二色空木 マツムシソウ目/スイカズラ科/タニウツギ属 花期/5月中旬~6月上旬 結実期/10月中旬~11月
学名/Weigela decora (Nakai) Nakai
稀少
ニシキウツギ 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
山地に生える落葉小高木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。花がハコネウツギ(箱根空木)にそっくりで非常に紛らわしいことが知られる。ヤブウツギ(藪空木)ほどではないが全体的に毛は多め。神奈川県内では丹沢や箱根を中心に相模川以西に自生し、湘南・鎌倉・三浦半島には基本的にはない。栽培するなら環境に適したハコネウツギで事足りる上に見栄えも良いため、公園などでもまず見ない。ニシキウツギとして植栽展示されているものも、ニシキウツギらしい姿でないものが多い。ハコネウツギとの雑種か、下手をすればハコネウツギそのものか。特に(どこの業者から仕入れているのかは知らないが)お役所が関わって植樹されたと思しきものにはニシキウツギとは呼び難いものがたいへん多い。
紛らわしい話だが、箱根に分布するのはハコネウツギではなくニシキウツギの方。ハコネウツギは基本的に(植栽が疑われるものを除いて)箱根にはない。
ニシキウツギの葉はハコネウツギに比べれば明らかに小さめ、細めな傾向あり(ニシキウツギの葉が小さいのではなく、ハコネウツギの葉が大きくて丸くアジサイ(紫陽花)っぽい)。葉柄(ようへい)はハコネウツギに準じて長め。
ニシキウツギの葉 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギの葉 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギの葉 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギの葉 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギの葉 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
葉裏の脈上は多毛。ニシキウツギの大きな特徴とされる。が、実際のところはこの毛をもって見分けることができない。
ニシキウツギの葉裏 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギの特徴・見分け方
ニシキウツギはハコネウツギ(箱根空木)によく似る。また中間種らしき様相を呈すもの、雑種もできるというので、ニシキウツギなのかハコネウツギなのか判断に迷うものがある。とはいえ、典型的なニシキウツギと典型的なハコネウツギは、明確に”違う”。どこがどうというまでもなく、ぱっと見で”違う”と感じるレベルで”違う”。喩(たと)えるなら、ヤマアジサイ(山紫陽花)とアジサイ(紫陽花)くらい”違う”、といったらちょっと大袈裟すぎるが、それくらい明確に”違う”。湘南・鎌倉・三浦半島にたいへん多く植樹されているのはハコネウツギの方なのでその様子をしっかりと目に焼き付けておけば、ニシキウツギらしいニシキウツギを見かけた際にはその”違い”にぴんとくるだろう。”ああ、確かにぜんぜん違う”と。ただ具体的に”違う”箇所を列挙しろといわれるとこれがなかなか難しい。
樹形がこざっぱり
こんもり茂ってアジサイに似た樹形になるのがハコネウツギ。ニシキウツギは幹が細く長く伸びる傾向があるせいかアジサイと見紛う姿にはならない。
葉が小さい
ハコネウツギの葉は”これはアジサイの葉か?”と見紛うほど大きい。ニシキウツギの葉はそこまで大きくない。サイズ感が明確に違う。
葉がややスリム
ハコネウツギの葉は丸々でっぷりと幅広で先端だけ急に先細るが、ニシキウツギの葉はさほど幅広にならず、誰しもがある程度は見慣れているだろうサクラ(桜)の葉と大差ないような形状をしている。
葉裏の脈上に毛が多い
ニシキウツギの葉裏の脈上には毛がたくさん生えていてもふもふしている。ハコネウツギの葉裏の脈は無毛に近いが、毛が生えているものも見受けられる。この点をもって両者を見分けることはできかねる。
ニシキウツギの葉裏の脈状の毛 小田原市早川 2018/05/26
花が小さい
僅かに小さく細め。がっちりした花姿で見応えのあるハコネウツギと比べてしまうと、ちょっと貧相控えめでおしとやか。
ハコネウツギは花をたくさんつけ、ニシキウツギは花数が少なめにしか付かない、という実際の違いがあるが、ハコネウツギは栽培ものなので日当たりも栄養状態もよく、ニシキウツギは山地に生えるため日陰になってしまう時間が長いという、生育環境の違いによるものでしかないかもしれない。
花筒(かとう)の膨らみが緩やか
ふわっと膨らむ。ハコネウツギは花筒が急激に角張り膨らむ。
ニシキウツギの萼筒の膨らみ 小田原市早川 2018/05/26
両者の見分け方として必ず取り上げられるのが花筒の膨らみ方の違いであるが、微妙な差異なので決め手としては弱い。
アジサイ形のこんもり樹形でない、葉が小さめ、花が小ざっぱり、葉裏を確認すれば葉脈が毛深い、それがニシキウツギ。
花が白色のままのものは、シロバナニシキウツギ(白花二色空木)。花が最初から赤いものはベニバナニシキウツギ(紅花二色空木)という。
ニシキウツギの花
ハコネウツギより花期が遅いと聞いたことがあるが、大差ないかもしれない。花はハコネウツギと同様に白から赤色に染まってゆく。花筒(かとう)はハコネウツギに比べれば緩い角度で膨らむのがふつう。膨らみが弱いせいもあってか、花はハコネウツギほど見栄えがしない。民家の小さな庭の片隅にそっと花を添えるなら、逆にニシキウツギの方が出しゃばらなくてよいかもしれない。うっかりしていると背高な木になってしまうかもしれないが。
ニシキウツギ 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギ 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギ 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギの実
小さなバナナ形。緑色から褐色に熟して枯れる。
ニシキウツギの若い実 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
ニシキウツギの未熟な実 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/08/26
ニシキウツギの熟しかけた実 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/11/02
実は熟すと先端側が裂けて開く。風などで枝が強く揺れると中に収めていた小さな種子が放出される仕組みのようだ。種子には、少しでも遠くへ飛散しようという気持ちだけは伝わってくる小さな翼(よく)がある。
ニシキウツギの完熟した実と種子 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/11/02
ニシキウツギの実の残骸 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/05/26
東京都文京区・#小石川植物園(薬園保存園と分類標本園の間のE11、近くで見れない)、横浜市南区・#こども植物園(6月10日頃、樹名板あり・ハコネウツギ交雑種の疑い)、横浜市金沢区・#金沢自然公園(平成27年度(2015)「横浜市動物園年報」149頁によれば植物区に60本=限りなくハコネウツギに近い雑種か)
#観音崎公園(三軒家園地、アスレチックの森、花等未確認=県立なので雑種か)、#高麗山公園(平成28年(2016)植樹=今後自生と誤認されるおそれ)
小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース(太閤橋~早川石丁場群付近に多く点在、5月中旬)、箱根町仙石原・#長安寺(5月下旬~6月上旬)、#箱根湿生花園、箱根町・長尾峠・県道736号線沿い(6月5日頃)