チャノキ

茶の木 ツツジ目/ツバキ科/ツバキ属 茶摘/4月下旬~5月 花期/10月 結実期/10月中旬~12月
学名/Camellia sinensis (L.) Kuntze

食用薬用改良種

チャノキの花 小田原市早川 2019/12/04

#チャノキの花 小田原市早川 2019/12/04

ツバキ(椿)の仲間の常緑の低木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。原産地は中国だとかインドだとか。こたつですするお茶のお茶っ葉が採れる木で、正しい名前はチャノキという。お茶は、一般には臨済僧の栄西(ようさい)が中国より持ち帰り『喫茶養生記』を著したのが日本への最初の伝来とされている(実際にはそれ以前に渡来僧が持ち込んでいたとかどうとか)。湘南・鎌倉・三浦半島では寺境内に特に多い。鎌倉観光の際には(多くの観光客が気づいていないだけで)必ず目にはしているはずである。公園木にも利用される。農村部では栽培ものが放置されて野良に逸出しかけている。神奈川県北西部には茶畑もある。

チャノキ 鎌倉市・円覚寺(えんがくじ) 2016/10/31

#チャノキ 鎌倉市・円覚寺(えんがくじ) 2016/10/31

茶畑 松田町寄(やどりき) 2023/01/26

#茶畑 松田町寄(やどりき) 2023/01/26

春(5~6月)、秋(8~9月)にチャドクガ(茶毒蛾)というガの幼虫(ケムシ)が発生するので注意が必要。微細な毛(空中を浮遊するものを含む)に触れると皮膚がかぶれてたいへん痒(かゆ)い。

チャノキの葉

茶葉。外国の紅茶などと対比して日本茶、あるいはその色から緑茶とも。茶葉を摘むことは”茶摘み”という。春の最初の若葉を摘んだものは一番茶ないし新茶といい最高品質とされる(1kg平均単価1,760円、令和3年(2021)2月20日 静岡新聞)。一芯二葉(いっしんによう)と呼ばれる、完全に開く前の柔らかい若葉だけを使った新茶は旨みや甘みが強く最も高品位なものとされる。一芯二葉の茶葉から入れたお茶には毛茸(もうじ)と呼ばれる若葉に生えていた産毛が浮くので要注意。ほこりが浮いていると勘違いしないよう。汚らしく見えないでもないが、高級なお茶の証である。「夏も近づく八十八夜」で始まる歌は誰もが知っていようが、これは茶摘みの様子を歌ったその名も『茶摘み』という唱歌である。八十八夜とは毎年ふつう五月二日に訪れる雑節(ざっせつ)。お茶の葉の生産地といえば、日本一の茶処(ちゃどころ)として有名な静岡県。ところが”生茶(なまちゃ)の産出額”で令和元年(2019)静岡県が鹿児島県に抜かれ日本一の座から陥落したことが報道された(令和3年(2021)3月13日 静岡新聞)。茶の産出額(生茶と荒茶の産出額の合計)および生産量でも鹿児島県に抜かれることが差し迫った状況という。”静岡茶”や”宇治茶”、(埼玉県西部および東京都西多摩地域の)”狭山茶”などという呼称は茶葉のブランド名である。鎌倉市内で生産された野菜が”鎌倉野菜”などと呼ばれて高級品扱いされるがごとし。チャノキには選抜品種(改良品種)があり、有名なのは’やぶきた’。日本全国で生産されている茶葉の多くはこの’やぶきた’という品種である。静岡県静岡市には今なお「やぶきた原樹」(静岡県指定天然記念物「茶樹(やぶきた種母樹)」)なるものが残されている。名は、元は竹藪だった茶畑の北側で見出されたからなのだとか。

チャノキの若葉 茅ヶ崎市芹沢 2018/04/19

#チャノキの若葉 茅ヶ崎市芹沢 2018/04/19

茶葉は軽く蒸して乾かし、揉んで適度に発酵させ、おしまいに熱風で乾燥させて完成。職人が手揉みで作ると思いきや最早そのような製法は文化財級、現在は機械化されて全自動である。出荷仕上げ前の段階は荒茶(あらちゃ)という。
玉露(ぎょくろ)は収穫前に覆いをかぶせて日よけした茶葉。香りが増し、高級とされる。

葉には細かい鋸歯があり、葉脈がくっきり表れ強調されている。やや縮れた感じが特徴的だが、なんとなくナワシログミ(苗代茱萸)の葉も雰囲気が似ているので見間違えないよう。

チャノキの葉 横浜市戸塚区・王子神社 2016/10/07

#チャノキの葉 横浜市戸塚区・王子神社 2016/10/07

チャノキの葉 小田原市早川 2018/11/02

#チャノキの葉 小田原市早川 2018/11/02

煎茶(せんちゃ)は茹で煎じて飲む一般的な緑茶のこと。煎茶道(せんちゃどう)に通じた方が入れたお茶は異次元の風味が立ち別品である。
番茶(ばんちゃ)は二番茶や三番茶など収穫時期が遅い煎茶をいう。安価であるため(二番茶は一番茶の三分の一の価格で1kg平均単価555円、三番茶は同じく五分の一の価格で同323円、令和3年(2021)2月20日 静岡新聞)、庶民がすする貧乏くさいお茶という偏見が付きまとう。
ほうじ茶は茶葉を火で焙煎(ばいせん)したもの。芳(こう)ばしい香りがよい。

茶畑 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

#茶畑 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

茶畑 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

#茶畑 松田町・松田山・中尾農道 2019/10/23

抹茶(まっちゃ)は茶葉の粉末。茶臼(ちゃうす)と呼ばれる特殊な石臼で碾いて細かな粉にしたもの。茶道(さどう、ちゃどう)で使用される。茶葉そのものを摂(と)ることになるので体によいとされる。抹茶の原料になるチャノキは段々の茶畑で見かける背丈の低いあれではなく、肥料を大量にやって一気に人の背丈くらいの高さまで育てた碾茶(てんちゃ、碾は”石臼でひいて粉にする”の意)と呼ばれるもの。これを被膜で覆って日光を遮って(煎茶向けの)玉露のように育てる。するとカテキンがテアニンという成分に変わり、お茶の甘みや旨みが増すのだという。日陰栽培になるので茶葉の緑も色濃くなり見栄えもよいものに。碾茶は茶葉生産量の5%にも満たないというので、神奈川県内の身近なところで碾茶畑を見かけることはまずないかもしれない。なお”花粉症に効く”とか効かないとかいわれる甘い中国茶の甜茶(てんちゃ)と碾茶はまったく別の無関係のもの。
より格式が高いとされる濃茶(こいちゃ、おこい)は大量の抹茶を少量の湯で溶いた(”練る”という)もの(客は回し飲みをする)。観光地の甘味処などで一般の人も頂く機会が多いお抹茶は薄茶(うすちゃ、おうす)で、少量の抹茶を大量の湯で溶いた(”点てる(たてる)”という)もの。茶の緑色が名前の通りやや淡い色になる。一緒に出される甘い茶菓子は、抹茶の風味を引き立てるために茶を飲む前に食べること。
主な茶道具は、茶入、茶杓(ちゃしゃく)、茶筅、茶碗。茶花(ちゃばな)はチャノキが咲かせる花のことではなく、客をもてなすために茶席に生けられる季節の花をいう茶道用語。

紅茶に使われる茶葉も、品種は違うが種(しゅ)としては同じチャノキの葉である。緑茶に使われる中国原産のチャノキは低木で、葉も小さい。中国種という。対して紅茶に使われるチャノキはインドで発見されたもので、高木になり、葉は大きい。アッサム種という。中国種の変種という位置づけになる。日本国内で栽培されているのは中国種の方。烏龍茶(ウーロン茶)も加工方法が異なるだけで中国種から作られている。

チャノキの花

サザンカ(山茶花)カンツバキ(寒椿)に先駆けて白花が咲く。花はツバキ科らしいものだが、少し小振りで基本的に下向きに咲くため花見には難あり。黄色い雄蕊(おしべ)がふさふさでかわいらしい。

チャノキ 横浜市南区・こども植物園 2017/10/18

#チャノキ 横浜市南区・こども植物園 2017/10/18

チャノキ 横浜市南区・こども植物園 2017/10/18

#チャノキ 横浜市南区・こども植物園 2017/10/18

チャノキ 横浜市戸塚区・王子神社 2016/10/07

#チャノキ 横浜市戸塚区・王子神社 2016/10/07

チャノキ 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

#チャノキ 茅ヶ崎市行谷 2018/10/20

チャノキの実

ツバキの仲間なので、ツバキの実を小さくしたような実ができる。中に納まっている種子は一個か二個、多くて三個、四つくらいまではあるかもしれない。枝より下に、葉に隠れるように付くため、見つけづらい。

チャノキの熟した実 小田原市早川 2018/11/02

#チャノキの熟した実 小田原市早川 2018/11/02

チャノキの完熟して炸裂した実 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/11/02

#チャノキの完熟して炸裂した実 小田原市早川・太閤一夜城と長興山史跡巡りコース 2018/11/02


#浄妙寺(山門内参道沿い)、#覚園寺(愛染堂前庭園内に若木1本)、鎌倉市大町・#妙本寺(日蓮銅像前の桜隣、10月初旬)、#円覚寺(妙香池)、#円覚寺黄梅院(観音堂前参道生垣)

#相模原市緑区佐野川地区(にほんの里100選)、#山北町(丹沢周辺、県西部に「足柄茶」というブランド名の茶畑)

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