蛭筵 オモダカ目/ヒルムシロ科/ヒルムシロ属 花期/6月~9月 殖芽/12月~3月
学名/Potamogeton distinctus A.Benn.
自生種稀少保護
ヒルムシロ 平塚市岡崎/真田/北金目 2021/09/07
農業用の溜池や田んぼの水中に生える水草で多年草。止水のみならず流水でも生育できるので水路でも見られるようだ。水底の土に根を張って茎を伸ばし水面に葉を広げ浮かべる浮葉植物。結構な大きさに成長しよく増えることからかつては水稲農家(すいとう-)に目の敵(かたき)にされたが、現在は強力な農薬をもっておよそ駆逐することに成功している。数を減らしてはいるが(養分を奪ってしまう)迷惑な水田雑草であることに変わりなく、かわいらしい花を咲かせるでもないため、保護される機運は高まりようないか。名は、ヒルの住処(すみか)となっている筵(ござのようなもの)状のもの、の意。神奈川県内では相模川近くの水田地帯に比較的多くあり。
ヒルムシロ 平塚市岡崎/真田/北金目 2021/09/07
田んぼの隅に生えたヒルムシロ 平塚市岡崎/真田/北金目 2021/09/07
田んぼの隅に生えたヒルムシロ 平塚市岡崎/真田/北金目 2021/09/07
田んぼの隅に生えたヒルムシロ 平塚市岡崎/真田/北金目 2021/09/07
田んぼの隅に生えたヒルムシロ 平塚市岡崎 2022/09/04
ヒルムシロ 平塚市岡崎/真田/北金目 2021/09/07
ヒルムシロ 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/13
ヒルムシロ 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2021/07/25
ヒルムシロ 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2021/07/25
ふだん人目に付くのは、ナギ(梛)のような形状の水面に広がる浮葉のみ。これに加えて水中に水中葉(沈水葉)がある。水中葉は細長いもので、明確な葉柄(ようへい)がある。柄(え)がなければフトヒルムシロ(太蛭筵)。フトヒルムシロは神奈川県内では箱根町の仙石原でのみ自生が確認されている希少種。越冬のための殖芽(しょくが)を作らないという違いもあり。水中葉がやたら細い線形だったらオヒルムシロ(雄蛭筵)である疑い。県内では発見されていないが東京都および山梨県にあるので、神奈川県内にもどこかに密かにある可能性も。
ヒルムシロの浮葉 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/18
ヒルムシロの浮葉 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/13
ヒルムシロ、引っこ抜かれて浮遊している株 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/18
ヒルムシロ 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/13
#イネ刈りを前に水を抜かれて絶望しかないヒルムシロ(左上はコナギ) 平塚市真田 2021/09/24
ヒルムシロ(切れて浮遊していたもの) 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/13
水中葉の形状は数あるヒルムシロの仲間を同定する重要なポイントであるものの、水草を見慣れていないせいかどれが茎でどれが水中葉(種によっては細いものもある)でどれが水中葉の托葉でどれが根でどれが生育途中(生育不良)の浮葉なのかさっぱりわからない。
ヒルムシロの水中葉らしきもの 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/13
ヒルムシロの水中葉らしきもの 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/13
鎌倉・大巧寺の甕(かめ)にあるものがヒルムシロの名で紹介されていることがあるが園芸栽培される南アフリカ原産のキボウホウヒルムシロ(喜望峰蛭筵)で、花は白色のかわいらしいもの。
ヒルムシロの花
水面から上に茶色っぽいツクシ(土筆)のようなものがにょきっと突き出て生えてきたらそれが花。先に柱頭を突き出す雌性先熟(しせいせんじゅく)。のち、ちょっと実ができたような姿と変わって、白い花粉を放出する雄性期を迎える。花が数多く見られるのは真夏の直前と直後。
#ヒルムシロの雌性期 茅ヶ崎市浜之郷 2022/06/05
ヒルムシロの雌性期 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/18
ヒルムシロの雌性期 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/18
#ヒルムシロの雄性期 茅ヶ崎市浜之郷 2022/08/15
#ヒルムシロの雄性期 茅ヶ崎市浜之郷 2022/06/08
#ヒルムシロの雄性期 茅ヶ崎市浜之郷 2022/06/08
#ヒルムシロの雄性期 茅ヶ崎市浜之郷 2022/06/05
ヒルムシロの雄性期 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/10/09
ヒルムシロの実
花は倒れて水中に没しそこで結実するようだ。
ヒルムシロの若い実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/18
#ヒルムシロの実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/06/08
ヒルムシロの実と雌性期の花 平塚市岡崎/真田/北金目 2021/09/07
ヒルムシロの実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/13
ヒルムシロの実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/11/27
ヒルムシロの殖芽
殖芽(越冬芽)とは水草がよく作り出す冬越し用の芽。植物本体は寒さで死んでしまうかもしれないけれど殖芽だけは死なずに冬を乗り越えて来年の春にまた茎を伸ばして根を張って復活してみせます、という目論見の、種子ではないが事実上種子のような働きをするタイムカプセル。ヒルムシロの多くは種子よりも殖芽で繁殖する。ヒルムシロの殖芽は人の指のようなバナナの房のような不思議な形状をしている。
殖芽が出来始めた#ヒルムシロ 茅ヶ崎市浜之郷 2021/10/25
#ヒルムシロの殖芽 茅ヶ崎市浜之郷 2021/12/10
#ヒルムシロの殖芽 茅ヶ崎市浜之郷 2021/12/10
#ヒルムシロの殖芽 茅ヶ崎市浜之郷 2021/12/10
#ヒルムシロの殖芽 茅ヶ崎市浜之郷 2021/12/10
#ヒルムシロの殖芽の発芽 茅ヶ崎市浜之郷 2022/04/09
#ヒルムシロの殖芽の発芽 茅ヶ崎市浜之郷 2022/04/28
湘南タゲリ米の里(ビオトープ水田、若干数だけを残して夏に間引かれるも初秋には元通りに、11月以降は水が抜かれて泥固まるためヒルムシロは殖芽ごとほぼ全草が泥に埋もれて観察不能に)、平塚市岡崎/真田/北金目(水田に多い)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
『ネイチャーガイド 日本の水草』 角野康郎著 文一総合出版発行(2014)
『牧野 日本植物図鑑』 牧野富太郎著 北隆館発行(1940)