ユキノシタ

雪の下 ユキノシタ目/ユキノシタ科/ユキノシタ属 旬/2月~3月 花期/5月中旬~6月上旬 結実期/6月中旬~下旬
学名/Saxifraga stolonifera Curtis

食用薬用自生種保護

ユキノシタ 鎌倉市山ノ内産 2019/05/13

#ユキノシタ 鎌倉市山ノ内産 2019/05/13

直射日光の当たらない、ややじめじめ湿った場所に好んで生える常緑の多年草。鎌倉市雪ノ下地区の地名の由来になったともいわれる(他説あり)。神奈川県内広域に分布あり。鎌倉をはじめとした三浦丘陵にはじめじめ湿った岩場とその下に土砂が堆積した草地がふんだんにあるため、ユキノシタが観光客やハイカーの目にも触れる機会は多いだろうと思う。寺境内にも多い。原産地は日本とも、あるいは中国からの移入種だともいわれよくわからない。人里(だった場所)付近に好んで生えていることを鑑(かんが)みればじつは外来種であるといわれても確かに違和感はない。人が手をかけてやると野生の状態よりもよく育ち、栽培は(真夏の直射日光を避けてよく水やりしさえすれば)簡単。

ユキノシタの群落 茅ヶ崎市浜之郷 2019/11/30

#ユキノシタの群落 茅ヶ崎市浜之郷 2019/11/30

ユキノシタ 鎌倉市・浄智寺谷戸 2018/06/02

ユキノシタ 鎌倉市・浄智寺谷戸 2018/06/02

葉はやや幅広で、縁(ふち)には大雑把な切れ込みが入る。葉表の葉脈は白っぽく斑(ふ)が入ったようになることからこれが葉の上に積もった白雪に見立てられ、雪の下に葉を広げるユキノシタという名前の由来になった模様。葉の裏側は(ときに表面も)赤みを帯びる(とされている)。

ユキノシタの葉 鎌倉中央公園 2018/06/02

ユキノシタの葉 鎌倉中央公園 2018/06/02

ユキノシタの表側も紅変した若葉 鎌倉市山ノ内産 2019/02/27

#ユキノシタの表側も紅変した若葉 鎌倉市山ノ内産 2019/02/27

ユキノシタの赤みを帯びた冬の若葉裏 茅ヶ崎市浜之郷 2019/02/10

#ユキノシタの赤みを帯びた冬の若葉裏 茅ヶ崎市浜之郷 2019/02/10

ユキノシタの葉や葉柄に生える粗毛 茅ヶ崎市浜之郷 2019/02/10

#ユキノシタの葉や葉柄に生える粗毛 茅ヶ崎市浜之郷 2019/02/10

ユキノシタの葉裏は赤らむといわれるが、(赤みが抜けて)やや白っぽい緑色をしているものも多くある。初春にしてすでに赤みをなくした葉だって珍しくはない。また、近似種ハルユキノシタ(春雪の下)の葉裏がうっすらと赤みを帯びることもある。『神奈川県植物誌2018』に「葉の(中略)下面は紅紫色を帯びる」はユキノシタ、「葉は緑色である」のがその他のハルユキノシタ等と検索表に掲載されているが、葉裏の色だけを同定の頼りとしてはいけない。

ユキノシタの既に赤みが失せた葉裏とよく紅紫色を帯びている葉裏 茅ヶ崎市浜之郷 2019/02/21

#ユキノシタの既に赤みが失せた葉裏とよく紅紫色を帯びている葉裏 茅ヶ崎市浜之郷 2019/02/21

より寒く、日陰で暗く、特に水気が多くよく湿った場所に生えているものの葉は赤みを維持しやすいように感じられる。栽培しているユキノシタの葉裏から赤みがなくなってしまったならば水やりが足りていない疑いが強い。地植えなら毎日一回、プランター栽培なら朝夕の二回、毎日水やりするのが良い。

ユキノシタのやや赤みを残した葉裏 鎌倉中央公園 2018/06/02

ユキノシタのやや赤みを残した葉裏 鎌倉中央公園 2018/06/02

ユキノシタの赤みを帯びていない葉裏 鎌倉中央公園 2018/07/08

ユキノシタの赤みを帯びていない葉裏 鎌倉中央公園 2018/07/08

ハルユキノシタの葉は若々しい緑色で、葉脈が白く染まった絵柄のようにはならず、もっと細かい鋸歯があり、葉の縁(ふち)が軽く裏側へ反る傾向がみられる。鎌倉などでユキノシタを見慣れている人であればハルユキノシタに対して殊更神経質になる必要はなく、ユキノシタっぽいなと感じたものはそのぱっと見の直感でユキノシタであると判別してしまって構わない。葉裏の色および花弁に入る斑点の色は考慮せぬこと。※ハルユキノシタに関しては別途ハルユキノシタの頁を参照のこと。

ユキノシタの赤みのない春色の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2019/04/19

#ユキノシタの赤みのない春色の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2019/04/19

ユキノシタであっても、(季節によっては)葉脈の白い絵柄が薄いまたはないものもある。これも水不足の疑い。

ユキノシタの、葉脈の白い絵柄が薄いまたはない葉 鎌倉中央公園 2018/06/02

ユキノシタの、葉脈の白い絵柄が薄いまたはない葉 鎌倉中央公園 2018/06/02

ユキノシタの葉脈の白い絵柄がない葉 鎌倉市・宅間ガ谷 2019/08/11

ユキノシタの葉脈の白い絵柄がない葉 鎌倉市・宅間ガ谷 2019/08/11

ユキノシタは、春から開花前にかけて、あるいは花が咲き終わったあと、地を這うようにランナー(走出枝、ストロン・匍匐茎 ※当サイトでは両者を厳格には区別せずランナーと呼ぶ)を多数出し、その先端に子株(葉を広げ根を生やす)を作ってよく増殖する。種子に頼ることなく子株を作れるので、上手に栽培すれば増えて増えて仕方ないくらいに増え、一年で三倍四倍の面積に。びっしり生えてグラウンドカバーにもなる。

#ユキノシタの匍匐茎 鎌倉市山ノ内産 2019/03/16

#ユキノシタの匍匐茎 鎌倉市山ノ内産 2019/03/16

ユキノシタの匍匐茎 鎌倉中央公園 2018/07/08

ユキノシタの匍匐茎 鎌倉中央公園 2018/07/08

ユキノシタの匍匐茎先端にできた小さな子株 鎌倉市山ノ内産 2019/04/20

#ユキノシタの匍匐茎先端にできた小さな子株 鎌倉市山ノ内産 2019/04/20

若葉が白くなる斑入りの園芸品種あり。ふつうのユキノシタに比べて虚弱で、生育環境がぴったり適合しないとなかなかすくすくとは生育してくれない。

斑入りユキノシタ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

斑入り#ユキノシタ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

近似種のハルユキノシタは神奈川県内では東丹沢の宮ヶ瀬湖周辺に分布し、湘南・鎌倉・三浦半島に自生はない。ただし園芸栽培されることがあるため、その逸出があるとかないとかいう。ヒマラヤユキノシタ(ヒマラヤ雪の下)は似ても似つかぬ外来の別種。

ユキノシタの若葉

ユキノシタは春の若葉が食用になる。欲を出して大きな葉を選ぶのではなく、若くて柔らかそうなやや小さめのものがよい。アオジソ(青紫蘇)の葉(ふつう大葉(おおば)と呼ばれる)と同様の天麩羅にして。ユキノシタ自体には苦いも甘いもくさいも何もなく、まったくの無味。ある程度肉厚なのでふわっと、ほのかにもちっとした食感があるくらい。毛のざらざら感も一切なくなり、食べやすい。

ユキノシタの群生 鎌倉中央公園 2019/02/07

ユキノシタの群生 鎌倉中央公園 2019/02/07

ユキノシタの若葉 鎌倉中央公園 2019/02/07

ユキノシタの若葉 鎌倉中央公園 2019/02/07

ユキノシタの若葉 鎌倉中央公園 2019/02/07

ユキノシタの若葉 鎌倉中央公園 2019/02/07

ユキノシタの若葉の赤みを帯びた裏側 鎌倉中央公園 2019/02/07

ユキノシタの若葉の赤みを帯びた裏側 鎌倉中央公園 2019/02/07

花も実も終わった梅雨時以降も新しい葉をよく出して成長する。春の葉よりも肉厚でなく表面が硬めでぱりっとした歯ごたえややあるも、これはこれで新食感。同様に天麩羅にして食べられないでもない。ポテトチップのようにぱりっぱりに硬くなった古い葉は食用にならず。

採取は、予め土地の所有者や管理者(公園であれば市や県ないし管理事務所、山林であれば地主の旧家や国、寺境内であれば住職、神社境内なら宮司か総代、など)の許可を取ること。許可が下りることはふつうはないけれども。

ユキノシタの花

早いもので五月五日の”こどもの日”あたりから花を咲かせ始める。上側の小さな花弁三枚はうっすら赤みを帯び、花弁基部に黄色い斑点、花弁中央に四つ程度の赤色の斑点が入る。個体差あり。

ユキノシタ 鎌倉市山ノ内産 2019/05/13

#ユキノシタ 鎌倉市山ノ内産 2019/05/13

ユキノシタ 鎌倉市山ノ内産 2019/05/13

#ユキノシタ 鎌倉市山ノ内産 2019/05/13

ユキノシタ 鎌倉市・浄智寺谷戸 2018/06/02

ユキノシタ 鎌倉市・浄智寺谷戸 2018/06/02

ユキノシタ 鎌倉市山ノ内産 2019/05/07

#ユキノシタ 鎌倉市山ノ内産 2019/05/07

ユキノシタ 鎌倉市・浄智寺谷戸 2018/06/02

ユキノシタ 鎌倉市・浄智寺谷戸 2018/06/02

赤点が極めて薄いないしほぼないものを、その理由だけでハルユキノシタとしてはいけない。土壌の水気が足りなかったのかやや生育不良を感じさせる株に赤斑のない花ができやすい印象。

赤斑が薄いユキノシタ 鎌倉中央公園 2018/06/02

赤斑が薄いユキノシタ 鎌倉中央公園 2018/06/02

赤斑が薄いユキノシタ 鎌倉中央公園 2018/06/02

赤斑が薄いユキノシタ 鎌倉中央公園 2018/06/02

赤斑が薄いユキノシタ 茅ヶ崎市浜之郷 2019/05/13

赤斑が薄い#ユキノシタ 茅ヶ崎市浜之郷 2019/05/13

秋には近似種のダイモンジソウ(大文字草)やジンジソウ(人字草)が咲く。

ユキノシタの実

咲き終わった花が茶色く枯れたら実ができる。花弁も雄蕊も雌蕊も落ちないのでごちゃごちゃした花殻(はながら)にしか見えないが、カタツムリ(蝸牛)の目みたいのが二本にょきにょきっと伸びた付け根に種子を納める袋がある。黒色の粉粒が種子のようである。

ユキノシタの実 茅ヶ崎市浜之郷 2019/06/09

#ユキノシタの実 茅ヶ崎市浜之郷 2019/06/09

ユキノシタの実と種子 茅ヶ崎市浜之郷 2019/06/30

#ユキノシタの実と種子 茅ヶ崎市浜之郷 2019/06/30

種子の発芽率はかなり悪いようだが、土壌シードバンクとなっていたのだろう、ユキノシタを完全に駆除したはずの場所にまたユキノシタが一株二株生え出てきていることがある。


森戸川源流、#蘆花記念公園旧脇村邸、宅間ガ谷(宅地奥の山道入口)、田楽辻子の道(報国寺側入口、平成28年(2016)法面のコンクリート吹付工事で滅失)、#安国論寺、#鶴岡八幡宮(丸山稲荷社下石垣)、建長寺回春院(大覚池畔)、#円覚寺(黄梅院門前に多い)、#浄智寺、浄智寺谷戸(葛原岡ハイキングコース入口)、#長谷寺、鎌倉中央公園

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

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