浜木綿 クサスギカズラ目/ヒガンバナ科/ハマオモト属 花期/6月下旬~8月 結実期/8月中旬~10月
学名/Crinum asiaticum L. var. japonicum Baker
有毒自生種保護
神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧IB類」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧IA類」
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07
神奈川県の三浦半島および千葉県の房総半島以南の砂浜に生える、大型な常緑の多年草。見た感じは白花を咲かせる巨大ヒガンバナ(彼岸花)とでもいったところ。名は、花が神道(しんとう)で用いられる木綿(ゆう、コウゾ(楮)の繊維から作られたきれいな白布)を思わせることからか。植物学者牧野富太郎博士は、花があたかも白幣を掛けたかのように見えるからという語源は誤りであると断じ、層をなして巻き付いて偽茎(ぎけい)を形成している白色の葉鞘(ようしょう)に基づく名である、と述べている。葉がオモト(万年青)に似ているので別名ハマオモト。神奈川県内では元来は横須賀市・天神島(てんじんじま)にのみ自生があり、それが日本国内における自生の北限とされていた。昭和8年(1933)の調査では島内に数百から千株が群生していたという。そんな旺盛に繁茂(はんも)していたのであるならば、研究者だか学芸員だかから耳にしたことがある”天神島のみにあった”というのはちょっと怪しい話。もしかしたら天神島を含めて周辺地域の一帯にありはしたが天神島が殊更目立った自生地だったというだけかもしれない。よくわからない。北限を理由に、わずかな環境の変化や人間の影響で生存が危ぶまれるとして昭和28年(1953)県の天然記念物に指定して保護が図られた。昭和40年(1965)頃には既に百株あるかないかまで減ったといい、現在は更に少ない。現在は天神島に限らず県内各所の海辺でもちらほら見かけるが、それらはすべて人為的に植えられたものかそれから増えたものなのだとかいう。種子はヤシ(椰子)の実がごとくどんぶらこと波に乗って拡散されるので、自然繁殖も実際のところは少なくないと思われる。「ハマユウ」として横須賀市の市の花および真鶴町の町の花、「はまゆう」として三浦市の市の花に制定されている。真鶴町に自生はなく、昭和(-1989)の時代に観光開発された際に植栽されたのみ。東北地方には分布がないので、東北からの観光客がたいへん多い鎌倉で植えておいたら物珍しがられて喜ばれるだろう。
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07
柵で保護されたハマユウ(ハマオモト)の自生北限地 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2023/08/10
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2023/08/10
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2023/08/10
#ハマユウ(ハマオモト) 藤沢市・辻堂海浜公園 2019/07/09
葉は巨大化したオモト形。
ハマユウ(ハマオモト) 藤沢市辻堂西海岸 2019/07/09
柿本人麻呂「三熊野之 浦乃濱木綿 百重成 心者雖念 直不相鴨(み熊野の 浦の浜木綿 百重なす 心は思へど 直に逢はぬかも)」(『万葉集』)────
斑入りの#ハマユウ(ハマオモト) 鎌倉市・大船フラワーセンター 2020/11/03
葉にのみならず、ハマオモトヨトウ(浜万年青夜盗)なるガ(蛾)の幼虫が付きやすい。市街地では園芸栽培されているタマスダレ(玉簾)を食害する白黒オレンジのあいつ。
#ハマユウの実に付いたハマオモトヨウ 茅ヶ崎市・藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園 2020/08/21
昭和の女優の浜木綿子(はまゆうこ、夫は二代目市川猿翁、子に香川照之=九代目市川中車)は芸名で、浜が苗字、木綿子が名。
ハマユウ(ハマオモト)の花
ハマユウ(ハマオモト)の蕾 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2023/09/13
ハマユウ(ハマオモト)の蕾 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2023/09/13
#ハマユウ(ハマオモト) 藤沢市・辻堂海浜公園 2019/07/09
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07
ハマユウ(ハマオモト) 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07
一部、夏の終わりから初秋にかけて咲くことがある。
ハマユウ(ハマオモト)の実
#ハマユウ(ハマオモト)の未熟な実 茅ヶ崎市・藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園 2020/08/21
ハマユウ(ハマオモト)の熟した種子 茅ヶ崎市汐見台 2018/09/24
ハマユウ(ハマオモト)の熟した種子 茅ヶ崎市汐見台 2018/09/24
ハマユウ(ハマオモト)の熟した種子を二つに割ってみた 茅ヶ崎市汐見台 2018/09/24
城ヶ島、天神島臨海自然教育園(国内自生北限、県指定名勝「天神島、笠島及び周辺水域」、県指定天然記念物「天神島、笠島及び周辺水域」、県指定天然記念物「はまおもと」、かながわの花の名所100選「天神島(ハマユウ)」)、坂ノ下海岸(稲瀬川河口に囲いを設けて保護、国道134号線沿いなどにも)、稲村ガ崎、#辻堂海浜公園
観音崎公園(なし)、斉田浜(せいたばま)、茅ヶ崎市・#藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園
真鶴町・#お林展望公園(旧真鶴サボテンランド)
参考資料
『横須賀市博物館教育資料シリーズ・1 ハマユウ』 横須賀市博物館発行(1964、1978改訂版)
『神奈川県の文化財 6集』 神奈川県教育庁社会教育課編集・発行(1966)
『牧野 日本植物図鑑』 牧野富太郎著 北隆館発行(1940)
こんばんは。天神島のハマユウ、戦前は数百から千株が群生していたとは、初めて知りました。あんな狭い島なのにビックリです。
県内にちらほら見かけるものは人為的に植えられたものでは?ということですが、毘沙門のものは砂浜の草地にパラパラと生えていて、むかしからの自生か、あるいは自生の種子がたどり着いて定着したのかも、と期待してしまいます。
「神奈川県植物誌」の分布図にもドットが打たれているものの、天神島のほうが北ですから、いずれにしても北端の自生地は天神島なのは変わりませんが・・・。
http://www.wildplants.sakura.ne.jp/gallery/hamayuu.htm