ヒメドコロ

姫野老 ヤマノイモ目/ヤマノイモ科/ヤマノイモ属 花期/7月~8月 結実期/10月
学名/Dioscorea tenuipes Franch. & Sav.

自生種稀少

ヒメドコロの雌花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

明るい林縁部などに生える蔓性の多年草で、雌雄異株(しゆういしゅ)。名前は、近似種のオニドコロ(鬼野老)に対して葉が細くて花もか弱そうに感じられるものの意だろう。オニドコロの妹分といった雰囲気のもの。オニドコロやヤマノイモ(山の芋)と生態はほぼ同様と思われ、たいへん紛らわしく探し出すのがたいへん。湘南・鎌倉・三浦半島では、オニドコロやヤマノイモのように(自然が完全に失われたよほどの市街地や都市部でない限り)どこにでも無数に生えているようなありきたりな普通種ではなく、三浦半島などの丘陵地周辺にこっそり分布がある模様。オニドコロやヤマノイモに比べて知名度が低いので、気づかれていないだけの可能性もありそう。

ヒメドコロの雄花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雄花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雄花序 鎌倉広町緑地周辺 2019/07/21

ヒメドコロの雄花序 鎌倉広町緑地周辺 2019/07/21

葉は互生で、”ヤマノイモ形のオニドコロ”といった感じの姿のものが多い。細身の心形(しんけい、ハート形)で、質感などはオニドコロっぽい。ときにナガイモ(長芋)のようにくびれて極細にもなる。ただしオニドコロの近似種なだけあって、葉は大きくもなる。ヤマノイモにしては大きすぎて異常と感じるところまで大きくなることもある。ただ、オニドコロのような幅広で丸々した葉にはならない。とはいえオニドコロの葉は必ずしも幅広で丸っこいわけではないので、結局のところ、オニドコロとヒメドコロとヤマノイモの葉は見分けが難しくじつに紛らわしいものである。ヒメドコロ探しは花が咲いている時期(主に七月中旬~下旬)に限る。次いで大きめな実がなっている頃。

ヒメドコロの葉 鎌倉広町緑地周辺 2019/07/21

ヒメドコロの葉 鎌倉広町緑地周辺 2019/07/21

ヒメドコロの葉 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの葉 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの大きな葉 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの大きな葉 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの大きな葉 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの大きな葉 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロのやや幅広な葉 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロのやや幅広な葉 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

湘南・鎌倉・三浦半島で見られるヒメドコロの近似種まとめ


市街地を除いてどこにでも大量にある

主に三浦半島に少数ある

三浦半島と相模川周辺に少数ある

市街地周辺に帰化があり、畑でよく栽培される

帰化が少数ある

丹沢へ行かないとない
タチドコロの葉 大和市・泉の森 2019/07/08
タチドコロ

ヒメドコロの花

花序の形状や色(淡い黄緑色)は、基本的にはオニドコロに準じる姿。ただし、オニドコロの雄花序は上だ横だあっちだこっちだに向かってぴーんと伸びるのに対し、ヒメドコロは雌花序のみならず雄花序も下垂(かすい)するという違いあり。小花はオニドコロより一回り小さいと感じる(小花が小さいオニドロコもある)。花被片はオニドコロより細く、雄花(と若い雌花の一部)の花被片は後方へ反る。

ヒメドコロの特徴 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの特徴 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

雄花序はしんなり柔らかく、だらりと下向きに垂れる。軸が細くて柔らかいため、自分の雄花序同士で絡み合ってしまっていること多々あり。軸の一ヶ所から咲く小花はふつう一つ、ときに二つ。三つもないわけではないが。一地点から小花が三つも四つも出てもしゃもしゃした雰囲気になるオニドコロに比べれば、小ざっぱりした簡素な印象を受ける姿。小花の柄(え)は、オニドコロより少し長めに感じられるものが多い。雄蕊は、オニドコロは(他の一般的な花のように)広がりを見せるが、ヒメドコロの雄蕊は花の中心に集合して一本の束となり、まるで雌蕊の花柱(かちゅう)があるかのような形状をしている。雄花のはずなのに雄蕊がなくて雌蕊が一本ある、ように見えるだろう。

ヒメドコロの雄花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雄花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雄花、雄蕊はまとまって一本の束になる 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雄花、雄蕊はまとまって一本の束になる 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雄花序 鎌倉広町緑地周辺 2019/07/21

ヒメドコロの雄花序 鎌倉広町緑地周辺 2019/07/21

ヒメドコロの雄花、小花の柄の長さが顕著 鎌倉広町緑地周辺 2019/07/21

ヒメドコロの雄花、小花の柄の長さが顕著 鎌倉広町緑地周辺 2019/07/21

雌花序も下垂。小花は軸から横向きに出る(実になると上向きに変わる)。探す手掛かりになるのは細い花被片くらいか。当たりを付けたら雌蕊(肉眼でぎりぎり視認できるかできないかという小さなもの)を確認。オニドコロの雌蕊はしっかり棒状の花柱が突き出ているのに対し、ヒメドコロの雌蕊は花柱だかなんだかよくわからないものが少々ぼこっと出っ張っているだけの変な姿をしている。

ヒメドコロの雌花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花序 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの雌花 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの実

オニドコロ同様、果序は下垂したまま、個々の実は上向きに変化して付く。ただし、実の形状が異なる。オニドコロの実はやや細身な楕円形なのに対し、ヒメドコロは丸っこくてヤマノイモと見紛うような形をしている。なおヤマノイモの個々の実は下向きになるので見分けは可能。

ヒメドコロの膨らみ始めた若い実 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの膨らみ始めた若い実 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの上向きに変わった若い実 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの上向きに変わった若い実 鎌倉市・巡礼古道 2019/08/11

ヒメドコロの完熟した実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/11/30

ヒメドコロの完熟した実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/11/30

ヒメドコロとヤマノイモの熟した実の比較 2019/11/17

ヒメドコロとヤマノイモの熟した実の比較 2019/11/17

ヒメドコロの完熟した実の残骸 二宮町・吾妻山公園 2021/01/21

ヒメドコロの完熟した実の残骸 二宮町・吾妻山公園 2021/01/21

ヒメドコロの完熟した実の残骸 二宮町・吾妻山公園 2021/01/21

ヒメドコロの完熟した実の残骸 二宮町・吾妻山公園 2021/01/21

ヒメドコロの完熟した実の残骸 二宮町・吾妻山公園 2021/01/21

ヒメドコロの完熟した実の残骸 二宮町・吾妻山公園 2021/01/21


横浜市栄区・横浜自然観察の森

鎌倉市浄明寺・巡礼古道(報国寺月極第2駐車場向かい~鎌倉ハイランド)、二宮町・吾妻山公園

鎌倉広町緑地、新林公園

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

オニドコロ

ヤマノイモ

カエデドコロ

キクバドコロ

『ヒメドコロ』へのコメント

  1. 里山ライフ 投稿日:2023/04/17(月) 11:12:29 ID:64fe837fa 返信

    数年前から、
    庭先の大樹「ベニバナトチノキ」の林床下に出現しています。

    「ヤマノイモ」科は根茎の始末に、
    ほとほと苦労したので、ヤマノイモも含めての全種を(根茎、発芽、種子、むかご、など)見つけ次第に処分しているが、剣先スコップでは除去不能な箇所(ベニバナトチノキの太い根茎下や深部)に根茎が残ってしまっているようで、同じ場所から梅雨どきに発芽してきます。
    とにかく完全除去ができないため、梅雨明け後の猛烈に熱い最中に“ジャックと豆の木”如くに成長し、ベニバナトチノキやイヌツゲ、アオキ、ウメモドキ、ヤマアジサイなどに絡みつき「花を付ける」ため始末に負えない。
    「熱さ」が和らぐ彼岸までの期間は、クソ熱くない日の早朝に抜根するが、結局、実をびっしりと付けるほどなので、うんざりさせられます。
    それらの根茎を探し出しての撲滅が、毎年の最重点課題になっています。

    確認した当初は、
    ヤマノイモに相似の葉だったが、
    花の様子が異なり、(林床下で日が当たらないほどの)環境不適によるものなのかな。との印象だったが、mirusiru.jp によって「同定」できました。
    なんとか、撲滅したいのだが。

    ヤマノイモ科も含め、植物が自然発生する原因は「ヒヨドリ」を有力視しています。
    それらは決まって、ヒヨドリの止まる枝下から発生します。