草合歓 マメ目/マメ科/クサネム属 花期/7月末~9月 結実期/8月中旬~10月中旬
学名/Aeschynomene indica L.
自生種保護
クサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
日当たりの良い田んぼに生える一年草。畦の上のみならず、多少水に浸(つ)かる場所でも生育可能。イネ(稲)の中干しをしていたタイミングで生えてきたものか。つまりは、ふつうは湿生植物、ときに抽水植物。名は、まるでネムノキ(合歓木)の実生(みしょう)のような姿の草だから。クサネムは黒っぽい種子が収穫したコメ(米)に混入してしまうとコメの等級を下げてしまうため、水稲農家からひどく毛嫌いされている忌々(いまいま)しい水田雑草である。そのため農薬などを使った徹底した駆除が行われている。そのため田んぼがあればどこにでも生えているというものではないが、ちょっと油断をすると大量に繁茂してくるため、生えている地帯では群生していることが多い。田んぼの隅で遠慮がちに生えてくれればいいものを、”目の敵(かたき)にされて絶滅するか、わっさわっさに大繁殖するか”という両極端な二択の岐路にある。平成31年(2019)発生の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う農作業の簡素化を味方につけたか、湘南地域では、クサネムがしぶとさを発揮して”復権”しつつある状況。となれば今度は農家側がクサネム殲滅作戦を敢行するのも時間の問題といえる。
若いクサネム(背後はイネ) 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2021/07/25
田んぼ周辺の草地に生えた若いクサネム 中井町藤沢 2022/06/21
田んぼを囲う草地に生えたクサネム 寒川町一之宮 2022/07/12
クサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/13
クサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
不耕作田に生えたクサネムの群生 寒川町田端 2019/08/02
不耕作田に生えたクサネムの群生 寒川町田端 2019/08/02
不耕作田の湿地に生えたクサネム 寒川町田端 2019/08/02
草丈はときに1m近くにまで大きくなるため、収穫前の水田ではクサネムの頭が突き出て生えているのが見えるかもしれない。
イネに混じって生えるクサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
イネに混じって生えるクサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
茎は柔らかく、ほぼ無毛。毛が多く生えていたら、姿がよく似たカワラケツメイ(河原決明)か。茎が木質化していたらネムノキだろう。
クサネムの茎 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/13
偶数羽状複葉。小葉は軸の基部に付くものは対生に近いが先端に行くほどしっかり互生になる傾向あるか。小葉の形状はやや幅広で丸みを感じるもの。小葉先端は棘(とげ)状に尖らない。葉を手で触ると、オジギソウ(お辞儀草)のようにゆっくり閉じる運動をする。またネムノキ同様、夜間はしっかり閉じる。
若いクサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/13
クサネムの葉 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/13
クサネムの夜になって閉じた葉 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/07/30
クサネムの葉はキタキチョウ(北黄蝶)の幼虫の食草なので周辺に飛んでいるかも。幼虫はサイドに黄色い一本線が走る青虫。キタキチョウも湘南・鎌倉・三浦半島では数を減らしているキチョウである。なお無農薬で栽培すると大量のアブラムシ(油虫)が若葉の柄などに付着し生育を妨げる。
#クサネムの葉に産み付けられたキタキチョウの卵(白色矢印) 茅ヶ崎市浜之郷 2018/09/20
市街地の舗装道路端などで小型なクサネムらしきものを見かけたらコミカンソウ(小蜜柑草)だろう。コミカンソウとクサネムの若い株はよく似ているが、コミカンソウの子葉は葉先側が幅広になる形状で、小葉先端は棘状に小さく尖る。
イネの中干し期間中に生えてきたクサネムの若い株 寒川町田端 2019/08/02
クサネムの花
マメ科らしい形状で、成長するに併せて花はぽつりぽつりと咲いてゆく。花色は色褪せた薄い黄色。赤っぽいようなオレンジ色っぽいような茶色っぽいような条(すじ)が入る。花の見頃は8月上旬から中旬にかけて、全体的に若々しい緑の葉を蓄えているうちに。
不耕作田の湿地に生えたクサネム 寒川町田端 2019/08/02
クサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
クサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
クサネム 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
クサネムの実
マメ科らしい形状。花が長い期間にわたって咲くため、実の数は思いのほかたくさんできる。水稲農家が目の敵(かたき)にしていなければさぞしつっこい迷惑雑草だろうことは容易に想像できる。莢(さや)にはミシン目が入っている節果(せつか)で、焼き過ぎて焦げちゃった煎餅のような色に熟すと種子が”個包装”(小節果)に分かれて散布される。莢は完熟しても破裂はしない。なお花よりも実の生育が中心となる9月以降は葉が傷みよく散る。初秋の台風でずたぼろに。
クサネムの若い実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
クサネムの未熟な実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/03
クサネムの未熟な実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/08/13
クサネム 茅ヶ崎市萩園 2018/09/08
クサネムの熟した実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/08
クサネムの熟した実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/08
クサネムの熟した実 茅ヶ崎市・湘南タゲリ米の里 2018/09/08
完熟した実はよく水に浮かんで沈まない。来年の初夏、湘南・鎌倉・三浦半島では5月下旬になろうか、田植えのために田んぼに水が張られるとクサネムの種子は浮揚し広範囲に散らばってゆくことだろう。風でも鳥でもなく、クサネムは水の流れという助けを借りて分布域の拡大を図っている。
クサネムの完熟した実と種子 茅ヶ崎市西久保 2018/09/08
実がひょろっひょろに長くなる外来種アメリカツノクサネム(あめりか角草合歓)なるものが神奈川県内でも見つかることがあるようなので念のため注視したい。花はやや大きめで暗紫色の斑(まだら)が入ることあり、小葉は長め、とクサネムと瓜二つではないので違和感を感じるだろう。
東京都江東区・#木場公園(都市緑化植物園帰化植物見本園にアメリカツノクサネム)
寒川町田端(西久保橋北側の休耕田一画に大群生、相田園芸西側の田んぼ、など)、寒川町一之宮(スズケン神奈川物流センター東方の田んぼ)、湘南タゲリ米の里(ビオトープ水田周辺、小出川土手側=晩夏の土手刈払いで人目に触れる、※8月は露出した肌(足が多い)に憑(と)りついてはちくりと刺してくる黄色っぽい飛翔する虫(ヨコバイか何かか、体長2cm程)がいるので注意・追い払っても再チャレンジしてくる・腫れはしないようだが少し痛い&気色悪い)、茅ヶ崎市萩園(十二天神社西側の田んぼ)
中井町役場(南方の田んぼ)
こんばんは
クサネムの草姿、花、種、風情 好みです。
7月に寒川で保護した株も すっかり大きくなりました。
愛着がわいて いつか枯れると思うと今から寂しい
こんな風に植物に思いを馳せる自分自身に驚いてます、、、
mirusiruさんの記事は画像も文章も見やすくて分かりやすく
植物の情報を 有難く拝読させていただいてます。
・・・。
大変恥ずかしいのですが
私も植物ブログをスタートしました。
軽薄で内容の無い、方針もはっきりしないのですが
強い様で強くない野の草たちに何か出来ないかという
思いだけで動いています。
アメブロで さがみさい子というネームです(笑)
知識をこちらで得て 少し自力で調べるという風なので
もしご覧になる時は お手柔らかにお願いします。
馬鹿がバレてしまう・・・。