ススキ

芒、薄 イネ目/イネ科/ススキ属 花期/9月~10月中旬 結実期(穂の見頃)/9月中旬~11月
学名/Miscanthus sinensis Andersson

自生種

逆光に輝くススキの穂 茅ヶ崎市浜之郷 2020/11/17

逆光に輝くススキの穂 茅ヶ崎市浜之郷 2020/11/17

草地や道端に生える多年草。カヤ(茅、萱)と総称されるイネ科の植物の一種。

カヤ(茅、萱)


茅葺屋根(かやぶきやね)、つまり、雨が家屋の中に入り込まないように、屋根に乗せて屋根を覆う(「葺(ふ)く」という)のに用いられる植物の総称。具体的にはススキ(芒、薄)、あるいはオギ(荻)ヨシ(葦、アシ)などの、大型なイネ科の植物(の茎)を指す。


ワラ(藁)


なお、藁(わら)はイネ(稲)やムギ(麦)の茎を指し、同じイネ科の植物であるが茅(萱)とは呼び分けている。水にやや弱いため屋根材にはあまり向かないとされるが、実際には茅(萱)と組み合わせて茅葺屋根が作られていたりもする。藁だけで作る藁葺き屋根というものもある。耐久年数は短い。


神奈川県茅ヶ崎市の地名の由来は、諸説あるが、チガヤ(茅、千萱)が生い茂っていた陸地の突端の意とされている。相模川の河口に立地し古くは湿地であったため、チガヤではなくヨシの群落が広がっていたかもしれない。

茅ヶ崎市の漢字表記は、市としては小さい「ヶ」を用いて茅ヶ崎市とするのが公式である。しかしながら、国や県では基本的に「が」の字には大きな「ケ」を当てるのが通例であり、茅ヶ崎市北部にある大規模公園の正式名称は神奈川県立茅ケ崎里山公園である。地元の地方紙・神奈川新聞は「茅ケ崎市」と掲載しており、混乱が見られる。なお神奈川県横浜市都筑区にも茅ケ崎の地名があるが、こちらは大きな「ケ」が正しい。

漢字表記「芒」は中国名「芒草」から、「薄」は草むらの意でありそれが当て字されたもの。白い花穂(かすい)をウマ(馬)かなにかの動物の尾っぽに見立ててオバナ(尾花)とも呼ぶ。「秋の七草」の一つ。中秋の名月(旧暦8月15日)にはススキの白い穂と団子が付き物。与謝蕪村は「山は暮れて 野は黄昏(たそがれ)の すすきかな」と俳句にと詠んだ。クリ(栗)だススキだといわれ始めると、さていよいよ秋かと観念してしまう。

海辺に生えたススキ 三浦市・黒崎の鼻 2023/10/27

海辺に生えたススキ 三浦市・黒崎の鼻 2023/10/27

ススキのある風景 箱根・湖尻集団施設地区子供の広場 2016/09/06

ススキのある風景 箱根・湖尻集団施設地区子供の広場 2016/09/06

ススキのある風景 箱根町・精進池(しょうじんがいけ) 2024/09/14

ススキのある風景 箱根町・精進池(しょうじんがいけ) 2024/09/14

ススキを配した美しい民家 大磯町東小磯 2020/11/18

#ススキを配した美しい民家 大磯町東小磯 2020/11/18

ススキは乾燥した場所に生え、湿り気あるところを好まない。叢生(そうせい)する(一地点から大量の茎がまとまって生える=株立ちする)という大きな特徴もある。

叢生(株立ち)したススキ 横須賀市・鷹取山公園 2018/10/25

叢生(株立ち)したススキ 横須賀市・鷹取山公園 2018/10/25

ススキらしい叢生した姿 小田原市・一夜城 Yoroizuka Farm 2019/12/04 

ススキらしい叢生した姿 小田原市・一夜城 Yoroizuka Farm 2019/12/04 

葉に白っぽい色の斑(ふ)が横縞に入る園芸品種があり、タカノハススキ(鷹の羽芒)ないしヤハズススキ(矢筈芒)と呼ばれる。窒素過多になると普通のススキに戻ってしまう。

ススキ(タカノハススキ) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/09/11

#ススキ(タカノハススキ) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2021/09/11

カヤの仲間でススキに雰囲気が似たものに、外来種セイバンモロコシ(西蕃蜀黍)があるので見分けられるようにしておきたい。

ススキの花

花弁はなく、穂が毛羽立つ前に雄蕊と雌蕊をちょろっと出すのみ。これが花という扱いになる。晩夏(九月上旬から中旬)に咲くもの多いが、秋遅くまで細々ながら花期は続く。

ススキ 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキ 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキ 静岡県熱海市上多賀・頼朝ライン 2016/10/04

ススキ 静岡県熱海市上多賀・頼朝ライン 2016/10/04

ぶらぶら垂れ下がっている黄色い(古くなると茶色に変色する)ものが花粉を放出する雄蕊。にょきっと飛び出ている暗紫色(あんししょく)のケムシ(毛虫)みたいのが雌蕊。

ススキの雄蕊と雌蕊 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキの雄蕊と雌蕊 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキの雄蕊と雌蕊 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキの雄蕊と雌蕊 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキの花が咲いているもの(左奥)と実ができ穂が見頃なもの(右手前) 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキの花が咲いているもの(左奥)と実ができ穂が見頃なもの(右手前) 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキの穂

花が咲き終わって実になると、白っぽく毛羽立った穂ができる。なおススキよりも純白に見えよりきれいと感じる穂はオギ、茶色くてやや汚らしいという印象を受ければアシの穂だろう。

風にそよぐススキの穂 小田原市早川 2018/12/01

風にそよぐススキの穂 小田原市早川 2018/12/01

ススキの穂 鎌倉市山ノ内・JR横須賀線 2011/10/01

ススキの穂 鎌倉市山ノ内・JR横須賀線 2011/10/01

ススキの穂 鎌倉市・大船フラワーセンター和風庭園 2021/09/11

#ススキの穂 鎌倉市・大船フラワーセンター和風庭園 2021/09/11

穂を構成している小さな粒々を小穂(しょうすい)という。ススキは、この小穂から芒(のぎ)と呼ばれる針状の一本の突起が伸びる。漫画『サザエさん』(長谷川町子)に登場する磯野波平の頭頂部に生えている、あのような感じの一本毛が芒である。芒の有無は穂の先端部分で確認するとわかりやすい。株立ちして、葉の表側に白色の主脈が一本明確に入っていて、小穂に芒がある、のがススキである。ススキと最も紛らわしいオギは、株立ちせず、葉はススキと同様で、小穂に芒がない。

ススキの芒(白色矢印) 小田原市早川 2018/12/01

ススキの芒(白色矢印) 小田原市早川 2018/12/01

ススキの実(小穂) 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

ススキの実(小穂) 茅ヶ崎市西久保 2018/10/17

初秋(箱根9月20日頃、湘南・鎌倉・三浦半島10月)はまだ青々とした葉の緑と膨らみかけた白い穂の対比を、秋深まって(11月)は葉も枯れ穂も豊かに一面が黄金色に輝く変化を楽しみたい。

ススキ 鎌倉市山ノ内・JR横須賀線 2011/11/08

ススキ 鎌倉市山ノ内・JR横須賀線 2011/11/08

雨の後は穂が十分に開かないので観賞に向かない。また朝のうち、仙石原(せんごくばら、せんごくはら)のススキ草原がある箱根などの山地では午前中いっぱいは朝露に湿っており同様である。しっかり空気が乾燥すれば穂はふさふさに開いて、風に揺られて少々傾斜した姿こそススキである。逆光ならば白みが強調され、夕日に照らされればオレンジ色が増す。

ススキ草原 箱根町・仙石原すすき草原 2022/10/27

#ススキ草原 箱根町・仙石原すすき草原 2022/10/27

ススキ草原 箱根町・仙石原すすき草原 2016/11/04

#ススキ草原 箱根町・仙石原すすき草原 2016/11/04

ススキ 鎌倉市・安養院 2011/11/13

#ススキ 鎌倉市・安養院 2011/11/13

黄褐色を帯びてきたら終焉近い。こうなると美しさより味わいを楽しむ。

末期のススキ 箱根町・仙石原すすき草原 2012/11/11

末期の#ススキ 箱根町・仙石原すすき草原 2012/11/11


永福寺跡(ようふくじあと、発掘調査等工事により滅失)、#安養院(山門外)、#茶織菴(横大路沿い手打ちそば店)、JR横須賀線沿い(明月院入口近辺)、#浄智寺、台峯(老人の畑)、#高徳院(鎌倉大仏)、

浪子不動(三浦半島 秋の七草、堂裏の山際に分布はあるが特に見るものなし)、#東慶寺

箱根町・台ヶ岳・#仙石原高原「すすき草原」(3月には山焼きあり、9月中旬~11月見頃、近年は9月~11月に灯籠(夕方以降点灯)立てられ風情失う、9月上旬~9月15日頃 青葉中心、10月下旬 最盛期、11月上旬=16:00頃 日の入(平地の日の入時刻は16:45頃、かながわの景勝50選「秋の仙石原高原」、かながわの花の名所100選「仙石原高原(ススキ)」)、朝は朝露・山影でだめ、午後-15:30 良い日照あり、14:30- 比較的雲多い、15:30- たいへん雲多い、かながわの花の名所100選 ※無料駐車場は09:00-16:00=灯籠立てるようになってからは日没で閉鎖しない、県道736号線長尾台から俯瞰)、静岡県賀茂郡東伊豆町・稲取細野高原(10月~11月上旬「秋のすすきイベント」開催・期間中入山受付所設置・要入山料600円(小学生以下無料))

ハチジョウススキ

八丈芒、八丈薄 イネ目/イネ科/ススキ属 花期/9月~10月中旬 結実期(穂の見頃)/9月中旬~10月

自生種

海に面した場所には、八丈島(東京都)に多いというハチジョウススキが生える。遠目にはふつうのススキと見分けられないが、近くに寄れば”なんだかちょっとごついような気がする”という印象を受けるだろう。葉は幅広でやや裏白、触ってみるとプラスチックでできているかのような頑丈さを感じる、縁(ふち)はざらつかない。葉舌は無毛。

早いものでは見頃は10月中旬ないし下旬まで。強烈な潮風に晒される場所にあるものは穂は急激に劣化し葉も傷み、見頃が早めに終わるので注意が必要。穏やかな環境にあるものはススキと時期に大差なし。

ハチジョウススキとススキの雑種とされるエノシマススキ(江ノ島芒)あり。両者の中間型になる。葉の縁がざらつき葉舌は有毛、など。


城ヶ島(赤羽根崎の馬の背洞門西側(すましと海岸)ハイキングコース沿い)、稲村ガ崎、江の島(西裏にエノシマ少々、稚児ヶ淵レストハウス前の沿岸部にエノシマか、10月中旬

黒崎、小動岬(船揚場)

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ダンチク