/バラ科/サクラ属 花期/2月下旬~3月中旬 結実期/5月上旬~中旬
学名/Cerasus × yedoensis ‘Tamanawa-zakura’

改良種

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

園芸栽培される落葉高木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。サクラ(桜)の、鎌倉市を発祥とする一品種。大船フラワーセンターがソメイヨシノ(染井吉野)の自然交雑の実生(みしょう、種子が発芽したもの)株を育てていたところ、ソメイヨシノより半月ほど発芽が早く花も早咲きする一本を発見。これが、大船フラワーセンターのある玉縄の地名にちなんで’玉縄桜’と命名された。ソメイヨシノにオオカンザクラ(大寒桜)が入っているのではないかといわれている。園内にオオカンザクラが一本、加えてオオカンザクラの実生(クローンを増やす挿し木などと違って交雑している可能性が高い)が一本あるので、片親はもしかしたらこれかもしれない。湘南・鎌倉・三浦半島では、カワヅザクラ(河津桜)の次に咲くソメイヨシノらしきサクラがタマナワザクラ、と覚えておくとよい。※正確な品種名は漢字表記であるが、本頁ではカタカナで記す。なおタマナワサクラとの読み方は誤り。

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター玉縄桜広場 2020/02/24

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター玉縄桜広場 2020/02/24

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

玉縄(たまなわ)

JR東海道本線「大船」駅西口方面の鎌倉市域一帯をひっくるめて指す地名。具体的には、鎌倉市岡本、玉縄、植木(うえき)、城廻(しろめぐり)、関谷(せきや)地区の総称である。


戦国時代草創期、伊豆国から相模国に進出してきた伊勢盛時(宗瑞、のちに北条早雲と俗称される)が三浦半島を拠点とする三浦義同(よしあつ、道寸)を攻略するために、小田原城の出城(でじろ)として永正9年(1512)玉縄城を築城。現在清泉女学院高校(せいせん-)となっている場所が玉縄城址(通常非公開)。一般の観光客が見ておもしろいと思うだろうめぼしい遺構は残っていない。
・玉縄城初代城主=(盛時の次男)北条氏時
・二代城主=(盛時の嫡男氏綱の三男)北条為昌
・三代城主=(若くして死んだ為昌を補佐していた)北条綱成
・四代城主=(綱成の嫡男)北条氏繁
・五代城主=(氏繁の嫡男)北条氏舜(うじとし)
・六代城主=(氏繁の次男)北条氏勝

天正18年(1590)豊臣秀吉による小田原征伐に伴い降伏開城。玉縄城は関東移封(いほう)となった徳川家康の支配下に入り、家康のブレーンであった本多正信が一万石の所領を得て入城。のち長沢松平家の玉縄藩となるも三代で移封となり、元禄16年(1703)廃城廃藩。


明治22年(1889)岡本村・城廻村・植木村・関谷村が合併して神奈川県鎌倉郡玉縄村に。
昭和8年(1933)鎌倉郡大船町に編入される。
昭和23年(1948)鎌倉市に編入される。

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

昭和44年(1969)大船フラワーセンター(当時は神奈川県立フラワーセンター大船植物園)がタマナワザクラを発見。昭和49年(1974)初開花。平成2年(1990)神奈川県が品種登録。当初はじつはすぐ近くを流れる柏尾川に因んでカシオザクラ(柏尾桜、長野県などにあるカシオザクラはカスミザクラ系の別種)と呼んでいたが、カシオ計算機(CASIO)の名が世に知れ渡るようになってから(大船が三菱電機のお膝元であることから忖度があったか)改名された。’鎌倉桜’としなかったのは、玉縄地域が観光客が多数押し寄せる鎌倉中心部からは完全に隔離したところにあり、鎌倉時代の源頼朝ないし三浦氏や北条氏などよりも戦国時代の伊勢氏(小田原北条氏)にゆかりが強い土地柄であるという強い認識を誇りとしている土地柄ゆえか。のち地元の有志「玉縄桜をひろめる会」が精力的に普及活動を行い、鎌倉市内に限らず広く苗の植樹を進めた。方々に五百本以上は植えられたはずである。秦野市内の公園だとか、県外のひょんな場所にも「玉縄桜」の樹名板が掛けられた若木が立っていることがあり、こんなところにまでとじつにびっくりさせられる。じつは千本桜と称されるように(背景となるロケーションも考えた上で)一ヶ所に多数本をまとめて植えた方が名所になりうるというお願いをしたことあるも、広範囲に分散させて頒布することで知名度の向上を図りたいとのことで各所に二三本ずつ植える手法が採られた。なお「玉縄桜をひろめる会」は平成29年(2017)に約十一年続いた活動を終了し解散。同事業は鎌倉大船ロータリークラブが”玉縄桜100年の杜”プロジェクトと称して継承した。

タマナワザクラの原木 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/03/09

#タマナワザクラの原木 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/03/09

去年の台風で一度は倒れながらも枯死は免れたタマナワザクラの原木 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

去年の台風で一度は倒れながらも枯死は免れた#タマナワザクラの原木 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

タマナワザクラの二代目シンボルツリー 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

#タマナワザクラの二代目シンボルツリー 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

大船フラワーセンター


大正11年(1922) 神奈川県農事試験場が本地へ転入してくる。
昭和28年(1953) 神奈川県農業試験場に改称。
昭和34年(1959) 神奈川県農業試験場は平塚市へ移転。

なお農業試験場は統合改称移転編入を繰り返し、神奈川県農業技術センター(平塚市上吉沢1617)として存続している。


昭和37年(1962) 跡地に神奈川県立フラワーセンター大船植物園開設。

平成30年(2018)4月1日 リニューアルオープン。正式名称を神奈川県立大船フラワーセンターに変更。なお大船フラワーセンターはこれまでも通称として用いられていたものである。ネーミングライツ制度に基づき愛称は日比谷花壇大船フラワーセンターに。俗称は今まで通りフラセン。

タマナワザクラ 鎌倉市・大船観音寺下 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船観音寺下 2020/02/21

タマナワザクラ 鎌倉市・龍宝寺庫裏 2019/03/09

#タマナワザクラ 鎌倉市・龍宝寺庫裏 2019/03/09

タマナワザクラ ひらつか総合公園 2017/03/08

#タマナワザクラ ひらつか総合公園 2017/03/08

タマナワザクラ ひらつか総合公園 2017/03/08

#タマナワザクラ ひらつか総合公園 2017/03/08

葉は花のあとで展開。ソメイヨシノよりも長い。

タマナワザクラの葉 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/04/09

#タマナワザクラの葉 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/04/09

タマナワザクラの長めの葉 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/05/17

#タマナワザクラの長めの葉 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/05/17

タマナワザクラの花

タマナワザクラの最大の特徴は、ソメイヨシノと花色が同じ系統でありながら、ソメイヨシノよりかなり早咲きであること。先取りして楽しめることが売りである。そして、ソメイヨシノの開花期間が約十日間であるのに対し、タマナワザクラは約三十日間も開花し続けると喧伝(けんでん)されている。これは開花がまだ少し寒い時季から始まるため一気にぶわっと満開にはならず少し時間を要すること、また散るのもゆっくりになるためである。実際のところは、満開の期間は一週間程度である。二月下旬より咲き始めるが見頃は三月に入ってから。

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21 暖冬

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

雄蕊の花糸(かし)が白く葯(やく)が黄色いうちが、見るにきれいな若い花。若い花が一斉にふわっふわに咲いて満開しているとたいへん華やかで美しい。

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

雄蕊が花粉を飛ばし終わって、花糸や花の中心部が赤みを帯びてきたらピーク過ぎ。遠目に眺めている分には文句はないが、近寄って見ればやはり若い花に比べて見劣りしてしまう。蕾がほぼない状態まで開花してなおかつ花があまり赤みを帯びていないたった二三日の間だけが本当の見頃である。春は天候変わりやすく、曇ったり強風が吹き荒れたりもするため、正解の一日に当たるように花見をしたい。

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラ 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

タマナワザクラの萼 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

#タマナワザクラの萼 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/24

タマナワザクラの萼 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

#タマナワザクラの萼 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/02/21

タマナワザクラの実

サクラなので、サクランボができる。ただし食用品種ではないため大きくは膨らまない。味は渋くて苦く、まずい。なおかわいらしい赤色ではなく、そのあとの黒っぽく変色してきたものが熟した実である。

タマナワザクラの実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/05/05

#タマナワザクラの実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/05/05

タマナワザクラの熟しかけている実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/05/05

#タマナワザクラの熟しかけている実 鎌倉市・大船フラワーセンター 2019/05/05

タマナワザクラの熟した実、表面の傷はカメムシが汁気を吸った痕か 鎌倉市・大船観音寺下 2019/05/24

#タマナワザクラの熟した実、表面の傷はカメムシが汁気を吸った痕か 鎌倉市・大船観音寺下 2019/05/24


川崎市麻生区・#王禅寺ふるさと公園

#大船フラワーセンター(原木あり=かまくらと三浦半島の古木・名木50選「フラワーセンターの玉縄桜」=美しい木ではない→令和元年(2019)9月9日未明 台風15号の影響で根元から倒れる→一部の枝を落として再生、ハス池花壇そばのシンボルツリー化を図っていた1本も同台風で倒伏・滅失→翌年2月若木植え直した、リニューアルオープンに伴い展示場隣のすいれん池が埋められて玉縄桜広場に=ほぼ若木ばかりヒマラヤザクラ並びに数本、※園内に見栄え優れる良木なし、まだ満開ではないだろうがオカメザクラオオカンザクラも)、#ひらつか総合公園(大池畔、野外ステージ脇)

#若宮大路(もとまちユニオン鎌倉店前辺りに1本、不良)、#甘縄神明神社(参道石段下)、#建長寺(大庫裏南東、見るに難・撮るに背景良し)、#玉縄中学校、#コーナン大船パーク1・2(背景がホームセンターというロケーションながら木の見栄えは大船フラワーセンターより良好)、#湘南ヘルスイノベーションパーク(略称湘南アイパーク・旧武田薬品工業湘南研究所、100本、生育不良らしい、一般非公開)、#江の島(龍野ヶ丘自然の森入口、日陰で不良)

地球温暖化の影響で平成(-2019)後期以降は台風被害が重篤化。残念ながら生命力にやや難があるソメイヨシノ系のサクラとあって、枝ぶり不良となる木が多い。湘南・鎌倉・三浦半島にタマナワザクラの観光名所と呼ぶに足る植栽地なし。

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ソメイヨシノ