ハマゴウ

浜栲 シソ目/シソ科/ハマゴウ属 花期/7月~9月上旬 結実期/10月~12月
学名/Vitex rotundifolia L.f.

薬用自生種保護

ハマゴウ 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウ 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

砂礫浜に生える落葉低木。一見すると蔓草のようではあるが、這って横に横に広がる樹木である。真冬には葉を落とした細い枝がしっかり残り、また春には葉を付ける。湘南・鎌倉で減少種ながら近年は所により保護活動も行われており、その活動地域内では数を盛り返している。三浦半島で普通種。アメリカネナシカズラ(あめりか根無葛)に憑(と)りつかれると、その部分は枯れてしまうことがある。

ハマゴウ 藤沢市辻堂西海岸 2018/07/19

ハマゴウ、中央のオレンジ色部分はアメリカネナシカズラ 藤沢市辻堂西海岸 2018/07/19

浜降祭とハマゴウ


毎年七月の第三月曜日(国民の祝日「海の日」)に神奈川県茅ヶ崎市南湖(なんご)の海岸において浜降祭(はまおりさい、県指定無形民俗文化財「茅ヶ崎海岸浜降祭」)が斎行(さいこう)されている。平たく申せば、寒川町(-まち)の寒川神社と茅ヶ崎市(元は寒川町と同じ高座郡(こうざぐん)所属)の鶴嶺八幡社(通称鶴嶺八幡宮、鶴嶺神社)を中心として、三十基以上の神輿(みこし)が海に集結して禊(みそぎ)を行うという壮大な祭りである。祭儀を前に寒川神社の神輿が浜に安置される際、ホンダワラという海藻と合わせてハマゴウの枝が褥(しとね、敷物のこと)として敷き詰められるという風習がある。

これは一説には、江戸時代後期の天保9年(1838)大磯町・国府祭(こうのまち)に渡御(とぎょ)した帰りに寒川神社(相模国一之宮)と平塚市・前鳥神社(さきとり-、同四之宮(しのみや))の神輿が相模川を渡る際に”馬入(ばにゅう)の渡し”でいざこざを起こし、よりにもよって寒川神社の神輿が川に流され行方不明になってしまった、という前代未聞の大事件を発端とする。神輿探索には寒川神社から多額の報奨金が出され、のちに南湖の網元鈴木孫七によって海中より発見され引き上げられたが、このとき浜の砂を盛って台座とし海藻とハマゴウ(奉木(ほうぎ)と呼ばれる)を敷いて神輿を丁重に安置し寒川神社の氏子たちを出迎え返還された、という故事に基づき、今なおそれを再現しているものである。


茅ヶ崎市のハマゴウは自生ほぼ絶滅という。現在見られるものはいずれも植栽などであるらしい。浜降祭では、鈴木家で育てられた茅ヶ崎海岸原産の栽培ものハマゴウが使用されている。

ハマゴウ 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウ 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウの葉 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウの葉 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウの葉 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2020/08/22

#ハマゴウの葉 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2020/08/22

ハマゴウの葉裏 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2020/08/22

#ハマゴウの葉裏 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2020/08/22

ハマゴウというと砂浜にべたあっと貼り付くような姿を思い浮かべるが、じつはそれは強い海風に晒されるという厳しい環境だからこその低姿勢なのであって、じつはハマゴウは上に向かって伸びようとする意識が意外と強い。ふつうの樹木のように幹が一本直立するというわけではもちろんないが、それでも高さ2m以上にこんもり茂り、何ならハマボウ(浜朴)あたりと大差ない高さにまで成長したりなんかもする。従って、海に直に面していない例えば海辺の公園あたりにハマゴウを植樹するとちょっとイメージしていたのとは違う姿に育つので注意が必要である。東京都調布市・神代植物公園植物多様性センターでは海辺の環境を再現してハマゴウを植えてはいるが、放っておくと背高に育ってしまうためあえて枝を短く剪定して低い姿を保っているかのように見せかけている有様である。

海風を直に受けないためこんもり樹形に育ったハマゴウ(背高雑草混生) 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2020/08/22

海風を直に受けないためこんもり樹形に育った#ハマゴウ(背高雑草混生) 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2020/08/22

こんもり樹形のハマゴウ 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2020/08/22

こんもり樹形の#ハマゴウ 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2020/08/22

こんもり樹形ハマゴウの冬枯れた異様な姿 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2019/02/23

こんもり樹形#ハマゴウの冬枯れた異様な姿 茅ヶ崎市・柳島しおさい公園 2019/02/23

平成29年(2017)10月23日 神奈川県の沿岸地域では、台風21号がもたらした観測史上最高の高潮被害が発生。ハマゴウは砂浜という標高が最も低い場所に生える植物のため、海水と漂着ごみをかぶってかなりの損害が出ている可能性も。枯れず、来年また葉を生やしてくれるかどうか注視したい。

名前が紛らわしいものにハマボウとハマボウフウ(浜防風)ハマユウ(浜木綿)がある。

ハマゴウの花

花色は(少しピンクがかった)紫(青は入らない)。独特な甘い香りがする。

ハマゴウ 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07

ハマゴウ 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07

ハマゴウ 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07

ハマゴウ 横須賀市・天神島臨海自然教育園 2017/07/07

ハマゴウ 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウ 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウ 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウ 藤沢市鵠沼海岸 2018/07/17

ハマゴウの実

実を付けたハマゴウ 茅ヶ崎市・神奈川県藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園 2020/09/01

実を付けた#ハマゴウ 茅ヶ崎市・神奈川県藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園 2020/09/01

ハマゴウの若い実 藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園 2018/09/24

#ハマゴウの若い実 藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園 2018/09/24

ハマゴウの完熟した実 藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園 2017/11/21

#ハマゴウの完熟した実 藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園 2017/11/21


毘沙門海岸(江奈湾~毘沙門湾)、黒崎の鼻(南側砂浜)、藤沢市辻堂西海岸

天神島臨海自然教育園、#神奈川県藤沢土木事務所汐見台庁舎海浜自然生態園、#寒川神社(ヨコハマヒザクラ(旧地、平成29年(2017)納札殿側へ移植)隣のイチョウ前の柵に絡ませ、日陰のため開花しない)、#柳島しおさい公園(海風ないので地面にへばり付かないこんもり樹形、最高約2.5m)

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