豆桜 バラ目/バラ科/サクラ属 花期/3月中旬~4月中旬
学名/Cerasus incisa (Thunb.) Loisel. var. incisa
自生種稀少
#マメザクラ 茅ケ崎里山公園 2019/04/03
丘陵地から低山に生える落葉小高木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。富士山や箱根の周辺に多くの分布が見られる野生のサクラの一種。別名フジザクラ(富士桜)、ハコネザクラ(箱根桜)、あるいはオトメザクラ(乙女桜)とも。全体的に小型で、花も小さい(ことが多い)。コンパクトで素朴な印象を受けるサクラである。ただし、野生種なだけあって結構な個体差あり。神奈川県内では丹沢や箱根といった山地に分布し、湘南・鎌倉・三浦半島では大磯丘陵西部を除いて自生なし。見栄えのする花ではないため、公園などで栽培されることもふつうない。
#マメザクラ 茅ケ崎里山公園 2019/04/03
#マメザクラ 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
#マメザクラ 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
枝は細く、よく分岐するので枝数は多い。枝がごちゃついて見え、ただでさえ小さな花が枝に隠れ気味になって更に目立たなくなる。
#マメザクラ 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
葉は、サクラにしては異様に小さい。形状も独特。更にあからさまな重鋸歯(じゅうきょし)で、風変わりに見えるだろう。コゴメウツギ(小米空木)を思わせる葉である。
山梨県の花に制定されているのはヤマナシ(山梨)ではなくこのフジザクラである(山梨県の木もヤマナシでなくカエデ(楓))。
マメザクラの花
マメという名前からして花は小さい。と決めつけてしまったら間違いで、ソメイヨシノ(染井吉野)と大差ないのではないかと思しき大きな花を咲かせるものも。特に花の大きさは個体差が激しい。花色は(アンズ(杏)をほぼ白に近づけたような)うっすらピンク。基本的に下向きに咲こうとするが、意外と柄(え)がしっかりしていて花があまり大きくない(重くない)ため、だらりと下垂するわけではなく、重力を無視した方向を向いていることもしばしば。花序をなす小花の数は少なく、一個か二個、多くても三個しかない。花柄(かへい)はない(ように見える)。小花柄は一地点から分岐する散形花序となる。開花時期はふつうソメイヨシノの前(早い個体でソメイヨシノ開花宣言前に満開)。ただし個体差(あるいは気温等による変動)大きく、見頃のタイミングは木によってばらばら。ソメイヨシノよりやや遅れるものもある。気象条件によっても左右される。※花が大きなものはオオバナマメザクラ(大花豆桜)というが、本頁では区別せずマメザクラに含めて掲載する。
#マメザクラ 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
#マメザクラ 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
萼筒(がくとう)は赤みを帯び、コヒガン型(凹みの長さ>膨らみの長さ)の壺形。ただし、コヒガンほど凹み(くびれ)と膨らみに大きな差異はなく、少しくびれる、少し膨らみが感じられる、といった程度のあまり壺形に見えない壺形である。小花柄は有毛。萼筒と萼片はほぼ無毛。萼片は全縁(ぜんえん)で僅かながら縁毛(えんもう)あり。雌蕊の花柱(かちゅう)基部は無毛。──云々とされるが、個体差なのか雑種なのか、マメザクラといわれているものでありながら、萼筒に僅かながら毛が生えていたり、細かい鋸歯があったり、花柱基部がまばらに有毛だったり、するものも。※湘南・鎌倉・三浦半島はマメザクラの自生地ではないため、これら違和感を若干感じるものも含めてマメザクラとして掲載する。
#マメザクラの小花柄と萼筒 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
#マメザクラの萼片 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
開花時に、展開しかけの葉芽を伴うことが大きな特徴。
#マメザクラの開花時の葉芽 茅ケ崎里山公園 2020/03/25
横浜市南区・#こども植物園(花木園、野草園、4月初旬)、横浜市金沢区・#金沢自然公園
#茅ケ崎里山公園(桜の小径、子供の森に3本、3月末)
藤沢市・#長久保公園(滅失)、#大磯城山公園(もみじの広場、不良)
秦野市・#葛葉緑地(くすのき広場、3月上旬~)、南足柄市・足柄峠~金時山、#箱根湿生花園、箱根町・精進池(しょうじんがいけ)周辺(かながわの花の名所100選「精進池周辺(マメザクラ)」、見るべきものなし)、箱根町・#恩賜箱根公園(250本、開園前から自生のものも多い、4月15日~20日、ソメイヨシノ・シダレザクラはこれから、アセビ・ミツバツツジも見頃、シャクナゲはまだ、ついでに箱根新道からのヤマザクラ・ミツバツツジも見頃)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
『新日本の桜』 木原浩・大場秀章・川崎哲也・田中秀明著 山と溪谷社発行(2007)